対中国安全保障
日韓の防衛力強化でアジア・太平洋を守れ!
中国の覇権主義は海洋にとどまらず、宇宙空間とサイバー空間にも及んでいる。財政再建のため長期的な国防費削減を余儀なくされている米国は、中国の覇権主義に対して、アジア・太平洋地域での旧来の同盟国である日本と韓国に防衛力強化を求めている。
近年の中国軍事研究で強い関心を集めているのが中国の海洋戦略である。海洋覇権拡大を目指す中国は、遠方から来る敵を防衛線内に入れさせず(接近阻止:Anti-Access)、防衛線を突破されてもその内側で敵に自由な行動を許さない(領域拒否:Area-Denial)という「A2AD」コンセプトにより、複数の空母と潜水艦を建造し、「空母キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル東風21Dの実戦配備を進めている。
海軍力増強もさることながら、中国の海洋での無法ぶりも脅威である。中国は国連海洋法条約で定めているEEZ(排他的経済水域)域内での外国船舶の自由航行を認めず、国際紛争解決のための国際機関への提訴の義務付けも受け入れない。1992年の「領海法」で南沙諸島や西沙諸島、尖閣諸島が自国の領土であると宣言し、1998年の「専管経済区及び大陸棚法」で中国のEEZは沿岸だけでなく大陸棚を含むと宣言するなど、国内法を定めて一方的な主権の拡大を唱えている。
さらに今年の夏以降、中国軍の脅威は宇宙空間とサイバー空間でも顕在化している。
中国は11月3日、宇宙実験室「天空1号」と無人宇宙船「神舟8号」のドッキングに成功し、2020年完成予定の有人宇宙ステーション建設に弾みをつけた。日米欧露など15カ国で建設した国際宇宙ステーションは2020年には運用を終えるため、2020年以降は中国の宇宙ステーションが宇宙で人間が滞在できる唯一の施設となる。中国の宇宙開発は人民解放軍が主導しており、有事の際に軍事転用されることは間違いない。
中国が関与するサイバーテロ攻撃も日本の安全保障を脅かす問題としてメディアを騒がせている。9月18日に日本の防衛産業の中枢を担う三菱重工に対するサイバー攻撃が発覚して以来、防衛関連企業、衆議院と参議院、在外公館や総務省などの省庁に対するサイバー攻撃が次々と報じられた。読売新聞は9月19日から『サイバーウォーズ』という特集を連載し、サイバー攻撃関連ニュースを連日1面で報じた。朝日新聞も11月7日号1面で『サイバー戦に備えよ』と題し、「中国軍が見えない戦争に向けた準備を進めている」と訴えている。
10月下旬、パネッタ国防長官は米軍のアフガニスタンとイラクからの戦力削減に伴い、アジア・太平洋地域のプレゼンスを強化すると宣言した。11月9日には米国防総省が「ジョイント・エアー・シー・バトル構想(統合海空戦闘構想)」導入を発表した。しかし、その実現は米国議会の動向に委ねられている。今月23日までに超党派の予算委員会で、今後の具体的な予算削減案がまとまらない場合、6000億ドルの国防費の追加削減が強制的に決まる。米軍にアジア・太平洋を守る意思はあっても、それが実現するかどうかは微妙である。いずれにせよ、米国の長期的な国防費削減は避けられない。米国は中国の覇権主義対策として、アジア・太平洋地域での旧来の同盟国である日本と韓国に防衛力強化を求めている。
米国で「中国脅威論」を強く唱えてきたシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授(政治学)は、「アジアにおいては、中国が東西冷戦時代のソ連以上の脅威となる」と述べている。ミアシャイマー教授はその理由について、「旧ソ連は全盛期に国内総生産(GDP)が米国の3分の1で、人口も米国を少し上回るだけだったが、それでも驚異的だった。現在の中国はGDPが米国を追い抜く勢いにあり、人口は4倍を超える。さらに、ソ連の軍事戦略の中心が欧州にあったのに対し、中国は戦略の中心を北東アジアに置いている」と指摘している(朝鮮日報日本語版10月10日)。
ミアシャイマー教授の指摘どおり、アジア諸国、特に日本と韓国は中国の脅威に真剣に向き合い、早急に防衛力強化に努めなければならない。
2011年11月10日
台湾は自由アジアの砦!
日本の防衛政策を見直そう!
今年の6月、中華人民共和国は日本の尖閣諸島に1千隻の漁船を装った海民を送り込むという。文芸春秋2月号、麻生幾氏が「海民襲来」なる近未来小説を書いた。中国が尖閣・沖縄にどのようにして入ってくるか、そのストーリーが描かれている。
かつて、民社党の塚本三郎議員が国会で、「武装した兵士が武器を発砲しないで日本に上陸してきた場合、我が国は何ができるのか」と質問した。その場合、完全に侵入を許してしまう。
我が国には領海警備法がない。領海侵犯罪がない。我が国の防衛政策を見直さなければならない。このままでは、日本は中国の属国となってしまう。・・・
中国人民解放軍の恐るべき長期戦略
中国国防費 23年連続2ケタ増の大軍拡の狙い
中国の2011年の国防費が前年実績比12・7%増の6011億元(約7兆5378億円)になる。3月4日、全国人民代表大会(全人代=国会)の李肇星報道官が明らかにした。一般の報道では「中国の国防費が2ケタの伸び率を示したのは2年ぶり」としているが、我々はそうした見解に立たない。昨年の1ケタ伸び(7・5%増)の中身は巧妙に細工されており、実質的には2ケタ伸びだったからである。したがって中国の国防費は「血の天安門事件」以来、1989年~2011年まで23年間2ケタの伸び率で大軍拡をしてきたと見るべきである。
2011年の中国国防費は前年に比べて676億元(約8477億円)の大幅増である。李報道官は「中国は一貫して国防費の規模を抑制している。中国の国防費は透明で、いわゆる隠し軍事費問題は存在しない」と述べ、「予算の増加分は軍事訓練や人材訓練費、兵士の生活改善に使われる。中国は平和を堅持し、防衛的な国防政策を取る」と強調した。だが、この言葉を真に受ける人はよほどのお人好しである。確かに国防費に軍関連施設の建設、訓練と人材育成の経費、将兵の給与など訓練と人件費が約3分2を占めている。しかし、「隠し軍事費」は存在しないどころか巨額にのぼる。もともと中国の国防費は粉飾されており、実際の国防支出は「公表額の2~3倍」(米国防総省)というのが国際社会の常識である。例えば、1兆8000億円と見込まれる空母建造費(2014年完成予定)は国防費に一切含まれておらず、船体や艦載機を電子部品ごとに分けて科学研究費など予算の別項目に入れられている。弾道ミサイル迎撃システムの開発費や米本土を射程に収めるICBM「東風31A」の開発・製造も別予算である。2010年1月に地上配備型の弾道ミサイル迎撃システムの技術実験を行ったが、これも国防予算から省かれている。さらに実戦配備に向けて準備する次世代ステルス戦闘機「殲(せん)20」の開発費も含まれていない。最新兵器の開発配備はすべて国防費の枠外と言ってよい。
このような中国共産党政権の大軍拡の狙いはいったい何なのか。言うまでもなく覇権を拡大するためだ。制海権と制空権、さらには「制天権」を拡大し、中国の思い通りに世界を動かそうと考えているのである。制海権を確保するために強大な外洋型海軍に欠かせない空母戦闘群を配備する。そして制空権と宇宙を制する「制天権」の確保を目指し、「空天一体」戦略の下に航空戦力と弾道ミサイル迎撃システムを整備しようとしている。国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界第2位となった経済力を背景に、ロシアを追い抜き、米国を急追しようとする「軍事強国」を目指すのが中国共産党政権の思惑なのである。
「空天一体」戦略を完成させるために①精密攻撃能力強化に必要な情報化②遠方投入能力③海空軍のハイテク兵器④ミサイル迎撃システム―の4点に重点を置き巨額を投じているのである(これが国防予算の別枠だ)。今後、ミサイル早期警戒衛星を整備し、航空戦力でも米国のF16に匹敵する性能を持つとされる国産軽戦闘機「殲10」を大量配備し、加えて超音速巡航能力とレーダーに捕捉されにくいステルス性を備える第5世代戦闘機「殲20」の実戦配備を目指す。
米国防総省が2010年8月に発表した「中国に関する軍事・安全保障年次報告書」は中国人民解放軍の動向について次のように指摘している。中国軍は伝統的に台湾海峡有事を想定してきたが、「パワープロジェクション(戦力投射)能力を向上させるための投資」を続け、「台湾をはるかに越え、アジアでさまざまな軍事作戦を実行できる戦力を備える可能性」があり、「東シナ海、南シナ海と場合によってはインド洋や第2列島線を越えた海域の懸案に対処するため、作戦領域を広げる新たな基地や能力を開発している」。また中国軍は「核の不使用」政策を順守すると主張しているが、その原則をどう適用するかについて曖昧さがあり、さらに「前方展開能力の向上を続けており、東アジアの軍事的均衡を変える主たる要因」である。台湾に親中的な馬英九政権が発足して以降も中国の軍拡は衰えず、台湾対岸に配備した短距離弾道ミサイルは1050~1150基に上り(09年末)、「台湾海峡の軍事バランスは中国側に傾き続けている」のである。
