民進党は「民共路線」を放棄せよ(思想新聞9月1日号)

思想新聞9月1日号に掲載されている主張を紹介する。

 野党第1党の民進党の代表選が告示され、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が出馬している。最大の焦点は民進党が政権交代可能な健全野党として生まれ変わることができるか、それとも共産党の走狗となって反自民だけの反対党にとどまるか、どの進路を選択するかである。

 民進党は2016年3月、民主、維新両党が合流して結成された。結党大会では「政権交代可能な政治の実現」をうたい、初代代表に就いた岡田克也氏は「民進党でもう1回、国民に信頼され、日本の政治の本流を担える政党をつくっていく」と強調した。後任の蓮舫氏も同様に述べ、「政策も対案もある」と述べた。

 岡田氏が言う「もう1回」とはもちろん先の民主党政権を指す。同政権は沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題で「最低でも県外」と叫び、日米同盟を揺るがし、共産勢力の反辺野古闘争を沖縄に持ち込み、国益を損なせた。

 それで信頼を失い、国民は「二度と御免だ」の思いを強くし、政権の座から引きずり降ろしたのである。いまだ信頼を取り戻していないことは支持率が低迷していることで明らかである。

政権交代が可能な政党と言えるのか

それは「政権交代可能な政治」の姿を提示できないからである。国民の納得する政策も対案を示したことは一度もない。それどころか、反自民で野党と野合するだけの反対党に成り下がっている。それを象徴するのが政策を棚上げにしたまま共産党と共闘する「民共路線」である。共産党は日米安保条約に反対し、憲法観も違えば、消費税への基本的な考えも違う。

 何よりも共産党は警察庁が「現在においても『暴力革命の方針』に変更はないものと認識している」(政府答弁書=2016年3月)とする破壊活動防止法に基づく調査対象団体である。それにも関わらず、共産党と選挙協力や安倍政権打倒、安保関連法廃止などで共闘してきた。

 それに意を強くした共産党は今年1月、第27回党大会で従来の「自共対決時代」という位置付けを捨て、「自公と補完勢力」対「野党と市民の共闘」との新しい対決構図、いわゆる政権打倒のための統一戦線戦略を描いた。民進党はそれに乗せられている。

 国会では反対するだけで代案を提示することはなかった。テロ等準備罪をめぐる国会審議や加計学園問題の閉会中審査では重箱の隅をつつくような論議を繰り返した。北朝鮮の核ミサイル問題についても沈黙し、安倍内閣の足を引っ張ることに汲々とするだけである。

 これでは民進党を政権交代可能な政党と国民は認めるわけがない。さきの都議選で民進党は惨敗、政権批判の受け皿になっていない実態を浮き彫りにした。これとは対照的に都議選で躍進した「都民ファーストの会」が政権交代の受け皿として期待の声も出ている。民進党は党の存立そのものが問われている。

 こうした疑問に前原氏も枝野氏も応えていない。前原氏は「民共路線」について「政策、理念が一致しない政党との協力は野合でしかない」と述べていたが、代表選に入るや、「地方組織がどう捉えるかを加味しながら総合的に判断する」と変節した。党内で一定の勢力をもつ日教組や自治労など官公労に配慮し、リベラル路線へと軌道修正しているようだ。

 一方の枝野氏は「自民党の議席を1議席でも減らすとの目的を見据えれば、答えはおのずから出る」と強調し、野党共闘(実態は「民共路線」)を継続させるとし、左翼姿勢を鮮明にしている。どちらが代表になっても党内に左派労組勢力を抱えている限り、政権構想を描くことなど夢のまた夢だ。安保や憲法、消費税などの基本政策を曖昧あいまいにせざるを得ないからだ。

 政権交代が可能な政党(健全野党)とは何か。本来、民主主義国家にあっては欧米諸国がそうであるように政権交代は当たり前である。それは政治の成熟さの現われである。その政権交代には大前提がある。

 それは健全な政権交代環境として与野党間で外交・安保政策の共通基盤があり、同時に党内に共産主義(全体主義)勢力を有さないという2つの条件を満たすことだ。なぜなら政権が変わるたびに外交・安保政策が揺らげば国際社会の信頼を損ない国益を失うからだ。

 米国で民主党から共和党に政権交代しても日米同盟を破棄するなどと誰も言い出さない。欧州諸国も政権交代したからといって北大西洋条約機構(NATO)を脱退するといった話は出ない。

共産党を非合法ドイツを見習え

 また全体主義勢力が蔓はび延これば、これもまた国を揺るがす事態を招く。自由と民主主義が脅かされるばかりか、国は歴史・文化性を背景としており、その断絶を許すことになり国が滅びるからだ。だからドイツのように共産党を非合法化するのが正しい。

 こうした2点が民主主義国家における政権交代の基本要件であり、その環境を整備しておくのが民主政治の常道である。この視点に立てば、「民共路線」などあり得ない。そこから抜け出せないなら、民進党に未来はないと肝に銘じておくべきだ。

 

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