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地域医療が発達し、男女共に長寿の長野県でも、認知症が急増している。…続きを読む

この書評は2011年2月に投稿されました。

認知症と長寿社会
笑顔のままで

著/信濃毎日新聞取材班 講談社現代新書 798円

笑顔のままで暮らせる社会に

認知症と長寿社会 笑顔のままで地域医療が発達し、男女共に長寿の長野県でも、認知症が急増している。日本が10年遅れで追いかけている米国では、65歳以上の12%、85歳以上の50%が認知症で、その80%がアルツハイマー病だという。
 問題の深刻さに比べて議論が少ないのは、認知症を隠したがるから。実名報道を基本にした連載で、「老いてもなお自立なのか。……『誰かの世話になって生きていく』。この当たり前の覚悟を受け入れたとき、長き老いを支え合う仕組みや社会的資源がもっと必要だ、ということにも気づく」と呼び掛けた意義は大きい。契約に基づく介護保険制度ではカバーできない現実に、人々が翻弄されているからだ。
 本書では、介護老人保健施設をはじめ特別養護老人ホーム、精神科病院、グループホームなどの施設から在宅介護、NPOなどの活動まで、認知症の人がかかわる場所や仕組みを幅広くルポしている。適切な治療や対応により、症状が改善する例も多い。共通しているのは、「認知症の人を無理に引き寄せようとせず、自分を相手の世界へ寄せていくこと」だ。その人の背後にある人生に敬意を払う姿勢でもある。
 とりわけ在宅の場合、認知症に対する理解が進まないと、地域社会から孤立しがちになる。庭先の花を勝手に摘んでいく老人がいると腹が立つが、その人が認知症だと知れば、優しく接することもできよう。自分もいつそうなるかもしれないのだから。
 取材は、認知症患者が安心して暮せるまちづくりを進めている横浜市旭区など県外にも及ぶ。症状の軽い人は、朝市などの仕事にかかわることで元気になるという。社会に役立っている実感が大切なのだ。子供との交流を進めたところ、何度も同じことを聞く老人に何度も返事をするなど、意外な粘り強さに驚かされる。
 人に迷惑を掛けない、ピンピン生きて、コロリと死にたい——というのは高度経済成長期の価値観。その転換が今、求められているようだ。