また米軍の戦力投入を阻む「接近阻止・領域拒否能力」を一段と向上させている。「世界で最も積極的な弾道・巡航ミサイル開発計画」を推進しており、開発中の対艦弾道ミサイル(ASBM)は「空母を含め西太平洋の艦船を攻撃する能力を中国軍にもたらす」。これに加えて潜水艦の増強により中国沿岸から最大1000カイリ(1852㌔)離れた敵の艦船に対処できる能力を保有する見通しで、これら接近阻止兵器は米海軍の脅威になる。
中国の接近阻止戦略には2つのポイントがある。第1には南シナ海を握ること、第2には台湾を武力統一することである。この2つは言うまでもなく連動している。海南島に弾道ミサイル搭載可能な原子力潜水艦の基地を建設中で、同基地はすでに基本的に完成している。基地には地下施設があり、国際シーレーン(海上交通路)に直接のアクセスを確保し、南シナ海に潜水艦を隠密に出撃させる潜在力を持たせるのが狙いである。中国は南シナ海を台湾やチベットと並ぶ「核心的利益」と位置づけ、海南島を重要戦略拠点にしている。空軍が空中給油能力を備えることにより、南シナ海での空軍の作戦が可能になるほか、高度な駆逐艦や潜水艦の配備で「第2列島線」を越えた海上の作戦も可能になる(中国の海洋戦略については「今日の視点」3月4日付参照)。
中国はすでに射程1500キロの地上発射型対艦弾道ミサイルを開発しているが、これを海南島の海軍基地に配備する。同基地を起点にすると、ほぼ1500キロ先にマラッカ海峡があることに注目しなければならない。対艦弾道ミサイル配備により、中国~台湾~フィリピン~ブルネイ~マレーシア~インドネシア~ベトナムに囲まれた南シナ海は、西の玄関口・マラッカ海峡近海をはじめ大部分が射程内となるばかりか、移動式なので配備場所によってはマラッカ海峡を含めた、その外周までもカバーできる。同海峡は米軍にとっても台湾有事や朝鮮半島の有事の際、インド洋側から南シナ海、太平洋に入る戦略レベルの要衝である。中国が1995~96年の台湾総統選に際してミサイル演習で威嚇したが、米海軍は太平洋艦隊の空母戦闘群(現打撃群)とペルシャ湾に展開中だった空母とその護衛艦隊を台湾海峡に急派し、武威を示し中国の威嚇を押さえ込んだ。中国はこの軍事上のトラウマゆえに対艦弾道ミサイルを開発したのである。マラッカ海峡の年間通過船舶数は5万隻を超え、特に日本への原油の80%がここを通る。日本の生命線となるシーレーンまで中国は支配下に置こうとしているのである。
接近阻止戦略の最大の狙いは台湾の武力統一にある。すでに中国は着々と手を打ってきた。2005年3月の全人代では台湾の独立を阻止するためと称して武力行使を合法化する「反国家分裂法」を制定し、武力侵攻の法的根拠を作り上げた。そして2010年の全人代では「国防動員法」を作り、同年7月1日に施行した。中国側の説明によると、同法は「国防法」を補完するもので、戦争や自然災害など有事における人員や物資の動員を法制化し、危機の対処や戦争の抑止・勝利に向けて軍の運用能力を向上させるのが狙いという。「国家の主権」「統一」「領土保全」「安全」が脅かされる場合を想定し、会社(中国進出の日本企業も対象だ!)や個人に政府による民間物資徴用に応じることを義務づけるほか、「国防勤務」に当たらせるため18~60歳の男性と18~55歳の女性を動員する。愛国教育など国防意識の向上も規定している。
台湾では陳水扁前政権時代に中国が「上陸戦」に武装警察(武警)を投入する「斬首(ざんしゅ)戦」を警戒していた。「中国軍に代わって武警がパラシュートで台湾に上陸し、陳総統の首を取りに来る」というもので、台湾軍は軍事演習でも斬首戦に対応する訓練を行ってきた。中国は台湾を国内問題と強弁しており、それで国内の治安維持や国境防衛などを担う武警を台湾侵攻に使って、武力統一を正当化する魂胆なのである。武警は暴動鎮圧用の火器や装甲車など陸軍並みの装備を持っており、チベットやウイグルで民衆を弾圧した実績を持つ。武警を充実させるため、すでに1996年に陸軍の14歩兵師団を武警に配属し、武警機動師団に転換した。軍が警察に偽装し人民を弾圧するわけだ。中国軍が接近阻止戦略で米軍の動きを封じれば、次に軍が台湾上陸を敢行、その作戦が成功すれば都市戦に適した武警機動師団が投入し、国内問題として武力統一するつもりなのである。
そうなれば南シナ海で海南島が「不沈空母」となって同地域を制するように、東シナ海と西太平洋では台湾が「不沈空母」となって覇権を確立する。そのとき日本は共産中国の支配下に置かれる。こんな悪夢を招かないために日米同盟を深化させ、憲法を改正してしかるべき自衛力を整備しなければならない。
2011年3月6日
中国軍機の尖閣諸島への領空侵犯を許すな
中国海軍のY8情報収集機とY8哨戒機が3月2日、東シナ海上空を南下し日中中間線を越え、尖閣諸島の北50~60キロまで接近したため、領空侵犯の恐れがあるとして航空自衛隊南西航空混成団が那覇基地からF15戦闘機をスクランブル(緊急接近)させた。中国軍機が尖閣諸島にここまで近づくのは初めてのことである。中国は尖閣諸島のみならず沖縄までも手中に入れ、さらには西太平洋の覇権を握る野心を燃やせ、これまで「第1列島線」を越えて中国艦船をしばしば西進させてきた。昨年9月の中国漁船による尖閣侵犯以降は、艦船に加えて航空機による接近を繰り返し、空自のスクランブルが頻発していた。そして徐々に間合いを図り、今回は尖閣諸島の50キロ地点まで最接近し、日本側の対応を試した。放置しておけば、尖閣諸島への領海・領空侵犯のみならず、偽装漁船(海軍)による尖閣上陸もあり得ると見ておかねばならない。こうした中国の蛮行を事前に防ぐために陸上自衛隊の尖閣諸島駐留を実施すべきである。灯台の設置や漁港整備など領土保全に向けた取り組みも欠かせない。
中国周辺の海域(黄海、東シナ海、南シナ海)の総面積は約300万平方キロメートルで、中国の陸地面積(約960万平方キロメートル)の3分の1に該当する膨大な領域である。これを中国は自国の「領土」にしてしまおうという魂胆なのだ。それでかつては「沿岸防衛」だけを中国海軍の主任務にしていたが、1970年代には「近海防御」へと転換させ、対馬海峡から東シナ海、台湾海峡、南シナ海に至る「第1列島線」を守備範囲として拡大した。さらに80年代になると、鄧小平は海軍力増強を改革・開放路線と表裏一体と捉え、「近海積極防衛戦略」を掲げ、85年には「海洋権益の擁護」を主張、80年代後半には南シナ海・南沙諸島のベトナム南部の近辺海域に進出し、6カ所の岩礁を軍事占領した。さらに90年代に入ると南沙諸島のフィリピン・パラワン島海域に進出し、ミスチーフ礁(中国は美済礁と呼称)を占領、92年2月には中国の権益に必要な地域を戦略領海と規定する「領海法」を制定し、フィリピン領の西沙諸島の一部を米軍がフィリピンから撤退した直後の95年に軍事占領した。「領海法」は尖閣諸島を中国の領土と明記しており、これに刺激を受けた台湾は99年に尖閣諸島を領土とする領海の基準線を定めて対抗している。
さらに中国は2010年1月には「離島」の管理方法などを定めた「島嶼保護法」を施行し、東シナ海(すなわち尖閣諸島も)や南シナ海の南沙・西沙諸島を軍事的支配する“法的根拠”を作りあげたのである。その上で南シナ海をチベットや新疆ウイグル、台湾と同様に「核心的利益」と称するようになった。遠からず東シナ海も「核心的利益」と唱えるのは目に見えている。これに伴って海軍を外洋海軍へと急速に改編し、台湾とフィリピンを結ぶバシー海峡、南シナ海を内海化し、さらに「第1列島線」を西進し伊豆からサイパン、グアムを含む東太平洋地域、パプアニューギニアに至る「第2列島線」と位置付け、最終的には沖縄本島を含めた西太平洋を手に入れようと目論んでいるのである。
中国の狙いは①2010年代前半までに「第1列島線」内で米軍の影響力を排除し(接近阻止戦略)②40年までに「第2列島線」を越え、インド洋や西太平洋から米軍の影響力を減らすというもので、そのために空母建造計画まで進めているのである。こうした流れの中で中国海軍は2004年11月には漢級原潜が沖縄の先島諸島で領海侵犯。同様の領海侵犯事件は08年9月、高知県沖でも発生した(国籍不明潜水艦とされている)。また06年10月には太平洋で軍事演習中の米空母に潜水艦が魚雷射程の至近距離にまで接近、08年11月には米空母「キティホーク」が台湾海峡で潜水艦に28時間追尾され、空母から戦闘機が発進する事態を招いた。さらに08年10月、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦と最新鋭の江凱級ミサイル・フリゲート艦2隻、洋上補給艦1隻の計4隻からなる中国艦隊が初めて対馬沖から日本海に入り、津軽海峡を通過した。国際海峡とは言え、日本領海にまで進出するようになったのは初めてのことだった。
