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勝共運動による救国救世

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城山氏は時事通信社の北京特派員を02年から5年間務めた。…続きを読む

この書評は2010年12月に投稿されました。

習近平の正体

著/茅沢 勤 小学館 1680円

中国独裁国の「後継者」像を読む

習近平の正体茅沢氏の著書は『サピオ』誌連載記事に加筆したもの。北京の中南海で激しく繰り広げられる権力闘争の舞台背景を生々しく措く。「上海・軍閥」が満を持して「次の皇帝」に立てた習近平という人物に迫る1冊だ。
 ベールに包まれた中国の「次期最高指導者」のよく調べてまとまった評伝と言える。しかし、「評伝」という形からすれば、あまりにも「2次資料」に頼り過ぎている感が否めない。文献収集は入念なのだが、自らの足で取材した情報が少ないのだ。何しろ情報制御に神経を尖らせる一党独裁国家である。とは言え、現時点で唯一と言ってよい日本語で善かれた習近平伝であることも確かだ。
 江沢民・前主席と人民解放軍の後ろ盾を得て、12年に到来する中国共産党第18回党大会で総書記を退く胡錦濤主席の後継者の座を、軍事委副主席就任でほぼ確実にした習近平・国家副主席。「太子党」とされる習の父・伸勲元副首相は意外にも、胡錦濤が師と仰ぐ胡耀邦元総書記に近かった。著者はかつての最高指導者・と鄧小平が、「将来指導者になるべく地方の役人から叩き上げること」を父に進言したのではないかと推測。興味深いのは、江沢民の片腕とされた曾慶紅・元副主席は幼馴染で、「兄」と慕う習近平を中央に抜擢したこと、そして曾は軍事委主席に居座り続ける江沢民に、自身の引退と共に引導を渡したエピソードだ。それを条件に胡錦涛に潔く引退することを約束させた。
 だが実際には、江沢民の軍への隠然たる影響力は衰えていない。軍の最高指揮官である胡錦濤を差しおき、引退したはずの江の指令で軍が出動したという。このため、胡錦濤は党総書記引退後も軍事委主席に留まる抵抗を示すのではと見られる。気にかかるのは、対外的な場面で習近平副主席は中華ナショナリズム的な失言を行っていることだ。
 文革の恐ろしさを知りつつ、経済開放路線の傍らムチで民主化や民族自決を弾圧するという自己矛盾を学んだ中国の体制は、「世襲」とは異なり10年単位で世代交代することが定着したものの、背後で蠢く「軍の掌握」をめぐる真の権力闘争は、「職責」の裏で行われ、習近平自身も直面する事態のようにも見える。
 だから尖閣問題をめぐる中国共産党最高指導部の攻防はどうか、本書から窺い知ることはできない。ただ、ライバルの李克強副首相が「改革・民主化擁護派」とも言えないのが事実。北京大学時代など「民主化運動を5度潰した」とされる。その意味で誰が最高指導者になろうと、胡耀邦・趙紫陽時代の「民主化デタント」には容易に戻らないだろうが、民主化と連邦制を訴えた「08年憲章」の立役者・劉暁波氏のノーベル平和賞受賞は「良識派による改革」の可能性を示唆している。

この書評は2010年2月に投稿されました。

中国共産党「天皇工作」秘録

著/城山英巳 文春新書 798円

中国の仕掛ける「情報戦」

中国共産党「天皇工作」秘録城山氏は時事通信社の北京特派員を02年から5年間務めた。日中国交正常化という「井戸を掘った人」として中国にリスペクトされる田中角栄元首相から現代に至るまで、中国の「天皇訪中」をクライマックスとする「皇室工作」史をたどった一冊。冒頭で、自民党を去ってなお、田中派として多大な影響力を行使した田中元首相が、盟友関係にあった当時の中曽根康弘首相へ中国のミッションを打診した件りが鮮やかかつドラマテックに描かれている。この当時、ロン・ヤスで名高い日米関係に次いで親密な関係を築いたのが中曽根首相と中国の胡耀邦総書記だった。周恩来の遺志を受け継ぎ民主化の擁護者となった。「最高の親日家」と著者が呼んだ胡耀邦が失脚すると、89年の天安門事件を分水嶺として、中国の民主化は冬の時代を迎え、胡錦濤体制の今もなお、独裁は続いている。
 キーマンたちの丁々発止の交渉場面などは、読み物としては確かに面白い。だが、著者のスタンスが過剰なまでに中国寄りの主張で、日本の首脳の影が薄く、国益が軽視されているのはどういうわけか。天皇会見問題で、非常にタイムリーなテーマの本であるが、その点が惜しまれる。