朝鮮人特攻隊
『日本人」として死んだ英霊たち
著/裴 淵弘 文春新書 798円
通信社カメラマン出身の在日コリアンのジャーナリストによる「国賊」視される朝鮮人特攻隊員の周辺を追いかけた希少なノンフィクション・ルポ。
第二次大戦末期、フィリピンと沖縄の航空特攻で四千六百人の若い命が散華し、うち二十人の朝鮮半島出身者たちもいた。しかし、祖国独立後の反日的世論の中で「国賊」的存在としてタブー視された歴史の闇に埋もれた真実を掘り起こす。
著者の真撃な姿勢が共感を呼ぶのは、虚飾を排し、裏の取れぬ2次3次情報に頼らずに、自分の足で事実を追求しようとするジャーナリスト精神である。
遺族・関係者を徹底取材した朝鮮人特攻隊員の実像に触れた著者は「捧げた命が誰のためであったのかを探るうち、それが彼らの自尊心のためであることに気づいた」と答えを見出す。そして「親日派という曖昧な表現からは理解できない…あるがままの歴史を受け入れ、あの時代に生きた人たちの声にできる限り近づきたかった」と記している。
著者のそもそもの執筆の動機は、慮武鉱政権時代の「親日派追及」政策に対する素朴な疑問だった。日本に、直接向けられない分、対日協力者に憎悪が向けられたと、著者は分析する。
離別の席でアリランを歌い、映画「ホタル」のモデルとなった光山少尉ら特攻隊員の慰霊碑の除幕式が阻止されたり、韓国では国歌の作者の「親日的過去」を暴かれ日本の反国歌闘争的な状況を冷静に記す一方、韓国空軍創設の主力メンバーとなったのが元日本軍兵士であり、その代表格が初代参謀総長となった金貞烈将軍(終戦時大尉)と紹介してもいる。
「天皇陛下のために死ねぬ」と戦友に憚り言った高山昇中尉の心境を、陸士五六期出身の李亨根・元韓国陸軍元帥は後に「その気持ちが判る時、両国の本当の友好が生まれる」と言った(高山中尉には婚約者がおり生涯独身で中尉を慕い続けた)。また「朝鮮人の肝っ玉を見せてやる」と散華した大河伍長の父は「日本は悪い国ではない」と兄弟を諭したという。この英霊たちの犠牲に思い致すことも日韓友好に繋がっていくのではないだろうか。