そして2010年4月には海軍艦船10隻が沖縄本島と宮古島を間の公海を南下し、その後、西太平洋に進出、沖ノ鳥島を1周する日本への示威行動を繰り広げたのである。この艦船は東海艦隊(司令部・浙江省寧波)のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦2隻、フリゲート艦3隻、キロ級潜水艦2隻、補給艦1隻など計10隻で、人民解放軍機関紙「解放軍報」は同年4月8日、東海艦隊が東シナ海で外洋展開共同訓練を実施すると予告。明らかに日米の出方を見極めようとする示威行動だった。同艦隊は7日から9日にかけて予告どおりに東シナ海の中部海域で大規模な訓練を実施し、8日には中国艦艇の搭載ヘリが監視活動中の海上自衛隊護衛艦「すずなみ」の高度30メートルにまで接近し、危険の伴う至近距離から示威行動を繰り広げた。10日には沖縄本島の西南西約140キロの南西諸島を太平洋に向けて進み、キロ級潜水艦2隻は浮上航行した。浮上航行は初めてのことで、「今までになかった事態」(北沢防衛相)だった。こうして中国艦隊は「第1列島線」を突破したのである。11日には沖縄南方海域で洋上補給を行い、13日頃に日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)近海に入り、同島を基点とする日本の排他的経済水域(EEZ)内で島を1周するように航行、その後も太平洋上で演習を続けた。
同演習について米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員は、 HYPERLINK "javascript:void(0);" 沿岸から最も遠い距離に出ての最大規模の演習行動だと特徴づけ、「中国海軍の新戦略の始まりであり、米軍への挑戦と日本の反応の探察を目的としている」と分析している(産経新聞・古森義久ワシントン特派員=2010年3月21日付)。それによると、今回の中国艦隊の保有兵器は①キロ級潜水艦が搭載する超音速のSS-N22サンバーン艦対艦ミサイルが有事の際、日本の自衛隊艦艇への大きな脅威となる②ソブレメンヌイ級駆逐艦が搭載する超音速SS-N27シズラー艦対艦ミサイルも自衛隊への脅威となるほか米軍艦艇への接近拒否の威力を発揮できるという。同研究員は、中国海軍は①遠洋活動能力を高め、多元的な艦隊、機能の確立を目指す新戦略のスタートとしている②訓練は東アジア、西太平洋での米海軍の覇権への挑戦を目指している③今回の艦隊の動きに日本がどう反応するかを考察することを意図していると指摘。さらに「今回の訓練航行が象徴する拡大活動を今後定着させ、日本との領有権紛争を抱える東シナ海での海軍力の増強によって、主権の主張に、より強い実効を発揮させることを意図している」と述べている。同研究員は中国が沖縄諸島に関しても日本の領有権を明確に認めていない点も指摘している。
こうした一連の流れの中で昨年9月の尖閣諸島における中国漁船の領海侵犯および海保巡視船への体当たり事件があったと見ておかねばならない。同事件以降、海軍艦船だけでなく航空機による「第1列島線」突破を試し始めたである。朝日新聞によると(2010年12月27日付)、尖閣事件以降、東シナ海上空で自衛隊機に対して中国軍機がこれまでにないような接近をする例が頻発している。自衛隊の中国軍機に対するスクランブルは2010年度すでに44回に達し(12月下旬時点)、過去5年で最多となった。海上自衛隊はP3C哨戒機に加え、EP3電子戦データ収集機やOP3C画像情報収集機などの「偵察機」を南西諸島の北西空域の日本の防空識別圏(ADIZ)の内側、日中中間線付近へほぼ連立飛ばし、航空自衛隊もYS11EB電子測定機で電波を傍受、中国軍の動きを監視している。こうした「偵察活動」に対して中国側は戦闘機や攻撃機を発進させ、接近はADIZの外までにとどめていたが、尖閣事件の翌月の10月からは海軍のJH7攻撃機がADIZ内に入るだけでなく日中中間線も越えて、自衛隊機を視認できる距離まで接近。空自がスクランブルをかけると引き揚げていたという。
今回、中国側はさらにエスカレートさせ、尖閣諸島に最接近したわけである。
領土問題で中国に妥協すれば一層、付け込んでくるのは明白なことである。わが国は抑止力(軍事的)をしっかりと固め、防衛していかねばならない。
2011年3月4日
中国当局の海外メディアへの言論弾圧を糾弾する
中国は中東の「ジャスミン革命」の波及を恐れて言論弾圧を強めている。2月27日に27都市で「中国版ジャスミン革命」集会がネットで呼びかけられたが、集会場所を封鎖したり海外メディアの取材を妨害したりして必死で押さえ込みを図った。上海では約1000人が集結したが、武装警官が群集を蹴散らし、それを取材していた日本人カメラマン(毎日放送)を含め10人の海外ジャーナリストを一時拘束した。北京の繁華街・玉府井では数百人の武装警官が警察犬などと巡回し通行人に立ち止まらないように指示し、周辺にいた通行人には清掃車が散水して脇道に追いやり、不審者と判断した通行人を連行した。27日の集会呼びかけには2009年に大規模な民族衝突が起こった新疆ウイグル自治区のウルムチも含まれていたが、公安当局が大学生に外出禁止令を出すなどして厳戒態勢で臨み、今のところ混乱が生じたとの情報は入っていない(日本経済新聞など各紙2月28日付)。
どうやら現時点では当局挙げてのネット封じが奏功しているように見受けられる。だが、ネット上の「中国ジャスミン革命」集会の呼びかけは2月20日に13都市、27日に27都市、次の日曜日の3月6日には38都市で行うよう呼びかけている。3月5日には北京で全国人民代表者大会(全人代=国会)第4回会議が開かれるだけに当局は集会封じに血眼になっており、さらなる言論弾圧が危惧される。
ネット上の「中国ジャスミン革命」集会の呼びかけは、「我々が欲しいのは食べ物、仕事、住宅、公平、正義だ。一党独裁の終結、報道の自由を要求する」としている。これはまさに2008年12月に発せられた「08年憲章」を踏襲するものである。「08年憲章」は共産党の一党独裁体制の変更を求めネット上に発表されたものだ。憲章を起草したのは人権活動家の劉暁波氏(現在、54歳)らで、これに学者や弁護士、民主・人権活動家だけでなく、全国各地の炭鉱労働者、企業経営者、軍人、退役兵士、大学生、失業者など約1200人が名を連ねた。当局はネット規制に躍起となったが、憲章支持はネット上で広がっていった。これは「プラハの春」(1968年)の「2000語宣言」やポーランドの連帯(1980年)を髣髴させるもので、中国の民主化への一撃となった。
「08憲章」は序文で、「今の中国は共産党の天下だ。党は文化大革命、天安門事件や人権擁護運動の弾圧などで数千万人の命を奪った。政治改革を拒み、官僚腐敗や法治の不備、社会の2極分化、いびつな経済発展、自然破壊を招いた。公民の自由は保障されていない。役人と民衆の対立が激化し、制御不能に陥りつつある。現体制は時代遅れで、もはや改革は避けられない」と、共産党政権を指弾する。そして「自由、人権、平等、共和、民主、憲政」を基本理念とし19の基本的主張と行っている。すなわち憲法改正・3権分立の保障・立法機関の直接選挙・違憲審査制度の確立・軍隊の国軍化・違法逮捕の防止・首長直接選挙の段階的実施・都市農村の戸籍差別廃止・結社の自由の保障・集会デモ表現の自由・言論出版学術の自由・宗教の自由・1党統治のための政治教育廃止・土地私有化の推進・民主的財政の確立・社会保障制度の確立・環境保護・中華連邦共和国の樹立・政治犯の名誉回復である。まさにこれは中国民衆の叫びと言ってよい。
劉暁波氏は1989年の天安門での抗議行動に参加し、「08憲章」の起草で中心的役割を果たしたゆえに2009年に国家政権転覆扇動罪で懲役11年と2年間の政治的権利剥奪の判決を受け、現在は遼寧省錦州市の刑務所に入れられている。昨秋、ノルウェー・ノーベル賞委員会は2010年のノーベル平和賞をその獄中にいる民主活動家、劉暁波氏に授与した。劉氏が長年、中国で基本的人権のために非暴力的手段で闘ってきたことを評価しての授賞だが、これに対して中国共産党は授賞のニュースが中国民衆に伝わることを極度に恐れ、メディアやネットを遮断するなどして1党独裁政権の維持に躍起となった。そして劉暁波氏を獄から出さないばかりか、夫人の劉霞さんを自宅軟禁し、その自宅周辺を閉鎖するなど人権侵害を繰り返し、今も弾圧を続けている。
「中国ジャスミン革命」集会の呼びかけが一層広がれば、中国共産政権は「血の弾圧」も辞さないだろう。天安門事件の「血の弾圧」の系譜にあるのが現政権に他ならないからだ。その意味でも天安門事件を今一度、想起しておく必要がある。天安門事件は1989年4月に政治改革に積極的だった胡耀邦元総書記が死亡したのを機に民主化運動が高まって勃発した。当時、大学では「民主は70にしていまだ成らず(1919年の5・4運動以来70年)、中華は40にして興らず(1949年の建国以来40年)。天下の盛衰をみるに、北大(北京大学)また哀し」(北京大学・壁新聞)といった声が湧き上がり、全国に民主化が広がった。だが、鄧小平はこれを「動乱」と断じ、徹底弾圧に乗り出し89年6月4日、人民解放軍を動員し世界のジャーナリストの眼前で無辜の人民に発砲、中国当局の発表では学生・市民ら319人が死亡した(実際は3000人以上が死亡したとされる)。これが「血の天安門事件」である。劉氏はこの民主化運動に参加し天安門事件後、1年半にわたって身柄を拘束された。
