対北朝鮮安全保障
金正日総書記死去・日韓米の緊密連携で安定化を!
北朝鮮の金正日総書記が死去した。69歳だった。12月19日午前10時に、正午からの特別放送を予告していた。その時の音楽背景が「将軍」をたたえる趣旨の曲調だったことから、特別放送とは「将軍」に関することであり、死亡ニュースではないかと予測されたていた。死亡日時は12月17日午前8時30分、現地視察のため乗った列車の中で突然の心筋梗塞に襲われという。肉体的・精神的過労のためと報道された。
北朝鮮の微妙な変化を感じていた人たち(政府関係者)もいる。今年3回の米朝協議が日程の詰めの段階に入っており、ウラン濃縮活動についての譲歩もほのめかしていた。死去2日後にすでに葬儀委員会の名簿が発表された。金日成主席の時は4日ほどかかっている。朝鮮中央テレビの「有名な」女性アナウンサーが二ヶ月ほど登場しなかった等々である。いずれはっきりすることだろう。
偵察衛星や通信傍受による情報では北朝鮮内部においてクーデターや内部抗争の兆候は確認されていない。葬儀は12月28日平壌で行われる。葬儀委員長は金正恩中央軍事委員会副委員長である。
朝鮮半島の不安定化は避けられない。朝鮮中央テレビは「今日のわが革命の陣頭には、主体革命偉業の偉大な継承者であり、わが党と軍隊と人民の卓越した領導者である金正恩同志が立っている」として、同氏が後継者であることを示唆した。昨年9月、28歳の若さで登場したのである。「後見役」は張成沢・国防委員会副委員長、党行政部長であり、その妻・金敬姫党政治局員(金正日総書記の妹)である。
北朝鮮は「先軍国家」である。党と軍、そして国民。憲法上は党が軍を指導することになっていても、現実的には最終決定権限を握っているのは軍である。軍の指示無くして国家をまとめることはできない。金正日総書記が軍の指示を得るために細かく(視察など)かつ大胆な行動(テロや軍事行動)を繰り返してきたことはよく知られている。金正恩氏にそのような実績があるとは思えない。張成沢行政部長や金敬姫政治局員は軍人ではない。
金正恩副委員長を支える基盤の弱さを考えると今後北朝鮮は軍部中心の集団指導体制へ移行することとなり、軍をコントロールすることはきわめて困難であろう。また、今後基盤を固めるために、金正恩副委員長と軍とが連携して、冒険的行動に出る可能性も否定できない。
さらに注視すべきは中国の動きである。 北京の北朝鮮大使館では半旗を掲げ、哀悼の意を表している。一方、難民の流入による経済混乱を避けるため、中国人民解放軍が北朝鮮との国境地帯に約2000人規模を増派したとの情報もある。北朝鮮から難民流入や不測の事態に備えた対応である。
北朝鮮は「中国の一級核心利益」である。新中華秩序の構築を目指す中国は北朝鮮及び大韓民国をとり込むことを目指している。当然日本も、である。中国にとって北朝鮮の混乱は多くの難問を抱え込むことになるが、しかし得がたいチャンスでもある。経済的困難が加速する北朝鮮は国際的孤立の中で頼れるのは中国のみである。一層混乱することになれば、ミサイルと核の管理のための、在朝中国人の保護のためなどの理由で介入することは必至なのである。今年に入ってからの劣勢を挽回し一挙に戦略的前進を果たすことができることになる。対応が必要である。
韓国は、金正日総書記死亡放送を受け、国家安全保障会議を開き、軍は非常警戒態勢を敷いた。投資家は不安定化を嫌い、結果としてウオン安と株式の一時的急落を招いた。日本は 安全保障会議を開き(10分程度)、野田総理は官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置し、情報収集を指示している。
今後の展開として危機管理の立場から想定すべきは有事である。今後もし、北朝鮮の混乱や崩壊が進めば、想定されるシナリオとして米韓軍の北への進行がある。大量破壊兵器の使用や拡散を防ぎ、さらに北朝鮮が中国の完全な影響下に入ることを防ぐためである。 米海兵隊が重要な役割を果たすことにある。
さらに我が国として、 邦人救出、 弾道ミサイルからの国民の防護、 難民対策、工作員の制圧、 核攻撃の恫喝にたいする備えが必要となってくる。危機管理体制が充実すればするほど紛争と戦争は抑止されるのである。10分間程度の安全保障会議でなにが話し合われたのだろうか。 危機感が薄い。現在、防衛省で、自衛隊の米軍への洋上補給が可能な範囲を、領海だけでなく 公海へ拡大する周辺事態法の改正論が出てきているという。いつまでこのような現実を見ようとしないで先延ばしにすることをつづけるのか。日米韓の防衛協力の緊密化に全力を注いでもらいたい。
2011年12月20日
北朝鮮政権の崩壊に備えよ!
