貿易戦争の対日ダメージは限定的、足並みを揃えよ

中国共産党の対米工作を批判するペンス氏

 

 貿易戦争による中国経済の減退が、いよいよ公式的な数値として現れ始めている。

 中国国家統計局が10月19日、7~9月期の国内総生産(GDP)の数値を発表した。物価変動の影響を除いた実質ベースで、前年同期比6・5%増にとどまったという。4~6月期は6・7%増で、伸びは第2四半期連続で減速。2009年1~3月期以来9年半ぶりの低い成長率となった。今後はさらに貿易戦争の影響が顕著になると予想されており、10~12月期は6・5%を割り込む可能性もあるとみられている。

 

 米国の制裁が一時的なものでないことは明らかだ。日本国内では米中間選挙に向けた一過性のものだったとする指摘がいまだあるが、この分析は表面的に過ぎる。米保守層の価値観を全く捉えられていない発想だ。

 彼らの価値観はペンス米副大統領が行った10月4日の演説にすべて現れている。ペンス氏は中国と中国共産党を明確に区別した。(共産党政権でない)中国とは非常に友好的な関係を続けてきたが、共産党が政権を取得して以降は「すべてが変わった」と断言。1950年代には朝鮮戦争で戦い、冷戦終結後には不公平な貿易慣行を通じて米国の経済利益を侵害し、米国内でも不当な政治的工作を展開していると述べている。

ペンス氏の発言はトランプ政権の隠された真意

 ペンス氏は次のように述べた。「北京(中国当局)は政府全体で政治・経済・軍事的手段およびプロパガンダを駆使して、米国内で自国の影響力を拡大し、利益を得ようとしている」

 この発言の背景には、直前に行われた国連総会における中国の王毅外相の発言、すなわち「われわれは、過去、現在、将来においても、いかなる国の内政にも干渉しない」と述べたことへの痛烈な批判が込められている。

 

 ペンス氏は中国のメディア戦略にも言及した。米国内では中国政府系ラジオ放送局が30社のラジオ局を通じて番組を放送している。中国国営中央テレビ(CCTV)傘下のグローバルテレビネットワーク(CGTN)の米国内の視聴者は、7500万人に達したと指摘した。これらの番組が不当なプロパガンダを行っている。ペンス氏はこの現状にも懸念を示した。

 また、中国の自由主義経済導入の約束は、「ただのリップサービス」であると批判。国際勝共連合が、中国経済の本質を「赤い資本主義」と指摘するとおりである。

 

 今のところトランプ米大統領は同様の発言を直接発していない。しかしペンス氏がシンクタンクのハドソン研究所で行った講演が、トランプ氏と相反する内容である可能性は極めて低い。むしろペンス氏は、トランプ氏にその政治的調整力を買われて就任した。混乱する政権内でその能力を発揮してきた経緯からすれば、むしろペンス氏の発言はトランプ政権の隠された真意とみるべきだ。国内外にトランプ政権の確固たる思想を発表する狙いである。

ペンス発言の影響の大きさを強調する新聞報道

日本への影響は恐るるに足らず、米国と足並みを揃えよ

 一方、日本では貿易戦争に対して悪影響は限定的との分析が目立ち始めている。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、日本の主な輸出企業の中国現地法人から米国への輸出は3000億円規模で、これらの法人の連結売上高合計のわずか0・1%に過ぎないと発表した(10月8日)。2012年に日中対立が激化し、日系企業設備の破壊や販売店の焼き討ち事件が起こり、「中国リスク」を避けて生産拠点を他国へ分散させたことが大きい。

 中国経済の不況によるマイナス効果については、逆に米国市場を奪うプラス効果で相殺する可能性が期待される。こうした両面の効果を総合して牧野氏が試算したところ、日本の上場企業全体の損害は、鉄鋼、非鉄、電機といった影響が比較的大きい業種でさえ「1%以下」だと結論づけた。むしろ問題は、2019年の年明け以降に始まる日米の二国間関税交渉であると語る。

 

 その意味では、米中貿易戦争のダメージは日本にとって「恐るるに足らず」だ。やはり日本に今、求められているのは米国の対中制裁に対して完全に足並みを揃える姿を示すことである。左翼的平和主義者の米国批判・中国擁護論に騙されてはならない。

 

思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー

11月1日号  危険な文政権の「制裁緩和」行動、鉄道・道路連結は「制裁違反」/ 愛知県で安保研修会に420人結集 /  主張 臨時国会、改憲の一歩を刻め etc

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