それゆえに天安門事件を持ち出されることを中国共産党執行部は極度に恐れている。それは江沢民が上海から呼び寄せられ「6階級特進」(彼は序列7位だった)で総書記に就いたように現在の指導部は自らの手を天安門事件の血で染めているからである。胡錦濤国家主席は当時、チベットの最高責任者(自治区書記)だったが、天安門事件直前の89年3月、チベット・ラサの暴動に対して党中央の指令に忠実に従い、戒厳令を敷き「血の弾圧」によって収拾し、それが中央に評価され総書記にまで上り詰めた。ポスト胡錦濤の座を狙う習近平副主席は人民に銃口を向けた軍部の後押しで出世してきた人物である。これが中国共産党指導部の実態である。だから民主化の声を恐れ続けている。
我々は「中国ジャスミン革命」を求める中国の民主運動家、民衆と熱く連帯し、中国の民主化運動を支持する。同時に海外ジャーナリストを拘束するなど取材妨害、言論弾圧の暴挙に出る中国共産党当局を厳しく指弾するものである。
2011年3月2日
中国の共産党政権に「正統性」は存在しない
リビアの最高指導者ムアマル・カダフィは民主化デモを徹底弾圧するつもりらしい。2月22日に国営テレビを通じて演説し、「私は革命家であり、辞任しない」と公言、天安門事件を引き合いに出し反対者は「死刑だ」と言い放った。それで思い出した人も少なくないだろう、中国共産党政権は「血の弾圧事件」の張本人だったことを。天安門事件だけではない。チベットや新疆ウイグルでも「血の弾圧」を繰り広げた。いったいカダフィ政権と中国共産党政権はどこが違うのか。リビアには憲法がないが、中国には憲法がある。確かにここは違う。だが、それは上辺だけの話であって、どちらも独裁政権に変わりはない。それもカダフィは独裁41年だが、中国は実に独裁61年だ。カダフィが「革命」を自らの正統性の根拠にしているように、中国共産党も「革命」を正統性の根拠にする。リビア軍の一部は国家の軍隊でなく、カダフィ個人の親衛隊(傭兵)だ。中国の人民解放軍も国家の軍隊でなく、軍隊全体が共産党の軍隊だ。リビアの政権中枢はカダフィの一族郎党が占め、富を独り占めにしている。中国では次期最高指導者とされる習近平副主席が「太子党」(共産党幹部の2世)であるように、共産党員7800万人の一族郎党が支配層を形成し、経済成長の富を自らの懐に溜め込んでいる。リビアでは民衆が決起し、カダフィに正統性がないと訴えている。では中国共産党政権はどうなのか。カダフィ以上に正統性などありはしない。
中国は「アラブ革命」に戦慄している。2月19日、ネット上に中東の民衆デモに続こうとばかりに「中国茉莉花(ジャスミン)革命」を呼びかける書き込みが広がった。北京や上海など13都市の繁華街の広場で20日午後2時に集まり、「一党独裁を終わらせろ」「民主主義万歳」のスローガンを叫べば、「歴史が変わり始める」というのだ。これに共産党は大慌てで、ネット管理に血眼になっている。19日には胡錦濤主席が中国共産党の中央党学校で政府幹部に対して「社会管理」をテーマとした重要講話を行い、「インターネットの管理を強化し、ネット世論を誘導するシステムを完備せよ」と命じた。それだけでなく2月8日には「中国共産党軍隊委員会工作条例」の改訂版を作り、「軍は党の指揮通りに動く」と改めて定めたという。エジプトのように軍が民衆側につかないように統制し、いざとなればカダフィ同様に再び「天安門事件」を引き起こす魂胆なのである。20日には13都市で厳戒態勢に入り、広場に集まった100人以上を連行したと伝えられる。今後はこうした行動には国家転覆煽動罪を適用した徹底取締りを示唆している。
中国のネット監視網は強力である。治安当局が数万人を動員した監視システム「金盾工程」を使ってネットを徹底監視し、共産党に不都合な情報が載ったサイトは即時遮断する。アラブで活躍したフェイスブックやツイッターは完全封鎖している。中東民主化デモが広がると、人民解放軍の「網軍」(ネット軍=30万人規模)まで動員、また7800万人の共産党組織をフル動員して監視体制を張り巡らしている。
すでにメディアに対しては言論統制を強め、国民世論を共産党のもとで掌握しようと躍起となっている。それは今年が辛亥革命100年(10月10日)で、孫文の3民主義などをもって共産党批判が起こることを恐れているからだ。1月4日には共産党全国宣伝部長会議を開き、全国で「愛国主義教育」の徹底を命じ、さらに1月5日、党中央宣伝部は全10カ条からなる報道規制をメディアに文書で通知した。通知は詳細にわたり、▽災害・事故=発生地と異なる地域のメディアは取材不可。重大な災害や事故は中央メディアの現場中継も認めない▽土地収用問題=暴力的撤去や立ち退き過程で起きた自殺、抗議などの報道禁止▽抗議デモ=問題の矛先や焦点が党委員会や政府に向かうことを防ぐ▽腐敗問題=政治体制改革に関する問題提起などをしてはならない。政府と対立する立場に立つことは絶対に許さない▽不動産問題=不動産価格の独自調査や市民の意識調査は禁止。極端な価格変動した事例を取り上げ騒ぎ立ててはならない―といった内容である。
これに加えてアラブ情勢を踏まえてネット統制システムを作り上げようというのだ。国民生活のすべてを共産党が掌握しようというわけで、「文化大革命以来の言論弾圧」(人権運動家)へと突き進んでいる。
このように言論弾圧に血眼になるのは、力で押さえつけない限り、共産党政権が維持できないからだ。そもそも100年前(辛亥革命)の「孫文の理想」を共産党は踏みにじってきた。孫文は辛亥革命でアジア初めての共和国を作ったが、共和国というのは「主権は国民全体に属する」(辛亥革命時の中華民国臨時約法=憲法=第2条)ということである。この「民権」こそ、辛亥革命以来の中国政治の大義である。列強諸国からの「独立」、バラバラになった中国の「統一」、民衆を豊かにする「富強」、そして「民権」が近代中国の大義であることを想起しておかねばならない。それゆえに孫文は、3民主義(民族主義・民権主義・民生主義)と5権分立(立法・行政・司法に加え考試=官吏の登用、監察=他の4権に対する監督を加えた5権)を掲げた。これらを近代中国の大義とするからこそ1949年9月、中華人民共和国の建国に当たって開催された政治協商会議(当時の最高政治組織)において「中華人民共和国は独立、民主、平和、統一、富強のために奮闘する」との共同綱領を採択したのである。ここに「民主」が明記されていることを共産党はよもや忘れはいまい。
だが、この大義は現在の共産中国のどこにも存在しない。孫文の「統一」は3民主義の民族主義に集約されるが、それは決して華人中心思想ではない。満人の清に代わって新たに民族の統合を図るには5族(漢、満、蒙古、回、チベット)の共和(5族共和)が不可欠とし、それぞれの宗教・文化・自治を重んじるものである。それは共産党の偏狭な民族主義(華人支配)とは異質である。共産党政権はチベットや新疆ウイグルにおいて民族・宗教破壊を繰り広げており、5族共和とは程遠い銃剣による帝国主義支配でしかない。富強も共産党員の一族郎党のみの富強にすぎないのである。
中華人民共和国というけれども、そもそも共和国とは民主主義に基づき主権が国民に所有されている国を指す。それは国民によって直接あるいは間接に選挙によって選ばれた代表が統治する制度である。選挙で統治者を選んでいない中華人民共和国は共和国を名乗る資格はない。中華人民共和国は、中国人民の国でなければ、誰の国なのか。それは共産党の国である。事実、中華人民共和国憲法は前文において「中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国共産党が中国の各民族人民を指導し、マルクス・レーニン主義及び毛澤東思想の導きの下に、真理を堅持し、誤りを是正し、多くの困難と危険に打ち勝って獲得したものである」と共産革命を自賛し、さらに「中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、マルクス・レーニン主義、毛澤東思想及び鄧小平理論に導かれて、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し」などと共産党による独裁政権であるとうたっているのである。
かかる共産党の指導下にある国家をふつうの国家と同列に論じるようなことがあっては断じてならない。共産党は1927年の南昌蜂起以降、軍閥や国民党との熾烈な権力闘争に打ち勝ち、中華人民共和国を樹立したのは、いかなる状況に陥っても軍事力を手放さなかったからにほかならない。毛沢東が言ったように、まさに銃口から政権が生まれ、銃口によって政権を維持してきたのである。それが現在の共産中国である。だからこそ人民解放軍の建軍記念日は南晶蜂起の日である1927年8月1日なのである。これは人民解放軍が中華人民共和国の軍隊でなく、共産党の軍隊であることを如実に示している。「党の絶対指導下で革命の政治任務を執行する武装集団」(江沢民主席「重要講和」=1998年12月25日)なのである。