東日本大震災から8ヶ月目の2011年11月11日、降りしきる雨の中、国際勝共連合遊説隊は渋谷駅前において、日本の喫緊の課題である緊急事態基本法の制定をはじめとした安全保障体制の強化を訴えた。我々日本国民は、震災の犠牲となられた同胞を弔うためにも、予測される首都圏直下型地震、東海・東南海・南海の連動地震(西日本大震災)、富士山爆発などの自然大災害、そして朝鮮半島や台湾での有事を想定した現実的で有効な安全保障体制を早急に整えねばならない。
2011年11月12日
北朝鮮のサイバー攻撃が韓国に仕掛けられている
米韓合同軍事演習を展開している韓国に対して北朝鮮のサイバー攻撃が続いている。3月4日には大統領府や外交通商省、国防省などの政府機関や韓国軍と在韓米軍、銀行など40カ所のウェブサイトが大量のデータを送り機能を停止させる「DDoS攻撃」(分散型サービス拒否)を受けたと報じられた。現在までに攻撃を受けたのは青瓦台、外交通商部、国家情報院、統一部、国会、警察庁、国防部、韓国軍合同参謀本部、在韓米軍など国家機関や軍関連機関、大手銀行や証券会社など金融機関、韓国鉄道公社、韓国水力原子力など広範囲に及んでいる。これによって一部の企業のサイトが接続不能になったが、サーバーダウンなどの被害報告はなかったという。政府機関の放送通信委員会は現在も関係機関に「サイバー危機注意警報」を発令している。
さらに北朝鮮は3月4日と6日、韓国の衛星利用測位システム(GPS)をかく乱する電波を発射し、ソウル首都圏の西・北部地域で受信障害が発生した。朝鮮日報(3月7日付)によると、開城や西海(黄海)沿岸の海州にある北朝鮮軍部隊からGPSをかく乱する電波を5-10分間隔で間欠的に発射したという。このため一部地域でGPSの受信障害が一時的に発生した。ソウル首都圏の一部地域では受信障害のため、GPSを活用した携帯電話の時計が狂ったり、通話の質が低下するといった問題が発生し、また首都圏にある軍の砲兵部隊の計測装置の一部にも一時的に障害が発生したことが分かった。昨年8月に米韓連合軍の定例合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」の際、初めて北朝鮮はGPSをかく乱する電波を発射した。今回も、韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」が2月28日から行われているため、これを狙ってGPSをかく乱する作戦に出た可能性が高いと情報当局は見ている。
同報道によると、北朝鮮は2000年代初めごろにロシアからGPSかく乱装置を輸入。最近、韓半島全域に相当する400キロ以内の範囲でGPS受信機の使用を妨害する24ワット級の装置をロシアから輸入したとしている。北朝鮮軍のGPSかく乱装置は主に米韓連合軍が保有する米国製の巡航ミサイル「トマホーク」や韓国製の巡航ミサイル、統合直接攻撃弾(JDAM)などを標的にしている。2003年のイラク戦争当時、イラク軍が出力4ワットのロシア製かく乱装置を使ってGPSで誘導される米国の統合直接攻撃弾(JDAM)に電波妨害を起こし、民間市場を誤爆させ、多くの民間人死傷者が発生した例がある。北朝鮮はこれを狙っているわけだ。
北朝鮮の対韓サイバー攻撃を踏まえ、サイバー攻撃の実態を見据えておく必要がある。サイバー攻撃とは、コンピュータ・ネットワークを通じて各国の防衛・治安をはじめ、各種のコンピュータ・システムに侵入し、データを破壊、改ざんなどして国家や社会の重要インフラを機能不全に陥れるテロ行為のことだ。サイバー攻撃が懸念されるのは自衛隊など各国の軍隊であるのはいうまでもないが、そのほか8つの重要インフラが危ない。それは①情報通信②電力システム③ガス・石油備蓄運搬④金融機関⑤運輸交通機関⑥水道供給システム⑦医療・警察・消防・救助など緊急サービス⑧政府活動の8分野で、いずれもコンピュータ管理されている。このデータが破壊、改ざんされると国民生活が破壊される。たとえば銀行や証券取引システムに侵入し、これを操作、かく乱すれば、たちどころに金融システムが崩壊し大混乱に陥る。2006年2月のライブドア事件では株売買が集中し東京市場が一時、閉鎖を余儀なくされたが、同様の破壊がサイバーテロによって行われる可能性がある。また航空管制システムのコンピュータ・システムに入り込みデータを改ざんすれば、大型民間航空機の衝突もあり得る。新幹線のコンピュータ・システムに入って速度を変更し、大事故を起こすことも考えられる。今年1月、JR東日本の新幹線が容量オーバーでダウンし、全線で運行が止まったが、こうした事態が人為的にもたらされる。ガス会社のシステムに侵入、ガス圧力を変えればバルブが故障して爆発、住宅地の炎上で都市破壊もあり得るのである。
重要インフラだけでなく、食品製造工場のコンピュータに侵入、情報を改ざんして添加物の量を変更すれば、それだけで大量殺人も可能になる。薬品会社では粉ミルクの製造過程にヒ素を加えれば意図的な「森永ヒ素事件」も起こせるのである。このようにサイバー攻撃はきわめて危険なのだ。
