性同一性障害を精神疾患から除く欺瞞

 思想新聞7月15日号の【共産主義の脅威 シリーズ】「性同一性障害を精神疾患から除く欺瞞」を掲載します。

LGBTのTはLGBと違い先天的な障害だから社会が擁護すべき、と主張してきたLGBT推進団体が一転、「Tは障害ではない」と主張しはじめWHOの解釈を変えさせた。 

 

 本欄では先に、いわゆるLGBTと呼ばれる「性的マイノリティ」のうちLとG、すなわち「同性愛者」について、米国精神医学会(APA)の指標である「精神障害の診断と統計マニュアル」(=DSM、現在は「Ⅴ」=第5版)においては、1980年のW・ライヒ研究者のロバート・スピッツァー委員長の下で改定された「Ⅲ」で、同性愛を精神障害とすることを削除して以後、精神病とされなくなったと紹介した。

 それが今度は、APAの「DSM」と並ぶ精神疾患の診断基準として知られるWHO(世界保健機関)の指標「ICD」(国際疾病分類)が6月18日、30年ぶりに改定された。この最新版「ICD-11」において、「性同一性障害」などのいわゆる「トランスジェンダー(性的越境者)」が、「精神疾患ではない」とすることが明らかになった。

 具体的にWHOは、「生まれた時の性別と、自認する性別が異なることで苦しんでいる状態」を「ジェンダー・インコングルエンス」と呼ぶが、従来は「精神、行動、神経発達の障害」に分類されていた。性同一性障害などトランスジェンダーの一部にはこうした状態の人が多いが、改訂後は、「障害」(disorder )ではなく「性の健康に関連する状態」に分類されるという。

 これを改訂した人々はどう主張しているのだろうか。WHOリプロダクティブヘルス・研究部のコーディネーターを務めるラレ・セイ氏は、ジェンダー・インコングルエンスを精神疾患のカテゴリーから取り除くことで「当事者に対するスティグマ(社会的な烙印)を減らすことができ、彼らが社会で受け入れられるための、助けにもなる」と話し、ジェフリー・リード米コロンビア大学教授も「トランスジェンダーが精神疾患ではないという強力なメッセージを世界に伝えられる」と言う(「ハフィントンポスト」参照)。

 しかし性同一性障害の場合、わが国で2004年に「性同一性障害特例法」ができ、トランスジェンダー約8千人が戸籍上の性を変更したというが、次の5つの条件を満たす必要がある。①20歳以上である②現に婚姻中でない③現に未成年の子がいない④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている――だ。

 「性自認」を一致させるため「性転換手術」などの条件の下で戸籍上の性別変更が可能となった。だが性同一性障害が精神疾患でなくなることについては二つの問題がある。一つは「病気でない=美容医療と同じ」となることで高額な施術費用が保険医療対象外となる。もう一つは、「精神病でなくなる=社会的スティグマ(烙印)が消える」という発想そのものに、実は「精神障害者」に対する差別意識があるとも言える。「精神疾患者と自分は違う、自分は健常者なのだ」と。

 

 こんな不用意な言動を医師がするのは、自分の実績をアピールするための「我田引水」の論理にすぎない。その意味で、同性愛を精神疾患から除いたことも、同性愛者の精神疾患者に対する「逆差別」を助長しているとも言える。健常者か健常者でないかなどは、「同じ人権・権利を持つ人間」という位置に立たない限り、欺瞞でしかないだろう。

 優生思想には敏感に反応するが、堕胎するのは「女性の権利」と主張する二重基準とまったく同じ欺瞞だと言ってよい。同性愛を「病気」と見るのは「差別と偏見」だと同性愛者解放組織が主張する一方、精神医学で「性的倒錯という疾患」と見るゆえに、「矯正(コンバージョン)療法」も存在する。同療法の治療を望む同性愛者やその家族の意思は尊重されないのか。「異性愛への矯正療法」が「医療行為」として認められなくなり、現在の日本でも最低2人の医師の診断で可能な「性転換手術」も、やがてクライアントの自由選択による手軽な「整形と同じ美容施術」になる可能性は大いにある。となれば前述の5条件などあっという間に吹き飛ばされよう。

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