これが憲法に「共産党に指導される」とした「指導」の中身である。そして共産党の軍隊をもって「人民民主独裁」という名の共産党一党独裁を堅持するのが共産中国であり、チベットやウイグル、満州、蒙古など少数民族を「中国の諸民族の人民」の名のもとに軍事支配下に置いているのである。そればかりか、憲法前文に「帝国主義、覇権主義及び植民地主義に反対することを堅持し、世界諸国人民との団結を強化し、抑圧された民族及び発展途上国が民族の独立を勝ち取り」とあるように、「マルクス・レーニン主義、毛澤東思想及び鄧小平理論」に基づいて、世界共産化の野望を抱き続けているのである。
以上から、中国共産党政権に中国民衆を治める「正統性」がまったく存在しないことは自明の理である。このことを念頭において共産中国と関わっていかねばならない。
2011年2月23日
言論の自由なき中国の恥ずべき歪曲報道
当たり前の話だが、中国には言論の自由がない。国家指導者が海外で語った発言も国内では報じられなかったり、都合よく修正したりして伝えられる。こんな国とは、まともな外交関係を望むほうがどうかしている。米中首脳会談も例外ではなかった。
朝日新聞によると、中国の胡錦濤国家主席が1月19日の米中首脳会談後の共同会見で「人権の普遍的な原則を尊重する」と発言したことについて、中国外務省が中国主要メディアに対し、「強調しすぎないように」と報道に自制を求める内部文書を出していたことが分かったという(1月21日付=ワシントン峯村健司記者)。それによると、内部文書は「メディア報道参考内部資料」と題され、A4用紙7ページにわたって共同声明の各項目の説明と、報道すべき部分について指示が書かれており、「成果のみを積極的に報道し、世論を正しく誘導する」よう求め、「指示を厳格に守り報道に当たること」と命じ、首脳会談直後に中国の主要メディア各社に示された。これを受け胡氏の人権関連発言について中国の主要メディアはまったく報じなかった。人権問題で米メディアの記者が「あなたは質問に答えていない」と胡主席に詰め寄る記者会見の場面は中国国内ではシャットアウト、北京で視聴できるNHK国際放送のニュースでもこの場面や胡主席に対する抗議行動の場面は遮断され、真っ黒になったという。いつものことながら、官製(共産党製)歪曲報道である。
ことほど左様に中国には言論の自由はなく、国民世論を共産党のもとで掌握しようと血眼になっている。とくに今年は辛亥革命100年(10月10日)、中国共産党創立90周年(7月1日)を迎えることもあって徹底した言論統制に乗り出している。年明けの1月1日に開かれた共産党統一戦線組織・人民政治協商会議の新年茶話会で胡主席が「調和・安定の促進」を強調、これを受け4日には党全国宣伝部長会議が開催され、全国で「愛国主義教育」を徹底して行うことが確認されたという。党中央宣伝部は5日、全10カ条からなる報道規制をメディアに文書で通知した(日本経済新聞1月19日付=北京支局・尾崎実記者)。通知は「2つの記念日に向け、良好な世論環境を構築」するよう要求し、次のような規制をしている。▽災害・事故=発生地と異なる地域のメディアは取材不可。重大な災害や事故は中央メディアの現場中継も認めない▽土地収用問題=暴力的撤去や立ち退き過程で起きた自殺、抗議などの報道禁止▽抗議デモ=問題の矛先や焦点が党委員会や政府に向かうことを防ぐ▽腐敗問題=政治体制改革に関する問題提起などをしてはならない。政府と対立する立場に立つことは絶対に許さない▽不動産問題=不動産価格の独自調査や市民の意識調査は禁止。極端な価格変動した事例を取り上げ騒ぎ立ててはならない―といった内容である。中国メディア関係者は尾崎記者に対して「国民生活のすべてを党が掌握した文化大革命以来の言論弾圧だ」と述べている。これが中国の実態である。
こうした中国のメディアの実情を日本のメディアはどう考えるのか。親中の朝日新聞においても上記の峯村健司記者のような現場記者は言論弾圧に憤っている。朝日1月7日付オピニオン面の「記者有論」では、中国総局の古谷浩一記者が「中国の言論規制 弾圧の陰湿さ知らない国民」と題し、中国当局の弾圧の陰湿さを報告している。中国には強力な指導力を発揮し経済発展しなければ国民が豊かにならないという強権容認論が内外にあるが、古谷記者はこれを真っ向から批判し、「こうした主張に首をかしげてしまうのは、政権を批判する人々への弾圧の仕方が『陰湿』を極めているからだ」と指摘、この数カ月に取材できたケースだけでも例は絶えないとし、理由も言わず夜中に自宅を訪ねて幼児とともに連行する。軟禁して外国人記者との接触を絶つ。裁判も弁護士もなしに何年も収容所に拘留する。刑期を終え、釈放された活動家は失踪したままだ。そして、そのいずれもが国内では報道が許されない―と具体例を列挙し、「『法治』はどこにいったのだろう。政権を維持するためなら、何でもできるみたいだ。中国政府が自らの主張に本当に正義があるなら、せめて、もっと堂々と、言論規制の『闇の部分』を国内外に明らかにすべきではないか。…少なくとも、国民の人権を尊重しない国が、隣国との関係を本当に尊重してくれるとは思えない」と厳しく中国批判を展開、返す刀でこうした独裁国と良好な外交関係が築けると信じている親中派を暗に批判している。
その親中派とは朝日新聞の首脳陣(とりわけ論説室)にほかならない。論説室は朝日1月4日付の社説で「中国と向き合う 異質論を超えて道を開け」と、「異質論」を否定し、独裁中国との関係を深めよとする融和策を強調しているのだ。異質論を超えて、とは聞こえがよいが、「陰湿な弾圧」や「独裁」から目を逸らせと言うことである。米中首脳会談を伝える1月20日付朝刊では1面でオバマ、湖錦濤両首脳が笑顔で握手を交わす写真を載せ、見出しは「汎太平洋時代 米中と歩む」とし、まるで米中によって太平洋を仕切ってくれといわんばかりの記事を載せた。かつて中国海軍幹部が米海軍幹部に「太平洋を西と東で分け合おう」と持ちかけた太平洋分割論を思わせる論調である。朝日新聞は現場の声に耳を傾けず、ひたすら中国に尻尾を振っているのだ。
日経の尾崎記者によれば、中国紙記者は「報道規制が強まった2008年の北京五輪や09年の建国60周年の際にも、これほど広範囲な指示はなかった」と批判し、「なりふり構わぬ世論誘導は、自らの統治能力に対する指導部の危機感の表れだ」と指摘しているという。自由主義国の日本のメディアは、自由のない国の言論を支援すべきであって、安易に「異質論を超えて」などと独裁政権の言論弾圧を容認すべきではない。朝日新聞は恥ずべきである。
2011年1月21日
米中首脳会談―米国は中国に譲歩しなかったか
オバマ米大統領と胡錦濤中国国家主席による米中首脳会談が1月19日、ワシントンのホワイトハウスで開かれた。注視すべきは米国が中国の“経済力”に屈服し、妥協外交に陥り、自由アジアや西太平洋を中国に売り渡さないか、という点である。事実、中国は胡主席の訪米にあわせ中国企業による450億ドル(約3兆7000億円)を超える米製品購入や投資の商談をまとめた。米ボーイング社の航空機200機のほか、全米12州の企業などと70の契約を結んでおり、幅広く米国を“買収”していこうとする意図がうかがえるからだ。
報道によると、会談後の共同記者会見で米中首脳は世界経済や安全保障分野で連携していくことで一致、両国は経済・貿易、エネルギー・環境、科学技術などの分野で交流や協力を強くすることで合意したという。だが、人民元についてオバマ大統領は「過小評価されている」と指摘したが、胡主席から具体的な言及はなかった。人権問題に関しては対話を進めることで米中双方が合意し、共同声明には「米国にとって人権保護と民主主義が外交政策の重要な一部分」と明記された。だが、オバマ大統領は中国政府とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世側との対話を支援していく方針を改めて言及したが、胡主席は中国が人権の保護・促進を約束しているとしながらも「中国は巨大な人口を持つ発展途上国で多くの課題がある」と木で鼻をくくったような対応ぶりだった。また共同声明でも「中国はいかなる国の内政干渉もすべきでないと強調した」との一文が盛り込まれ、人権で妥協しない独裁国・中国の強権姿勢を改めて見せつけた。
軍事面については信頼醸成や誤解解消に向け、対話や協力を進めていくことで基本的に合意したとしているが、中身は不透明である。北朝鮮問題については朝鮮半島の非核化に向けて協力することで一致、また南北関係の改善の重要性でも一致したとしたが、共同声明では北朝鮮のウラン濃縮計画に懸念を表明するにとどまった。対北朝鮮での強硬路線に慎重な中国との温度差が浮き彫りになったといえよう。