米国は2009年に国家サイバーセキュリティー・通信統合センターを設置しているが、米軍も本格的な対サイバー戦組織を2010年5月に設置している。米軍コンピュータ網の防衛を任務とする「サイバー司令部」で、ワシントン近郊のフォートミード陸軍基地に置いた。規模は約1000人で、とくに中国や国際テロ組織などを発信源とする不正アクセスから防衛機密の流出やサーバー攻撃を防ぐ。ゲーツ国防長官は「サイバー空間への依存度が高まる中、サイバー上の脆弱性に対処する」と述べている。2010年11月、米連邦議会の政策諮問機関「米中経済・安全保障調査委員会」は中国当局が米国などへのサイバー攻撃を組織的に行っている実態を明らかにした対中年次報告書を発表した。報告書は「中国政府や共産党、さらには民間の組織や個人がきわめて高度の方法で外国のシステムに侵入している」と指摘、昨年初めに発覚した米国大手ネット企業グーグル社に対するサイバー攻撃を紹介した。これは「オーロラ作戦」と呼ばれるサイバー攻撃で、米国の金融、化学、メディアなど計33企業のグーグル系電子メールに侵入、知的所有権を含む大量の秘密情報が中国側に盗まれた。また他人の銀行口座の情報を悪用するフィッシング・メール全体のうち3割近くが中国発で、その多くが中国政府への確実なリンクが認定されたという。こうした事態に対応するため米国は2010年秋、日本など12カ国とサイバーテロ対策訓練「サイバーストームⅢ」を実施した。訓練は米中枢のインフラ設備への大規模なサイバー攻撃を想定し、米政府の各省や州政府、民間企業のほか英国、フランス、ドイツ、日本、オーストラリアなどの同盟諸国、さらに中立国のスウェーデンとスイスも参加した。
さらに米国防総省はサイバー攻撃に対応するため2月に「国家安全保障宇宙戦略」を発表している。これに対して日本の対サイバー戦は貧弱すぎる。防衛省は2010年度予算でサイバー攻撃対処対策費として約70憶円を計上し、「サイバー企画調整官」を統括とする準備室を設置したが、本格的な「サイバー防衛隊」はまだ設置していない。サイバー戦への対応でも後手だ。新たな戦争形態への対応を急がなければ国は守れない。
2011年3月7日
北朝鮮有事 米韓合同軍事演習に日本も参加せよ
米軍と韓国軍による定例の合同軍事演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」が2月28日から始まった。今回の演習は「情勢急変への備え」を主眼としており、北朝鮮における有事すなわち金正日総書記の急死など権力の不在で北朝鮮国内が不安定化し、内戦や暴動の発生や核管理能力を喪失させるなど6種類の「急変事態」を想定している。このために米軍特殊部隊による北朝鮮侵入や核脅威の除去訓練も実施されると伝えられる。このうち「キー・リゾルブ」は3月10日まで指揮系統の確認を軸として展開、「フォール・イーグル」は野外機動演習を主に行う。米軍は在日部隊を含め約1万3千人、韓国軍は予備役を合わせて約20万人が参加し、ほぼ例年並みの規模で行う。米韓共同の「作戦計画5027」に基づいて全面戦争を想定した演習・訓練となるとしている。4月30日まで続けられる。
昨年の同時期にも米韓軍事演習が行われたが、北朝鮮はこの演習に対抗する形で3月に哨戒艦「天安」を魚雷攻撃で撃沈した。昨年11月の北朝鮮による延坪島砲撃事件を受け米韓両国は11月28日から12月1日まで黄海において米原子力空母「ジョージ・ワシントン」など最新鋭の装備を投入して行った。全面戦争に対して米韓は「作戦計画5027」で対応し、核兵器に対しては米国が「核の傘」を提供する核抑止力で臨んできたが、局地戦への対応策は不十分だった。延坪島砲撃はその隙をつかれた。そのため11月の訓練は局地戦への対応がメインだった。今回は再び「作戦計画5027」に基づく全面戦争への対応を訓練する。
これに対して北朝鮮は「ソウルが火の海になる」と恫喝している。2月28日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「北南対話を破綻させる許せない反民族的行為」と非難し、「朝鮮半島で核戦争が起きる危険が一層高まった」と拳を振りあげている。共同通信によると、対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」幹部は同日、ホームページ「わが民族同士」で演習を「われわれを狙った侵略戦争演習だ」とし、李明博政権への批判を強めているという。米韓両軍は北朝鮮の軍事挑発への警戒を強化し粛々と軍事演習を進めていくとしている。
米韓両国は昨年11月の延坪島砲撃を受け軍事同盟の強化に乗り出しているが、東アジアの安全は米韓両国だけでは機能しない。米軍が在日米軍基地をメインに据えて東アジア情勢に対応しており、米韓だけでなく日本がこれに加わり、米韓日の3国軍事同盟によって対応していかねば真の防衛にならない。それにはもとより日本側の「憲法の壁」と韓国側の「反日感情の壁」を越えねばならない。北朝鮮有事は韓半島だけの問題に終わらず東アジア全体に及ぶ。日韓両国とも「アンシャン・レジーム」(旧体制)からの脱却が急がれる。
