名護市長選 浮かび上がる市民のリアル

  思想新聞3月1日号の名護市長選「名護市長選 浮かび上がる市民のリアル」を掲載します。沖縄在住の本連合会員から届けられた現地レポートです(写真:美しい名護市の景観)

  名護市は沖縄県北部に位置する県内で3番目に大きい市だ。県の中心である南部の那覇市からは高速道路を利用しても1時間半ほど掛かる。筆者が名護市を訪れたのが1月中旬だったが、すでに名護市街は選挙期間(告示日から投票日前日まで)さながらの様相を呈していた。

 

「オール沖縄」稲嶺陣営の選挙活動

   「オール沖縄」が推薦する現職の稲嶺進氏。1月中旬には、稲嶺氏への支持を訴える街宣車が午前中から市内をひっきりなしに走り回っていた。また、稲嶺氏の支持者が空き地などでマイク片手に演説する姿を度々目撃した。これが選挙期間に入るとさらに過熱。市街の車通りの多い交差点には数名から十数人の支持者が立ち、のぼりを掲げ、行き交う運転手らに手を振っていた。選挙活動の動員人数は明らかに稲嶺陣営が新人・渡具知武豊候補の陣営を圧倒。その正確な数は明らかにできないが、名護市全域で活動し、市民が目にすることになった人員は、稲嶺陣営の方が遥かに多かったに違いない。

 しかし、その鬱陶うっとうしい位の稲嶺陣営のやり方に、辟易した市民も多かったのではないか。加えて稲嶺陣営の〝行き過ぎた活動が明るみになっていく。名護市民の報告によると、「明らかに県外から来たと思われる連中が3人1組」で戸別訪問を行い、稲嶺候補の支持を訴えていた。

 これ自体も明らかな選挙違反だが、さらに卑劣なのは次のようなやり方だ。「渡具知さんは市議選の補選に出ているので、市長は『稲嶺』と書いて、市議は『とぐち』と書いてね」「渡具知さんは頑張っているので、投票する時に応援の思いを込めて『とぐちさんがんばれ』と書いてあげて」などと、渡具知候補を支持する高齢者らの思いを逆手に取り「無効票」にしようとのあまりに悪質なやり方だった。

 そして極めつけは、稲嶺陣営の過激派によるテロさながらの事件だ。1月31日、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長による渡具知候補の応援演説の際、反基地活動家らしき男が運転する車が一方通行の道路を逆走し、渡具知候補の選挙事務所に突っ込もうとする暴挙に出たのだ。幸い警察に制止され、事なきを得たが、このような事件が現に起こってしまうほど選挙戦は終盤、緊迫した戦いとなっていた。

 

「輝く名護市」渡具知候補が掲げた希望的な公約

 名護市は北部中心の市ではあるが、一人当たりの所得は県内30位(41位中)の192万円と停滞(平成26年度)。加えて沖縄県の離婚率は全国でナンバーワンということもあり、このような状況下で必然的に子育て世代の負担は大きいものにならざるを得ない。筆者が名護市郊外にある民家を訪ねても、玄関先からその貧しい暮らしぶりがありありと感じられた。

 沖縄は昨年、観光客が939万人を超え、5年連続で過去最高を記録。あのハワイを超えた。しかし、名護市は「素通り観光」と言われ、観光による経済波及効果が乏しいと指摘される。そんな中、渡具知候補は「滞在型観光」を推進すべく「ロングビーチリゾート」構想を打ち上げた。さらには子育て世帯の負担を軽減すべく、保育料と学校給食費の一人目から無償化を公約として掲げた(稲嶺市政では三人目から無償化。一人目は親が全額負担、二人目は半額負担)。渡具知候補は「輝く名護市」を合言葉に、ワクワクするような未来像を示し、そんな渡具知候補に希望を見出した市民も少なくなかっただろう。

 

名護市民の率直な思い

 「基地はないほうがいいけど、日々の暮らしを豊かに、名護の街をもっと活気あふれるものにしてほしい」。こんな言葉を筆者は何人もの市民から聞いた。なかには「国からもらえるものはもらったらいい」と、国からの「再編交付金」(基地負担のある自治体に支給)を積極的に肯定する声も聞かれた。誰しも自分の住む街に基地などない方がいいに決まっている。しかし、かつては「基地反対」で稲嶺市長を応援していたという人も「2期8年で自分たちの暮らしは一向に変わらなかった。今回は渡具知候補を応援する」といった変化も見受けられた。「基地反対」一辺倒ではない、前向きな変化を、自らの生活と名護の街に求めた市民が多かったのではないか。

 「琉球新報」「沖縄タイムス」の沖縄2紙は、「辺野古移設」が唯一の争点であるかのように連日報道した。しかし市民の立場、市民の目線でよく考えてみれば、「基地問題」はそれぞれの生活の中の“ワンオブゼム”に過ぎないのだ。

 

選挙の勝敗が示すもの

 2月4日の投開票で、約3500票の大差をつけ渡具知候補が当選した。紙幅の関係上、選挙結果の分析は本紙前号をはじめ、他のメディアに譲るが、今回の結果により「オール沖縄」の存在意義が揺らいだことは間違いない。特定のイデオロギーにより「基地反対」を掲げるだけでは、市民を幸せにできなかったことが明らかになったと言える。政治とは本来、市民の暮らしに寄り添うもの。名護市長選の勝敗が、名護と沖縄の新しい未来を切り開いたと言っても過言ではない。

 上から目線のマスメディアや一部の識者らによって押し付けられた争点ではなく、市民にとっての〝本当の争点を探し続けるのが名護市長選現地レポート共産党創設100年を迎え政治家の役目だろう。

 今回の選挙を多少なりとも間近で見守った筆者にとって、市民の本音、市民の率直な思いと真摯に向き合うことができたのが何よりだった。もちろん稲嶺氏を支持した「16931」という人々がいたのは紛れもない事実だ。しかし、沖縄県民の総意が「基地反対」の一言で語れるものではないのも明らかだ。今後も「オール沖縄」や沖縄2紙のプロパガンダに惑わされることなく、名護市民、さらには沖縄県民の“リアル”に、さらに関心が向けられることを願っている。

(金城一彦)

思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー

3月1日号 巻頭特集「浮かび上がる韓国リスク」 / NEWS「日本の建国を祝う会」/ 主張「家族解体の夫婦別姓にノーを」 etc

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