産経新聞は米中共同声明に「核心的利益」の文言が盛り込まれるか否かに注目していた(1月19日付=ワシントン佐々木類記)。2009年11月にオバマ大統領が訪中した際、米中共同声明で中国が台湾やチベットに関して使う「相互の核心的利益の尊重」を明記したが、「この文言は南シナ海の内海化を正当化するよりどころとされ、米国側を驚かせた」(外交関係筋)とされるからだ。同共同声明は「核心的利益」が何かを明示していないものの、中国側は従来の台湾やチベットに加え、南シナ海を核心的利益の対象に加えることを決めたとされ、昨年5月の米中戦略・経済対話で「南シナ海は中国の核心的利益である」と正式に主張するに至った。これに対して中国との間で島嶼領土問題を抱える東南アジア諸国が反発し、米国や日本でも問題化、中国は発言を慎重にし始めている。それだけに今回の米中共同声明で核心的利益が明記されるか注目された。結論からいえば、明記されることはなかった。表に出ている声明や記者会見などを見る限り、米国が中国に譲歩したと思われる点は見られない。だが、実際の会談では何が話し合われたのか、今のところ知るすべもない。
ともあれ、今回の米中首脳会談は米国が中国から適当にあしらわれた印象が強い。経済力をつけた中国が焦らず、じわじわと米国を締め上げていく。そんな構図が今回の米中首脳会談から読み取れる。胡錦濤主席は訪米に先立って米紙による書面インタビューに応じ、その中でドルを基軸とする現在の国際通貨体制について「過去の産物だ」と断定したのはその象徴である。ここから米国に取って代わって21世紀の覇権を握ろうとする野望が垣間見られる。
米国家情報評議会(NIC)は08年11月に「世界潮流(Global Trends)2025 変革される世界」と題する報告書をまとめ、今後15年を「新秩序への移行期に当たる」と位置付け、「不安定化」へ警鐘を鳴らしたが、その中心課題に据えたのは中国の台頭だった。それによると、2025年には「第2次大戦後に構築された国際体制はほとんど見る影もなくなる」とし、世界は多極時代となって安定性がなくなり、米国は軍事技術の進歩によって依然として「最も強力な国」であり続けるが、経済力や国際的影響力の低下は不可避とした。米国に代わってどの国が影響力を増大させるのかというと、中国とインド、ロシアなどの新興国とりわけ中国である。中国は25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測し、途上国は西欧型モデル(市場経済・民主主義)よりも国家資本主義的な中国型モデル(政治独裁・非民主主義)に傾斜し、世界各地で民主化が後退するとも予測している。胡主席がドル機軸の国際通貨制度を「過去の産物」と断じ、新たな通貨制度を言い出すのは、こうした流れの中にあると見ておかねばならない。
米中首脳会談にあわせるかのように中国国家統計局は1月20日、2010年の名目国内総生産(GDP)が約39兆7983憶元(約514兆円)になったと発表した。これで日本を抜いて世界2位となったのは確実である。これを機に経済力を軍事力と政治力に転化する中国共産党政権が攻勢期に入るとみて間違いない。米国が毅然と対抗できるように同盟諸国の力を結集していけねばならない。そのためにも日本は変わらねばならない。
2011年1月20日
中国軍が北朝鮮・羅先に進駐した意図
中国が北朝鮮の植民地化に一段と力を入れてきたようだ。韓国・朝鮮日報によると(1月15日付)、中国軍が北朝鮮の経済特区で日本海に面する羅先(ラソン)市に進駐したという。それによると、施設警備や中国人保護が目的と見られるとし、北朝鮮で突発事態が起きた際に中国軍が介入する可能性が指摘される中、中国軍の羅先駐屯は異例のことだとしている。また中朝国境で最近、中国軍の動きが活発で、昨年12月15日ごろ、夜半に中国製の装甲車、戦車約50台が中国の三合(吉林省)から豆満江(中国名・図們江)を超え、北朝鮮の会寧(咸鏡北道)に入ったという。三合地区の住民は当時、装甲車が走る騒音で目覚めたという。会寧と羅先特別市は直線距離で50キロの距離にある。また、同じ時期に中国側の丹東(遼寧省)から軍用四輪駆動車が北朝鮮の新義州(平安北道)に入るのを目撃したとの情報もあるという。「中国製装甲車は騒乱鎮圧用に、四駆車は脱北者取り締まり用に使われる可能性がある」(消息筋)としている。
こうした動きをどう見るべきか。金正恩後継体制で注目すべきは中国が「体制保証」とも言える異様な歓迎姿勢を見せていることである。これはポスト金正日時代に北朝鮮を中国圏に完全に取り組んでしまおうとする戦略的判断を下したと見るべきで、中国軍進駐は当然、そうした思惑からだろう。
金正日総書記は昨年5月と8月に2度にわたって訪中した。中国はそれを認め、とりわけ8月の訪中では胡錦濤主席が吉林省長春市まで出向いた。2度の訪中は北朝鮮が中国東北部(旧満州)と一体となって経済再建を図る、つまり中国経済圏に加わるという北朝鮮の意思表示だった。金正日総書記は5月の訪中では平壌-丹東-大連-天津-北京とめぐって「開放」モデル地域を視察し、8月の訪中では平壌-集安-吉林-長春-ハルピン-牡丹江-図們をめぐり、吉林省では農業技術の展示施設や化学繊維製造工場、黒龍江省では食品会社や発電設備メーカーなどを視察した。北朝鮮の思惑は2012年に飢餓前すなわち金日成主席の全盛期だった1980年代後半の経済水準まで回復させ、「強盛大国の大門」を開きたいというものである。そのために軽工業と農業部門の生産増を図り生活水準を高めていく。それを中国東北部と連動させて実現しようという狙いだ。金正日総書記は8月の訪中で「地形的に隣り合い工業の構造も似ている。協力を強化し中国の手法、経験を真剣に研究しなければならない」(新華社通信)と、東北部との連動に意欲を見せた。
では、中国の思惑は何か。中国にとって東北3省は新疆ウイグル、チベットとともに鬼門となっている。漢族の明は東北部で勢力を強めた満州族によって滅ぼされたように歴史的にも中国全体を揺るがす。それが東北部の地勢的位相である。吉林省には200万人の朝鮮族がおり、北朝鮮崩壊の場合、動乱が東北部に波及する恐れが高いという危惧もある。それに東北3省は現在、内陸部と同様の深刻な格差問題を抱え経済発展に大きな課題を残している。それを中国は「長吉図計画」で打開しようと考えている。長吉図計画は09年8月、中国が国家プロジェクトにした地域経済開発計画で、長春市、吉林市、図們市を結ぶ経済ベルト地帯を作ろうというものだ。その輸出ルートを日本海に設定すれば、大連に比べて輸送時間が半減できる。だが、中国側には良港がない。それを図們市から80キロの近さにある北朝鮮の羅先港に担わそうとしている。
すでに中国は08年に羅先港の一部の使用権を獲得した。北朝鮮側も羅先市を特別市に昇格させ、中国側の意向に応じた。昨年9月2日に長春市で開催された「北東アジア投資貿易博覧会」で北朝鮮の具本泰貿易次官は羅先港について「国際的な加工貿易、中継貿易地として発展させるため、必要な法的条件の整備を行っている」と述べている(世界日報10年9月6日付)。中国はすでに北朝鮮の鉱物資源を支配下に置きつつある。吉林省の通化鉄鋼グループなどの中国企業(事実上の国営)が北朝鮮の茂山鉱山に投資し、05年以降、開発権を握ってきた。茂山鉱山は中国国境に接する咸鏡北道にあり、鉄鉱石の埋蔵量が北東アジア最大規模の30億トンとされる。さらに中国企業は龍謄鉱山(平安北道)、徳顕鉱山(同)、龍謄鉱山(同)、熊津鉱山(咸鏡南道)などの採掘権を獲得している。北朝鮮は中国に「国際相場より相当安い『友好価格』で資源を渡している」(韓国月刊誌「新東亜」10年9月号)との優遇策をとっている。
中国は金正恩後継の「体制保証」を決めて以降、畳み掛けるように北朝鮮との関係を強化している。金正恩氏の“お披露目”となった昨年10月10日の朝鮮労働党創建65周年記念日の軍事パレードには中国共産党の治安担当、政法委員会書記の周永康政治局常務委員を送り込み、ひな壇で金親子と並んで閲兵した。新たな経済技術協力協定にも調印した。昨夏以降、北朝鮮の国家安全保衛部と中国の武装警察は中朝国境のみならず中国各地で「脱北者狩り」を共同で行っているとされ、その中国側の責任者が周永康氏なのである。また昨年10月12日には北朝鮮の金桂官第一外務次官が訪中し、13日には吉林省図們市に北朝鮮特産品の販売市場を開設、北朝鮮労働者約100人を図們市が受け入れた。14日には北朝鮮の辺仁善人民武力次官が訪中、16日には朝鮮労働党の文景徳書記(平壌市党責任書記)を団長とする親善代表団が訪中した。直轄市と道の最高責任者が参加する異例の代表団である。そして10月下旬には中朝でそろって朝鮮戦争への中国義勇軍参戦60周年記念式典を開催した。中国から元参戦兵代表団や郭伯雄中央軍事委員会副主席を団長とする軍事代表団が相次いで訪朝したのである。北京で昨年10月25日に開催された記念行事に中国の習近平副主席が軍事委副主席として初デビューし、中国の朝鮮戦争参戦に対して「偉大な抗米援朝戦争」「侵略に対抗した正しい戦争」「中朝の人民は両国の人民と軍隊が流した血で結ばれた偉大な友情を忘れたことがない」と、北朝鮮の南侵を容認するかのような「中朝血盟」発言を行った。