韓半島有事すなわち第2次朝鮮戦争の戦火が北緯38度線(軍事休戦ライン)から切って落とされると考えたら大間違いだ。対日本攻撃から始まるというのが専門家の見方だ。北朝鮮が敗北を免れるためには最終的には米軍を抑えねばならず、それには在日米軍を叩くことが不可避だからである。つまり、第2次朝鮮戦争では北朝鮮の第1撃は日本から始まることを想起しておかねばならない。クリントン元米大統領の回想録(『マイライフ クリントン回想』)によれば、1990年代の核危機では「たとえ戦争のリスクを冒しても、断固として北朝鮮の核兵器開発を拒むつもりだった」と述べている。当時、米国と韓国の参謀本部は合同で『危機に備えた米韓の連合作戦』(1992年)と題して、第2次朝鮮戦争のシナリオを描いていた。
その第1幕には「日本」とのタイトルがつけられていた。戦いの最初の天王山は日本の”争奪戦”になると見ていたからだ。北朝鮮はまず、政治的に日米を分断して日本を戦線から離脱させるために在日米軍基地や主要都市にミサイル攻撃を仕掛け、さらにゲリラを日本に侵入させて基地や原発などを襲撃、左翼マスコミに「米軍がいるから日本が攻撃される」との論調を張らせ、厭世気分を高めて米軍の行動を封じ込めようとすると見ていたのだ。この日本攻撃と同時に北朝鮮の機甲部隊が38度線の軍事境界線を突破する。朝鮮人民軍は①第1段階として24時間以内にソウル市内を流れる漢江まで占領②第2段階で韓国中部の大田市まで占領③第3段階として1週間で釜山市まで占領する(1996年にミグ19戦闘機に韓国に亡命した李チョルス大尉の証言)。北朝鮮軍はこの計画のもとで軍事訓練を行っているという。言うまでもなく第2次朝鮮戦争ではこの「即戦即決戦略」を発動するというのだ。
日本が第1段階で北朝鮮の”謀略”を封じ、後方基地として持ちこたえ、周辺事態方を発動して米軍支援をスムーズに行えば、米韓両軍の反攻が開始できる。例えば米軍は沖縄に展開している海兵隊、横須賀と佐世保を母港とする第7艦隊、さらには青森・三沢と沖縄・嘉手納の空軍が韓国支援に出動する。そしてハワイから軽歩兵師団、米西海岸ワシントン州から第1軍団などが東京・横田基地などを経て韓半島に出撃する。最終的に米軍は陸軍50万、空軍1600機、艦隊200隻(うち空母5隻)を集結させて北朝鮮軍を押し返し、逆に北朝鮮全域を制圧して韓国主導の南北統一が達成される。『連合作戦』はそう描いているのである。だが、犠牲者の数はおびただしい。ソウルを中心に3日間で100万人規模の死傷者が出るとシュミレーションしている。ただし、日本での犠牲者は入っていない。もちろん、これは90年代のシナリオで、それ以降、米軍の軍事革命は著しい。しかし逆に北朝鮮は核カードを持つに至っている。米CIAによると北朝鮮は炭疸菌やコレラ菌、天然痘などの病原体を使った生物兵器の実戦化を図っているという。こうしたシナリオを見ても韓半島有事が日本にとって対岸の火事でないことは明白だろう。
そもそも韓半島で衝突(全面戦争でなくとも)が勃発した際、在韓米軍司令官(在韓・国連軍司令官でもある)が戦時作戦統制権を持っていることを忘れてはならない。平時における作戦指揮権は1994年に韓国軍に移管されているが、戦時は依然として在韓米軍司令官が握っているのだ。わが国は国連との間で、朝鮮動乱が休戦した直後の1954年、米英仏国など11カ国と「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を結んでいる(現在8カ国)。協定では現在、東京都の横田基地に国連軍後方司令部(在日米陸軍後方司令部)を設置し、ここに協定国から23人の連絡将校団が常駐している。さらにキャンプ座間や横須賀・佐世保の在日海軍基地、嘉手納・普天間・ホワイトビーチの沖縄在日米軍基地が国連軍基地として使用されている。だから韓半島有事で米軍(国連軍)が動けば、同時に在日米軍基地も動く仕組みなのである。当然、わが国は周辺事態法に基づいて対応するが、その場合、後方地域支援や後方地域捜索救助活動、船舶検査活動にとどまることになっている。これでは東アジアの安全を守れない。
こうした現実を直視し、防衛態勢を抜本的に改革し、米韓同盟に日本も加わって米韓日3国軍事同盟を視野に入れて東アジアの安全を守るべきである。
2011年3月3日
金正日69歳 危険水域に入った韓半島情勢
北朝鮮の金正日総書記は2月16日、69歳の誕生日を迎えた。言うまでもなく来年2012年は古希(70歳)であり、同時に父・金日成主席の生誕100年、3男・金正恩副委員長の30歳の年でもある。それゆえに2012年は「強盛大国の大門を開く」とした記念的な年と位置づけている。つまり今日からの1年は北朝鮮にとってはまさに正念場の年となるわけである。当然、さまざまな攻勢を仕掛けてくるであろう。金日成主席の悲願は言うまでもなく、「南北統一」(赤化統一)であり、金正日総書記はそれを自らの目の黒いうちに実現しようと動くだろう。さらには金正恩後継体制を強固にしようとする。健康問題を抱える金正日総書記にとっては時間がないのである。昨年9月には共産国に例の見ない3代世襲を正当化するために党代表者会・党中央委員会総会を開き、金正恩氏を党軍事委副委員長に就け、後継体制作りをスタートさせた。だが、前途は多難である。経済破綻状況が続いており、とうてい「強盛大国」とは言いがたい状況にある。そこで対話攻勢を仕掛けて経済支援の糸口を見いだそうとする一方、韓国や米国に隙があれば赤化統一の野望を遂げようとする。また後継体制を磐石にするため核・ミサイル開発にひた走り、3度目の核実験もあり得る。昨年3月に韓国艦艇「天安」撃沈事件、そして11月に延坪島砲撃事件を引き起こしたが、こうした軍事挑発を繰り返す可能性がある。朝鮮半島情勢は危険水域に入ったと見ておくべきだ。
