抄録「李登輝 元台湾総統 より 日本人へ贈る言葉」

世界思想11月号で台湾元総統 李登輝氏の講演文「日台米連携で覇権中国に対処しましょう」(沖縄にて)を掲載しました。ここでは、李登輝氏が著書で「日本人に愛を込めて発信したメッセージ」を抄録としてご紹介します。

「武士道」との運命的な出会い

 私が京都帝国大学の学生時代に、新渡戸稲造先生の農業経済などのあらゆる著書を読み耽り、その全ての業績に深い関心を示すようになりました。その過程で巡り逢ったのが、『武士道』です。私が生まれ育った台湾という小さな島が、なぜ今日のような世界でも有数の豊かで幸せな国として急成長することができたのか?

 この根本的な疑問に明快極まりない答えを与えてくれたのも、新渡戸先生が世界に向かって提示して見せてくれた『武士道』という本以外の何ものでもありません。新渡戸先生を、台湾が社会的基盤創建の曙時代に、我々のパイオニア的指導者として迎え入れることができたのは、実に幸運で誇らしいことでした。

 戦後、台湾に戻ってからも、新渡戸先生をはじめとする日本の大先達たちが、いかに真剣かつ真摯に台湾の経済的自立のために献身的な努力を献げて下さっていたかが痛いほどよく分かり、本当に日本文化の下で基本的な教育や教養を受けてきて良かったなぁ、としみじみ思い返したものです。

 特に、新渡戸先生が『武士道』の中で強く強調している、「信」や「義」や「仁」といった徳目は、その後私が台湾の総統となって「新・台湾人」を率いて新しい国造りを推し進めて行く上での、またとない大きな心の支えとなりました。

 

媚中払拭した安倍外交

 日本政府が2013年3月11に主催した東日本大震災2周年追悼式には、各国の外交使節に混じって献花する台湾代表の姿がありました。

 前年の追悼式では、世界最多の200億円超という多額の義捐金送った台湾を、民主党政権は中国の批判を恐れて指名献花から外しました。この非礼に対して、日本国内でも多くの批判があったと聞いています。安倍総理はそれを正したのです。

 また安倍総理は、フェイスブック上で台湾の支援に言及し、「大切な日本の友人」と表現。多くの台湾人はこれに感動しました。安倍総理は、歴代の日本の政治指導者が見せた媚中外交っ拭し、激変する国際社会に適切に対応しています。

 安倍総理は対中国という課題に対して、二国対峙型ではなく日米同盟はもとより、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インドやオーストラリアとの連携強化という多面的な視点で捉えています。そして、これらの国々は、日本の集団的自衛権行使を認めています。民主主義国の連携強化を「日本の軍国主義化」などと筋違いな反対をしているのは中国と韓国、それに日本の一部マスコミと知識人だけと言っていいでしょう。

 

憲法改正はアジアの希望

 米国の一極集中の時代が終わり、西太平洋の覇権争奪の時代が始まっています。マラッカ海峡から対馬海峡に至るシーレーンの主導権をどこが握るのか。

 そのシーレーンの中心に台湾がある。米国はそれを視野に入れて軍事戦略を描いています。こうした情勢の中で、日米同盟の今後のあり方、そして良好な日台関係が極めて重要であることは言うまでもありません。

 日本は「消極的な平和主義」の憲法を脱し、新たな軍備を構築する必要があります。それを期待している国々と連携しつつ、積極的な歩みを進めなければなりません。アメリカの衰退、中国の台頭、北東アジア情勢の急変を見ると、日本の真の自立が急務とされるのは明らかです。日本が真に自立した正常な国家となるためには、国家の基本たる憲法を改正していくことが、今日の日本にとって最大の課題といえましょう。

 まさにこれこそが安倍首相が目標とする戦後レジームを脱却し、新しいレジームを構築するための正しい第一歩です。日本が再生し、自立した国家として歩むことは同時に、アジア地域の平和と安定に繋がります。湾をはじめとする良識あるアジア諸国は日本の再生を歓迎し、期待している。日本が真に自立した国家として歩むことを私は心より期待しています。

 

世界思想11月号でご紹介した著書「李登輝より日本へ贈る言葉」「武士道解題」「熱誠憂国」より抄録(文責編集部/特集全文は本紙にて)

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