こうした発言を中国指導部は近年、慎んできただけに韓国は歴史的事実を歪めているとして批判したが、こうした発言が飛び出すほど中朝関係が親密になっていると見ておかねばならない。さらに昨年10月26日、北朝鮮は異例の駐中国大使の交代を行った。前任の崔秉官氏は昨年4月に着任したばかりだが、新たに池在竜朝鮮労働党国際部副部長を任命した。池氏は金正日総書記の義弟・張成沢国防副委員長に近い人物で、中国共産党との交流に精通しているとされ、中朝関係の深化を目指すのは確実である。このように金正恩氏の登場後、中朝関係は緊密さを増している。こうして中国は北朝鮮を飲み込もうとしているのである。
そして今回の中国軍の羅先進駐である。朝鮮日報によると、昨年12月から同地に中国代表部が常設され、現在中国は、羅先港の埠頭(ふとう)の改良、補修を終え、東北地区の資源を南方に輸送しているという。1月3日、中国の新華社通信と吉林省の現地メディアは、中国が昨年12月7日に吉林省琿春市の鉱山で生産された2万トンを上海などに輸送する際、羅先港を初めて使用したと伝えた。今年4月からは中国側の電力が羅先地区に供給されるという情報もあるという。
軍事的視点として見逃してはならないのは、羅先に中国軍艦が寄港する可能性である。金田秀昭・岡崎研究所理事(元海将)は日本経済新聞で次のように述べている(1月16日付)。
「中国は自国艦船利用をも念頭に、インド洋に面した各国で港湾建設など『真珠の首飾り』と呼ばれる海洋戦略を進めている。今回の羅先の拠点化もその延長線と見るべきだろう。マラッカ海峡に依存するリスクを少しでも分散するために、欧州から北極海を経てベーリング海を通り日本海へ抜けるルートを開拓しようとしている。北朝鮮で石油などの資源や物資を荷揚げし、中国へ運搬するためにも、羅先は将来、要所の一つになり得る。羅先港は伝えられる港湾の規模などからみて、単なる商業港のみならず、軍艦の寄港も想定されている可能性もある。日本海は今後、安全保障を含めた国際的な海上交通路の要衝としての意味あいが高まるだろう。日本政府は中国の動きを注意深く観察するとともに、その意図が何であるかを絶えず確認していく必要がある」
中国軍の羅先進駐は日本海に波乱を呼び起こす一歩になる可能性がある。中国は日本海の覇権も狙っているのだ。韓半島情勢だけでなく東アジア情勢全体への影響を我々は注視しなければならない。
2011年1月18日
思いを新たにした「尖閣諸島の日」
1月14日は尖閣諸島の日であった。尖閣諸島を行政区域にする沖縄県石垣市議会が昨年12月、この日を市の記念日「尖閣諸島開拓の日」とする条例を採択したからである。もともと1月14日は明治政府が明治28(1895)年に尖閣諸島の日本領編入を閣議決定した日である。条例は制定の目的を「尖閣諸島が歴史的にも日本固有の領土として、より明確に国際社会に対し意思表示し、国民世論の啓発を図るため」としている。本来、政府が音頭をとって国民世論を啓発し、国際社会に意思表示すべきだが、内向きの内閣改造にうつつを抜かした。だが、この日に中国漁船の国恥的な釈放を“指揮”した仙谷由人官房長官が更迭されたのは偶然ではあるまい。尖閣諸島を開拓した先人の霊たちが彼を首相官邸から追放したのではないか。そんな因縁を感じてしまう。
文科省は昨年12月、教科書や教材に尖閣諸島を「わが国固有の領土」であると明記させていく方針を決めている。学習指導要領や解説書の改定手続きを行う予定だ。当然のことだが、一部の親中分子らは中国を刺激するとして、教科書記述に反対している。こんな中国盲従論者の意見など聞く必要はない。粛々と自国領土であることを啓蒙し、訴えていけばよい。読売新聞は1月14日付朝刊で「尖閣諸島の日 中国に負けない対外発信力を」との社説を掲げたのは、時宜にかなっていた。読売社説は次のように述べている。
「(尖閣諸島について)『領土問題は存在しない』と繰り返すだけでは、対外アピールの面で中国に大きく差をつけられるばかりではないか。外務省のホームページは、尖閣問題の経緯や日本の立場について英語と中国語の説明文を設けている。だが、韓国と領有権を争う竹島問題の方は9か国語と充実している。尖閣問題の紹介も、多言語で対応すべきだ。『竹島の日』を2005年に制定したのも、島根県だ。領土にかかわる問題は自治体任せにせず、政府が先頭に立って内外の世論啓発に努めてもらいたい」
まさにそのとおりである。
尖閣問題について我々は昨秋、思想新聞号外を全国で配布し(別掲参照)、わが国領土であることを示し、中国の覇権主義を糾弾し、警戒を国民に呼びかけた。そのポイントは以下の6点である。尖閣諸島は①国際法の「先占の法則」で日本領になった②「実行支配」したのは日本だけである③戦後も国際社会は日本領と承認した④中国・台湾も日本領と認めていた⑤中国の領有権主張の狙いは海洋資源の強奪である⑥中・台の主張は事実無根の欺瞞である。このうち、わが国領土である経緯を以下に紹介しておこう。
19世紀には「先占の法則」によって領土を決定するというのが国際法の慣わしだった。これは無主の土地(無人島など)を国家が領有の意志をもって実効的に占有することをいう。無主の土地が地球上に存在しなくなった今日においては、こうした概念に違和感があるかもしれないが、当時は「先占の法則」が国際法で認められていた。すなわち、①先占ができるのは国家であること、②先占の対象となる場所は国際法上の無主地であること、③国家は領有の意志をもって先占しなければならないこと、④先占の実体的要件として、先占は実効的でなければならず、無人島を発見し、そこに国旗を立てるというような象徴的な領土編入行為だけでは足りないこと、⑤実効的占有がその後に続かなければならないこと。これが国際法の見解である。尖閣諸島についてこれらの要件を全て満たしたのは日本だけである。
わが国が尖閣諸島に対して領有意思を持ち始めたのは、1879年(明治12年)頃からである。同年発刊された「大日本全図」(松井忠兵衛編)には、すでに尖閣諸島が個々の島嶼の名称を付されて日本領土として明記されている。また1883年(明治16年)の内務省地理局編纂「大日本府県分轄図」にも、島嶼の名称が付されないまま同諸島が沖縄県の中に見いだされる。さらに、1885年(明治18年)、沖縄県知事は政府の許可を得て「出雲丸」を諸島に派遣し、実地調査の結果を報告させている。また同諸島の実地調査は1892年(明治25年)軍艦「海門」によっても行われた。なお1886年(明治19年)の海軍水路部水路誌、1894年(明治27年)の水路誌においても尖閣列諸島をそれぞれ、「州南諸島」、「南西諸島」の中において扱っている。
尖閣諸島を沖縄県の所轄とし、国標を建設したいとの上申は1885年(明治18年)、沖縄県知事によって政府に提出され、1890年(明治23年)、1893年(明治26年)にも漁業上の取り締まりを理由として八重山島役所所轄、沖縄県所轄ならびに標杭建設方が同県知事によって政府に上申された。1894年(明治27年)12月27日、内務大臣は右の沖縄県知事上申を外務大臣と協議し、外務大臣もこれを閣議提出方に同意。翌1895年(明治28年)1月14日、沖縄県知事の上申通り閣議も尖閣諸島を同県の所轄とし、標杭を建設すべく決定するとともに1月21日、その実施方を同県知事に指令した。さらに翌1896年(明治29年)4月、同諸島は地方行政区分上八重山郡に、また1902年(明治35年)12月、石垣島大浜問切登野城村に所属することとなり、地番も設定したのである。
日本政府は、領土編入の閣議決定後、尖閣諸島中の魚釣島、久場島、南小島および北小島4島の八重山郡所属後に国有地に指定、国有地台帳に記載した。1896年(明治29年)、すでに1884年(明治17年)からこれらの島々で漁業を営んできた福岡県の古賀辰四郎氏が魚釣島など4島に対する国有地借用願を八重山郡所属確定直後に内務大臣宛に提出した。この申請を受けた政府は尖閣諸島の開拓を奨励するため、同年8月、同氏に対して期間30年の無料貸与を許可した。国有地の借用許可をえた古賀氏は翌1897年(明治30年)以降、大規模な資本を投じて尖閣諸島の開拓に着手した(尖閣諸島開拓のため古賀氏は最初の4年間、すなわち明治30年35人、明治31年50人、明治32年29人、明治33年男13人、女子9人の労働者を諸島に派遣した)。その結果、1909年(明治42)目年には248人(99戸)の移民が諸島に定住し、開拓事業に従事していた。この功績によって政府は同年11月22日、古賀氏に藍綬褒章を授与した。
このようにして無人島であった尖閣諸島を我らの先人が開拓し、日本領土となったのである。中国は日本が日清戦争の最中に尖閣諸島を奪ったと強弁しているが、以上の経緯からまったくデタラメな言いがかりであることは明白であろう。