いま金正日総書記の最大の関心事は後継体制を磐石にすることだろう。すでに世襲正当化作業として昨年9月に党規約を1980年の党大会以来、30年ぶりに改正した。新たな党規約は序文で、初代金日成主席の「主体思想」創始を評価し、それを「発展させた」として2代目の金総書記の「軍事優先政治」(先軍政治)を称えた。その上で朝鮮労働党を「金正日同志を中心に組織思想的に強固に結合された労働階級と勤労人民大衆の核心部隊であり、前衛部隊」と規定し、党が「先軍政治を社会主義の基本政治方式として確立し、革命と建設を指導する」とした。金日成主席は神格化され誕生日は「太陽節」になっている。それを継承・発展させた金正日総書記は偉大な指導者であり、その「金日成の血統」の中に朝鮮労働党がある。そういう論理立てで金正恩副委員長を登場させたのである。だから、初めて公表した金正恩副委員長の写真は革命の聖地であり、金日成主席の遺体が安置されている錦繍山記念宮殿の前での金正日総書記との集合写真であった。
これまで金正日総書記は国防委員会を軸にして軍支配を行い、党は影が薄かったが、金正恩後継体制のために党が軍を指導するという金日成時代の路線に戻し、それを金正恩副委員長の権力基盤にしようとしている。そのために昨年9月に党代表者会・党中央委総会を開いたのだった。さらに3代世襲の正当化作業として、権力ポストを血縁者・側近で固めた。従来、長老たちが占め実質的に機能してこなかった党政治局を復活させ、そこに血縁・側近を配する党政治局・党中央軍事委員会人事を断行し、党指導体制を一新した。実妹・金慶喜党軽工業部長(64)を「大将」にしたうえで党中枢の政治局員に就け、その夫・張成沢氏(64=国防委副委員長、党行政部長)を党政治局員候補・党中央軍事委員に据えた。金慶喜・張成沢夫妻を金正恩氏の後見人としたのである。
こうして昨年9月の朝鮮労働党代表者会・党中央委員会総会で金正恩「大将」「党軍事副委員長」を登場させ、10月10日の朝鮮労働党創建65周年の記念軍事パレードでお披露目し、それ以降、「神話」作りにいそしんできた。だが、29歳(今年1月)の金正恩副委員長には軍歴や実績が何ひとつない。そこから懸念されるのは、3代世襲を正当化する実績作りへ軍事冒険主義に走る危険性である。金正日総書記の場合、1973年に金日成主席の後継者として登場した後、75年に「3大革命赤旗獲得運動」や「100日戦闘」を始めて国内の基盤固めにいそしみ、さらに後継の正当性を証明しようと強硬姿勢を露わにした。朴正煕大統領暗殺未遂事件(74年8月)やラングーン爆弾テロ事件(83年10月)、大韓航空機爆破テロ事件(87年11月)など過激な実績作りを行った。
こうした後継体制時代の金正日総書記の歩んだ道を金正恩副委員長がなぞるとすれば、まず国内では基盤作りに「100日戦闘」といった忠誠運動を展開するだろう。最近、公開処刑が増えていると伝えられるが、それは忠誠運動の一環と見てまちがいない。反対派とおぼしき党幹部の粛清も予想される。同時にさまざまな軍事的挑発を試みるだろう。「大将」としての実績作りに延坪島攻撃といった過激な行動を繰り返す恐れが強い。
さらに「強盛大国の大門を開く」ために「体制保証」と「経済援助」を求めて米朝直接交渉を狙ってくるだろう。北朝鮮は湾岸戦争・イラク戦争のような米軍の攻撃による政権(金王朝)崩壊を最も恐れてきた。南北間には韓国動乱の休戦協定があるのみで未だ戦時下にあるからだ。そこで休戦協定に代わる新たな平和協定(条約)を結び、米国が北朝鮮の体制を保証する。それが金正日総書記の思惑である。すでに2007年10月の南北首脳会談で、休戦協定を平和協定に転換し恒久的な終戦を宣言するため3カ国ないし4カ国(南北米中)の首脳会談を朝鮮半島地域で開催する考えを示している。平和協定をテコに米朝・日朝国交へと繋げれば、莫大な経済援助(日朝国交による賠償金も)が手に入り「強盛大国」に道が開ける。そういう算段で米朝交渉を求めてくるだろう。むろんこれは北朝鮮の思い違いである。北朝鮮は1992年の南北非核化宣言を破り、核拡散防止条約(NPT)を脱退して核開発を進め、06年には核実験を実施した。07年2月の6カ国協議で核放棄共同文書が採択され、非核化ロードマップが作成されたが、それもことごとく破り09年には2度目の核実験を強行し国際社会から制裁を受けてきた。新たな平和協定を結ぶにしても、まず核開発を止めよというのが国際社会の一致した見解である。
