今も残る「ロシア革命」の脅威(11月15日号主張)

思想新聞11月15日号に掲載されている「主張」を紹介します。


 ロシア革命から今年11月7日、100年を迎えた。1917年のこの日、革命家ウラジミール・レーニンの率いるボリシェヴィキ(後のロシア共産党)がモスクワで武装蜂起し、帝政ロシアを葬り去り、「ソビエト連邦」という共産国家を樹立した。それから70余年、ソ連は自由陣営を脅かす「巨大共産国家」として猛威を振るったが、1989年に「ベルリンの壁」が崩壊して共産圏の一角に穴が開き、91年12月に瓦が解かいした。

 ロシア革命の悲惨さを象徴するのは、ロシア最後の皇帝ニコライ2世一家7人の末路である。革命後の1918年7月、ロシア中部のエカテリンブルクの元商家の地下室で銃殺され、遺体は硫酸を使って身元が隠蔽いんぺいされた。貴族らの多くも同じ運命を辿った。

共産主義の惨禍の張本人がレーニン

 ロシア革命が成るや、レーニンは秘密警察「チェー・カー」を創設。スターリンはそれを「GPU(ゲーペーウー=国家政治保安部)」に改組し、粛清を繰り広げる一方、世界を舞台に謀略スパイ活動を展開した。

 スターリンが死ぬと(53年)、恐怖政治のイメージチェンジを図るためにGPU(国家保安委員会)を廃止して54年にKGBが新設され、暗殺や謀略など非公然活動を継承した。軍や内務省などの非公然組織も全てKGBの支配下に入れられ、国内では監視体制を構築、国外では国家転覆や要人暗殺、スパイ活動等あらゆる非合法活動を繰り広げた。

 このKGBに象徴されるようにソ連は恐るべき独裁・弾圧・粛清国家だった。政治思想家ハンナ・アーレントは20世紀を「戦争と革命の世紀」と呼んだが、犠牲者の数で言えば2度の世界大戦よりも「革命」のほうがはるかに多く、推計2億人にのぼっている。その意味で20世紀は「共産主義による惨禍の世紀」と言うべきである。

 

 日本共産党はソ連の悲惨な実態を「社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義」(党綱領)としてロシア革命とレーニンを美化するが、抑圧はレーニン時代から始まっていた。

 レーニンによるロシア革命は世界に何をもたらしたのか、改めて総括しておこう。第一に、革命がロシアに留まらなかったことだ。共産党は帝政ロシアの影響下にあった地域を次々に共産化し、ソビエト連邦を樹立した。ソ連崩壊後に独立したウクライナや中央アジア諸国がそうである。

 さらに第二次世界大戦を通じて東へ進出し東欧諸国を共産化し、ソ連・東欧圏という大共産圏を作り上げた。東欧諸国はソ連崩壊後、「ロシアの頚くび城き」から逃れようと、ヨーロッパ連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加わった。

 

 第二に、レーニン思想の骨幹となる「前衛党」を世界に植え付け、世界革命を目指したことだ。レーニンの前衛党論は、共産党は献身的職業革命家だけの中央集権の党とする組織論である。これこそ独裁の源泉だった。

 ロシア革命の総指揮官だったトロツキーは、前衛党論について「まず最初に党の組織が、全体としての党を代行する。ついで中央委員会が党の組織を代行する。最後にはひとりの『独裁者』が中央委員会を代行する」と、前衛党は個人独裁に陥ると〝 予言〟 したが、そのとおりの展開となった。

 レーニンは1919年にコミンテルン(国際共産党=第三インターナショナル)を結成し、革命の「がん細胞」を各国に植え付け、武装蜂起を支援した。日本共産党も「コミンテルン日本支部」として22年に創設された。

 レーニンの率いる共産党の象徴はソ連国旗に掲げられた「鎌とハンマー」である。それを中国共産党や朝鮮労働党(北朝鮮)が今も党旗として使っているように革命組織は現在も広く世界に存在する。

 中国共産党はソ連の支援を受けて49年に中華人民共和国を樹立し、50年代の中ソ対立で袂を分かったが、共産主義の正当な継承者を自負。北朝鮮の故・金日成主席は終戦直後、ソ連軍少佐として平壌に凱旋がいせんし、半島北部を共産化、その三代目の金正恩委員長が核・ミサイル開発に狂奔する。

 

 第三に、何よりも革命思想が生き残っていることだ。レーニンはコミンテルン第2回大会( 22年) で、「二段階革命論」(民族および植民地問題に関するテーゼ)を打ち出したが、これを日本共産党は継承し、現行綱領でも「民主主義革命」を当面の課題とし、その後に「社会主義革命」を据えている。

 革命戦略や戦術だけでなく、もっと本質的問題はマルクス主義の弊害である。ソ連崩壊後、元ソ連共産党政治局員・宣伝部長のアレクサンドル・ヤコブレフ氏は、悲惨な共産主義社会がもたらし最大の原因を「唯物論にあった」と結論付けている(『マルクス主義の崩壊』サイマル出版会)。

 

共産主義の諸悪の根源は「唯物論」

 唯物論は必然的にフェティシズム(物神崇拝)に通じ、人間の精神を骨抜きにし、イデオロギーの操るままにさせたというのだ。レーニンを革命に突き動かした、このマルクスの思想とりわけ「唯物論」は今日なお自由諸国に浸透している。ロシア革命は単なる過去の遺物ではない。警戒を怠ってはならない。

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