第1に、「先占の法則」によって領土とした。第2に、日清戦争(1894~95年)のはるか前1884年(明治17年)から日本人が漁業を営んできた。第3に、日清講和条約(下関条約=1895年4月17日)において清は台湾や澎湖諸島(台湾の西の諸島)をわが国に譲渡したが、交渉では尖閣諸島はまったく論議されず、清は自国の範疇外と認識していた。第4に、わが国が日本領土編入を閣議決定したことへの抗議は皆無である。第5に、第2次大戦の終焉に当たってのカイロ宣言(1943年=、米英中3カ国)において「満州、台湾及ビ澎湖諸島ノ如キ日本国ガ中国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還」するとしたが、ここにも尖閣諸島は書かれていない。第5に、1951年に調印されたサンフランシスコ講和条約は、台湾等の地域(第2条)と、南西諸島などアメリカ合衆国の施政下に置かれるが引き続きわが国の領土として認められる地域(第3条)とを明確に区分し、尖閣諸島は第3条にもとづいてアメリカ合衆国の施政権下に置かれ、沖縄に属する諸島として扱われた。以上から中国や台湾の主張は噴飯モノの作り話であることは誰の目にも明らかである。
なお詳細については『世界思想』2010年12月号の緊急特集「尖閣諸島の『真実』」をお読みいただきたい。
2011年1月15日
中国が空母戦闘群を稼動させる危険性
読売新聞(1月4日付)によると、旧ソ連が建造に着手し、未完成のまま中国に売却され、東北部の遼寧省大連で補修作業が続いていた中型空母「ワリャーグ」(全長304メートル、約6万トン)が今年中にも訓練用として本格運用される見通しとなっている。ワリャーグの運用が始まれば、「強大な海軍」建設を国家目標に掲げる中国が保有する初の空母だ。同空母で艦載機の発着訓練などを行い、国産空母による空母戦闘群の配備に向けた実質的な一歩を踏み出すことになる。
中国は海軍力増強で西太平洋の覇権を握ろうとしていることは言うまでもない。これに対して昨年12月に発表された民主党政権初の「防衛計画の大綱」で大丈夫だろうか。結論から言えばノーである。新防衛大綱は中国の国防費増大や東シナ海などでの活動を「懸念事項」と位置づけ、南西諸島防衛力の強化を打ち出し、自衛隊部隊を全国に均等配置する冷戦型の「基盤的防衛力構想」から機動性・即応性重視の「動的防衛力」に転換するとしている。
確かに「南西シフト」によって自衛隊が積極的に脅威に対処する姿勢は評価される。この地域は陸上自衛隊にとって空白地帯だったからだ。新たに沿岸監視部隊の配置(最西端の与那国島に約1千人規模)に加え「初動を担任する部隊の新編」が盛り込まれたのは、空白をなくす意味だけでなく、全国から部隊を機動的に展開できる基盤となり、この点は「動的防衛力」として前進である。
だが、実態は心もとない。陸上兵力は自衛官1千人削減、戦車200両削減など相変わらずの軍縮路線である。戦力を北海道から九州や沖縄に振り向けるだけの話で、動的防衛力を削減の口実に使っている。海上兵力の増強もあやしい。例えば潜水艦を16隻体制から22隻体制に増やすとしているが、これも通常16~18年で退役するのを「定年延長」で対応し、新造はこれまでどおり1年1隻にとどめているからだ。
加えて、新防衛大綱の最大の欠点は、日米同盟の深化に口をつぐんでしまったことだ。菅首相は昨年12月、社民党の福島瑞穂党首と会談し、2011年度予算編成に向け両党幹事長らによる協議を開始することで合意し、その“手土産”として武器輸出3原則見直しを先送りした。社民党と連携すれば普天間移設問題の困難さが増し、日米同盟が揺らぐのは目に見えている。集団的自衛権行使を決断しなければ日米同盟は本当の意味で機能しない。それから逃避した新防衛大綱は絵に描いた餅にすぎない。これでは「平成の元寇」を防ぐことはできない。我々は防衛政策の抜本改革を求める。
2011年1月4日
アジアの平和を脅かす中国の軍拡
中国の軍拡はどこまで続くのか…。中国の07年度国防費の伸び率は19年連続2ケタ増で、5兆円規模に達したことが全国人民代表大会(全人代)で明らかになった。これは経済成長を即、軍事力増強に結びつけ東アジアの覇権を狙っている中国共産党の思惑を浮き彫りにするものだ。今年1月に衛星破壊ミサイル実験を行なって世界を驚かせたが、宇宙のみならず核・海洋の三位一体軍拡にひた走っている。その矛先が日本に向けられていることを想起しておくべきだ。
07年3月5日から開幕した全人代に提案された07年度予算案の国防費は、前年比23%増の約3472億元(約5兆2800億円)で、初めて5兆円規模になった。2ケタの伸び率は実に19年連続、20%以上の伸びは94年以来のことである。
07年度国防予算は始めて日本の防衛費(約4兆8000億円)を上回ったことになるが、研究開発費の一部は「文教・科学費」に計上しており、実際の軍事費は公表の2~3倍に上るというのが国際社会の常識だ。
こうした2桁増の軍拡路線に入ったのは人民解放軍が中国民衆に銃口を向けた天安門事件(89年)以降で19年間に国防費は実に十数倍に膨れ上がった。
温家宝首相は全人代の政府活動報告で胡錦濤主席の指導思想とする「科学的発展観」が「国防と軍隊建設を強化するための重要な指導方針」と位置づけ「情報化に合わせて防衛戦闘能力をさらに高め、国防分野の科学技術研究や武器装備の整備の強化する」と、軍のIT(情報技術)化を強調した。
中国はかねてから「経済成長に見合った軍事力」を標榜し、昨年から始まった第11次5カ年計画では「国防能力強化」を主眼に置いた。それだけに将来の経済成長に伴い軍事費が一層膨らんでいくのは必至で、それらは宇宙・核・海洋の三位一体的な軍拡に注がれると専門家は分析している。
昨年末に公表された06年版中国国防白書は「21世紀半ばまでの情報化された軍建設の完成」を成し遂げて情報戦に勝利するとし「国防近代化三段階戦略」を掲げているという(茅原郁生・拓殖大学教授)。
特に軍が関心を抱いているのは宇宙で「宇宙を制し、情報で優位に立つ者が、主導権を握る」(党学校機関紙『学習時報』)とし「宇宙技術領域で絶対的な覇権国」(『環球時報』)を目指している。
中国の宇宙開発は有人宇宙船「神舟」を始め、すべて軍部が進めている。この構図は旧ソ連とそっくりだ。ソ連は1957年に人類初の人工衛星「スプートニク1号」、61年に人類初の有人衛星「ボストーク1号」の打ち上げに成功すると、その直後から衛星攻撃兵器の開発に乗り出した。
中国も同様に03年10月に初の有人衛星「神舟5号」の打ち上げた後、今年1月に衛星破壊実験を強行した。ソ連の場合はIT技術で米国に大きく遅れ結局、軍拡競争に敗れて崩壊したが、中国の場合は市場経済を背景にIT技術を西側諸国からそっくり移転させており、ここがソ連以上に危険なところだ。
宇宙での情報戦勝利とは言うまでもなく米軍に勝つことだ。米軍の軍事行動の大半は偵察衛星や通信衛星に依拠し、「ネットワーク・セントリック・ウォーフェア(NCW)」(ネットワーク中心戦争)を指向している。この破壊を中国は目指しているのだ。
ミサイル技術向上は即、核戦力向上を意味することも忘れてはならない。
06年版国防白書は「自衛のための核反撃戦略の堅持する」としているが、実際は非核保有国である周辺諸国を射程に収める700~2500㌔㍍の中距離弾道ミサイルを百基近く配備、非核保有国に使用しないというのは「政治的プロパガンダ」(茅原教授=世界日報3月5日付)にすぎないなのだ。
日本が核ミサイルの標的にされているのは言うまでもないことだ。
宇宙と並行して「近海での総合的な海上作戦能力を増強する」(06年版国防白書)として、急ピッチで外洋海軍化を進めている。
それを象徴するのは昨年10月、米空母「キティホーク」を中心とする米海軍打撃部隊が沖縄近海の西太平洋上で訓練中、中国海軍の宋級ディーゼル潜水艦が密かに追跡され、魚雷の射程内のわずか8キロまで接近された出来事だ。米部隊はこれを探知できず衝撃が走った。米国が中国の軍事技術の向上を改めて見せつけられた格好となった。
中国の太平洋の覇権狙いはトウ小平時代からのものだ。改革・開放路線と並行して80年代初めに「近海積極防衛戦略」を採用、85年には「海洋権益の擁護」を打ち出し、92年には領海法を制定し中国の権益として必要な海域を中国領海と見なす「戦略領海」という概念を作った。これによれば尖閣諸島も沖縄も「中国領土」とされてしまう。
中国海軍はこれまで対馬海峡から東シナ海、台湾海峡、南シナ海に至る「第一列島線」を守備範囲にしてきたが、海軍力増強でサイパン、グアムを含む東太平洋地域の「第二列島線」(これが戦略領海の意味)へと覇権拡大を目指している。東シナ海の油田開発を独自に強行するのはこうした背景からだ。
毛沢東が「銃口から政権が生まれる」として以来、権力基盤を軍事力に依拠するのは中国共産党の思想的DNAと言ってよい。だから、伝統的に対話や協商ではなく軍事力にモノを言わせようとする。それが中国共産党政権の軍拡の意味するところであり、民主主義国の防衛力整備とは根本的に違っている点なのだ。
これを見落とし、中国を米国と同列に置いて日中米の三角外交を唱える親中路線は日本のみならず東アジアを滅ぼす虚言である。天安門事件以来、綿々と続く中国の軍拡にわが国は安閑としていてはならない。
2007年3月15日