だが、北朝鮮は米国を直接交渉に引きずり出そうと、昨年9月の党代表者会議以降、強硬路線を見せ付けてきた。11月に訪朝した米国のプリチャード元朝鮮半島和平担当特使に「寧辺に100メガ・ワット級の実験用軽水炉を建設中」と自ら証し、さらに寧辺を訪問した米国の核専門家ヘッカー元ロスアラモス国立研究所長(スタンフォード大教授)を新設のウラン濃縮施設に案内し、「2000基の遠心分離器が既に稼働中」と説明、従来のプルトニウム型に加え、ウラン型核兵器の開発を誇示した。わざわざ情報を公開するのは米国を揺さぶり直接対話に引きずり出そうとしているからだ。こうした動きを受け昨年11月、ボズワース米政府特別代表(北朝鮮担当)が韓日両国を訪問、6か国協議再開の見通しについて「(ウラン濃縮)活動が進行中で、北朝鮮が再度の核実験やミサイル実験を行う可能性がある現時点では交渉再開は考えない」と発言、さらに中国側と会談するため北京に入った、まさにその日すなわち11月23日に北朝鮮は延坪島を砲撃したのである。
攻撃と対話の弁証法。これが北朝鮮の戦術である。対話を促すために攻撃し、攻撃の機会をつくるために対話する。この戦術を駆使して2012年を目指す。だが、2012年に「強盛大国の開門」は困難である。そうしたことも意識してか、北朝鮮は1月15日に約20年ぶりとなる長期経済開発計画を発表した。それは「2020年に先進国の水準に達する確固とした展望が開けた」(朝鮮通信)という「国家経済開発10カ年戦略計画」である。インフラ整備や農業、電力、地域開発などをあげているが、その中身は一切明らかにしていない。おそらく2012年に「強盛大国」と実感させる実績をあげられなかったことを想定して、その延長路程として計画をぶち上げたのだろう。
いずれにしても2012年に向けて韓半島情勢は危険水域に入ると考えておかねばならない。我々としては日韓米の同盟強化を最重要視すべきである。
2011年2月16日
北朝鮮・新年共同社説は欺瞞的な平和攻勢
韓国・聯合ニュースによると、北朝鮮は1月1日の新年共同社説=朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(党報)・人民武力部機関紙「朝鮮人民軍」(軍報)・金日成社会主義青年同盟機関紙「青年前衛」(青年報)=で、南北間の対決状態を1日も早く解消せねばならないとし、「南朝鮮(韓国)は反統一的な同族対決政策を撤回し、南北共同宣言(2000年6月15日合意)、南北首脳宣言(07年10月4日合意)を尊重し履行する道に進むべきだ。この地に戦争の火の手が上がれば核の惨禍のほかにもたらすものはない」と、平和攻勢をかけてきた。 これは軍事冒険主義の「瀬戸際外交」の後に平和攻勢をかけ実利を獲得していく北朝鮮の常套手段というほかない。
共同社説は、「東北(北東)アジア平和と全朝鮮半島の非核化実現というわれわれの立場と意思に変わりはない。今後も自主、平和、親善の理念の下、われわれに友好的な国と親善協調関係を発展させ、世界の自主化実現に向け積極的に努力する」と、非核化に言及しているが、口先だけの欺瞞的話術である。事実、共同社説は軍事について「 先軍革命路線に基づき人民軍隊の戦闘的威力をより強化せねばならない。全軍が戦闘訓練を実戦さながらに展開する必要がある。人民軍隊は主体的な戦争観点と敵滅亡の闘志で、高度の激突状態を堅持すべきだ」とし、 「人民軍隊はわれわれの絶対的尊厳と社会主義制度、われわれの陸海空に少しでも手を出す者を今後も許さない」と、延坪島砲撃を正当化し、再攻撃を匂わせている。そればかりか 「国防工業は先軍朝鮮の強大性の源泉であり、人民生活の向上を支える。国防工業部門は今後も最先端突破戦の先駆者、経済全般を率いる機関車として使命を遂行せねばならない」と先軍・軍拡路線を誇示し、核開発の継続を示唆している。
昨年12月30日に韓国国防省が公表した「2010年国防白書」によると、北朝鮮の特殊部隊が2年前より2万人増えて20万人を超え、韓国に侵入し暗殺やテロを狙う「深刻な脅威」になってきたとしている。総兵力は08年と同じ119万人。北朝鮮の特殊部隊がトンネルや軽量の特殊航空機を使って韓国側に侵入、重要拠点攻撃や要人暗殺などかく乱作戦を狙う恐れが高まってきた。保有戦車は08年比200両増の4100両。延坪島砲撃に使った170ミリ自走砲や240ミリ放射砲の射程がソウル首都圏を集中攻撃できる60キロ内に配備、長射程野砲300門が首都圏を狙っている。韓半島情勢の危機が一段と高まってきたといえる。そういう中で北朝鮮が新年共同社説で南北融和を説いても何ら説得力がない。
同社説は金正恩後継体制については直接言及していないが、「党の領導的役割をあらゆる手段で高める。朝鮮労働党代表者会の開催後初めて迎える年であり、政治、軍事、経済をはじめとする全分野で党の領導体系を徹底して確立せねばならない」としており、後継体制確立へ動きを強めるのは必至だ。このことは軍事冒険主義の再発を意味している。
前原外相は2日、韓国・毎日経済新聞とのインタビューで「北朝鮮の武力挑発は朝鮮半島はもちろん、東アジアの安定と平和を脅かす行為」と指摘し、「韓国と安全保障分野でも同盟関係を結ぶことを希望する」と述べた(読売新聞1月3日付)。この見解は正しい。日韓米軍事同盟を強化しなければならない。
2011年1月3日
北朝鮮三代世襲の行方 〜金正恩の北朝鮮〜
まさに「若大将」の登場である。朝鮮労働党代表者会が開かれる前日の今年9月27日、金正日総書記は3男・金正恩氏と実妹・金慶喜党軽工業部長(64)ら6人に「大将」の軍称号賦与の命令を下した。朝鮮人民軍の最高位は大元帥(故・金日成主席のみ)で、大将は元帥(金正日金書記と李乙雪氏の2人)、次帥に次ぐ第4位だ。今回の人事で次師が8人、大将が26人と膨れ上がった。
軍歴がまったくと言ってない20歳代の若者と60歳代の女性が血縁だけを根拠にして、いきなり大将になる。そこに金正恩後継体制の異様さが表れている。
9月28日に開催された党代表者会・党中央委員会総会は、共産国に例の見ない3代世襲を正当化するために開かれた。党代表者会の開催は、1966年以来44年ぶり、党中央委の選挙は30年ぶりのことである
世襲正当化作業の第1は、党親約を1980年の党大会以来、30年ぶりに改正したことだ。新たな党規約は序文で、初代金日成主席の「主体思想」創始を評価し、それを「発展させた」として2代目の金総書記の「軍事優先政治」(先軍政治)を称える。
その上で朝鮮労働党を「金正日同志を中心に組織思想的に強固に結合された労働階級と勤労人民大衆の核心部隊であり、前衛部隊」と規定し、党が「先軍政治を社会主義の基本政治方式として確立し、革命と建設を指導する」とした(読売新聞10月9日付)。
すでに金日成主席は神格化され誕生日は「太陽節」になっている。それを継承・発展させた金正日総書記は偉大な指導者であり、その「金日成の血統」の中に朝鮮労働党がある。そういう論理立てで金正恩副委員長を登場させた。だから、初めて公表した金正恩副委員長の写真は革命の聖地であり、金日成主席の遺体が安置されている錦繍山記念宮殿の前での金正日総書記との集合写真だったのである。
これまで金正日総書記は国防委員会を軸にして軍支配を行い、党は影が薄かった。ところが今回、党が軍を指導するという金日成時代の路線に戻し、それを金正恩氏の権力基盤にしようとする方針を打ち出した。そのために党代表者会・党中央委総会を開いた。
3代世襲の正当化作業の第2は、権力ポストを血縁者・側近で固めたことだ。従来、長老たちが占め実質的に機能してこなかった党政治局を復活させ、そこに血縁・側近を配する党政治局・党中央軍事委員会人事を断行し、党指導体制を一新した。
では、金正恩後継体制は何を目指すのか。党規約で「朝鮮労働党は先軍政治を社会主義の基本政治方式として確立し、革命と建設を指導する」と強調した以上、金正恩氏は軍を使って世襲正当化の実績を上げようとするのは必至である。
金正日総書記の場合、1973年に党中央委員会書記に選出されたが、表舞台に登場したのは7年後の80年の第6回党大会、38歳の時だった。さらに権限委譲は1992年、国防委員会委員長に選出されることによって実現した。その20年の間に韓国や日本にテロ工作、拉致など過激な実績作りを行った。
例えば、在日韓国人を使った朴正熙大統領暗殺未遂事件(同夫人死亡=74年8月)やラングーン爆弾テロ事件(83年10月)、大韓航空機爆破テロ事件(87年11月)などがそれである。また日本人拉致事件も引き起こした張本人も金正日総書記だ。
金正日総書記の実績作りが今日の先軍政治につながっている。とすれば、金正恩副委員長がこれを踏襲するのは日に見えていよう。しかも、わずか27歳である。金正日総書記が08年8月に脳梗塞で倒れ、健康問題を抱えているから、3男・金正恩氏を早く登場させざるを得なかったからだ。
実績作りを焦っているのは、10月10日の朝鮮労働党創建65周年の記念軍事パレードにおいて金正日総書記とともにひな壇に並んで閲兵し、後継者であることを内外にアピールしたことから知れる。
だが、金正恩氏は大将、党軍事委副委員長になったといっても、何ら軍歴も実績もない。それだけに金正恩氏やその側近たちは、3代世襲を正当化する実績作りを急ぎたくなる。そこから軍事冒険主義の危険性が高まる。ここに金正恩後継体制の危うさが秘められている。
北朝鮮は金日成主席の生誕100年となる2012年に「強盛大国の大門を開く」として先軍政治を強めている。党創建65周年の記念軍事パレードで中距離弾道ミサイル「ムスダン」と見られる新型ミサイルなどを見せびらかしたように、核・ミサイル開発や核実験も予想される。
2012年はすなわち金日成主席の生誕100周年、金正日総書記70歳、金正恩副委員長30歳の年でもある。それを目指し3代世襲を正当化し金正恩後継体制を構築する。20歳代で「大将」となった金正恩副委員長は「先軍政治」を継承しようと父・金正日総書記と同様の過激な行動に打って出てくれば、北東アジアの危機が深化するのは避けられない。
中国は北朝鮮の植民地化目指す
金正恩後継体制で注目すべきは中国が「体制保証」とも言える異様な歓迎姿勢を見せていることだ。なぜだろうか。ポスト金正日時代に北朝鮮を中国圏に完全に取り組んでしまうという戦略的判断を下したからにほかならない。
金正日総書記は今年5月と8月に2度にわたって訪中した。中国はそれを認め、とりわけ8月の訪中では胡錦濤主席が吉林省長春市まで出向いた。見逃してはならないのは、この2度の訪中は北朝鮮が中国東北部(旧満州)と一体となって経済再建を図る、つまり中国経済圏に加わるという意思表示だったことだ。
5月の訪中では平壌-丹東-大連-大津-北京とめぐって「開放」モデル地域を視察。8月の訪中では平壌-集安-吉林-長春-ハルビン・-牡丹江-図們をめぐり、吉林省では農業技術の展示施設や化学繊維製造工場、黒龍江省では食品会社や発電設備メーカーなどを視察した。
北朝鮮は2012年に飢餓前すなわち金日成主席の全盛期だった1980年代後半の経済水準まで回復させ、「強盛大国の大門」を開きたいのだ。そのために軽工業と農業部門の生産増を図り生活水準を高めていく。それを中国東北部と連動させて実現しようという思惑なのだ。
金正日総書記は8月の訪中で「地形的に隣り合い工業の構造も似ている。協力を強化し中国の手法、経験を真剣に研究しなければならない」(新華社通信)と、東北部との連動に意欲を見せた。
中国政府にとっても異存はない。東北3省は新疆ウイグル、チベットとともに鬼門となっているからだ。漢族の明は東北部で勢力を強めた満州族によって滅ぼされたように歴史的にも中国全体を揺るがす。それが東北部の地勢的位相である。吉林省には200万人もの朝鮮族がおり、北朝鮮崩壊の場合、動乱が東北部に波及する恐れが高いという危慎もある。それに東北3省は現在、内陸部と同様の深刻な格差問題を抱え経済発展に大きな課題を残している。
それを中国は「長吉図計画」で打開しようと考えている。長吉図計画は昨年8月、中国が国家プロジェクトにした地域経済開発計画で、長春市、古林市、図們市を結ぶ経済ベルト地帯を作ろうというものだ。その輸出ルートを日本海に設定すれば、大連に比べて輸送時問が半減できる。だが、中国側には良港がない。それを図們市から80キロの近さにある北朝鮮の羅先港に担わそうとしている。
すでに中国は80年に羅先港の一部の使用権を獲得した。北朝鮮側も羅先市を特別市に昇格させ、中国側の意向に応じようとしている。9月2日に長春市で開催された「北東アジア投資貿易博覧会」で北朝鮮の具本泰貿易次官は羅先港について「国際的な加工貿易、中継貿易地として発展させるため、必要な法的条件の整備を行っている」と述べている(世界日報9月6日付)。
中国はすでに北朝鮮の鉱物資源を支配下に置きつつある。吉林省の通化鉄鋼グループなどの中国企業(事実上の国営)が北朝鮮の茂山鉱山に投資し、05年以降、開発権を握ってきた。茂山鉱山は中国国境に接する咸鏡北道にあり、鉄鉱石の埋蔵量が北東アジア最大規模の30億トンとされる。
さらに中国企業は龍謄鉱山(平安北道)、徳顕鉱山(同)、龍謄鉱山(同)、熊津鉱山(咸鏡南道)などの採掘権を獲得している。北朝鮮は中国に「国際相場より相当安い『友好価格』で資源を渡している」(韓国月刊誌「新東亜」10年9月号)との優遇策をとる。
中国は金正恩後継の「体制保証」を決めて以降、畳み掛けるように北朝鮮との関係を強化している。金正恩氏の〝お披露目″となった10月10日の朝鮮労働党創建65周年記念日の軍事パレードには中国共産党の治安担当、政法委員会書記の周永康政治局常務委員を送り込み、ひな壇で金親子と並んで閲兵。新たな経済技術協力協定にも調印した。今夏以降、北朝鮮の国家安全保衛部と中国の武装警察は中国国境のみならず中国各地で「脱北者狩り」を共同で行っているとされ、その中国側の責任者が周永康氏なのだ。
また10月12日には北朝鮮の金桂官第一外務次官が訪中、13日には吉林省図們市に北朝鮮特産品の販売市場を開設し、北朝鮮労働者約100人を図們市が受け入れた。14日には北朝鮮の辺仁善人民武力次官が訪中、16日には朝鮮労働党の文景徳書記(平壌市党責任書記)を団長とする親善代表団が訪中した。直轄市と道の最高責任者が参加する異例の代表団だ。
10月下旬には中朝でそろって朝鮮戦争への中国義勇軍参戦60周年記念式典を開催。中国から元参戦兵代表団や郭伯雄中央軍事委員会副主席を団長とする軍事代表団が相次いで訪朝した。
北京で10月25日に開催された記念行事に中国の習近平副主席が軍事委副主席として初デビューし、中国の朝鮮戦争参戦に対して「偉大な抗米援朝戦争」「侵略に対抗した正しい戦争」「中朝の人民は両国の人民と軍隊が流した血で結ばれた偉大な友情を忘れたことがない」と、北朝鮮の南侵を容認するかのような「中朝血盟」発言を行った。
こうした発言を中国指導部は近年、慎んできただけに韓国は歴史的事実を歪めているとして批判したが、こうした発言が飛び出すほど中朝関係が親密になっているのだ。
さらに10月26日、北朝鮮は異例の駐中国大使の交代を行った。前任の山崔秉官氏は4月に着任したばかりだが、新たに池在竜朝鮮労働党国際部副部長を任命した。池氏は金正日総書記の義弟・張成沢国防副委員長に近い人物で、中国共産党との交流に精通しているとされ、中朝関係の深化を目指す。
このように金正恩氏の登場後、中朝関係は緊密さを増している。北朝鮮は中国に飲み込まれようとしているのだ。

