東京地裁の「教団解散命令」を指弾する

 東京地裁が本連合の友好団体である世界平和統一家庭連合(旧統一教会=以下、教団)に対して解散を命じる決定を下したのは、「信教の自由」を破壊する暴挙である。恐るべき宗教弾圧が日本でまかり通ろうとしている。これを自由と民主主義の危機と言わずに何と言えようか。日本崩壊の序章と断じても過言ではない。我々は地裁の「解散命令」を厳しく指弾する。

法治国家が泣く恥ずべき弾圧だ

 わが国は「法治国家」であるが、解散命令はその「法治」を破壊した。戦後、宗教法人への解散命令請求が認められたのは、刑事事件で教団幹部が有罪となったオウム真理教と明覚寺の2件のみである。政府は従来、法令違反の要件を「刑法」に限ってきた。これは妥当な判断だった。

 刑法は「国対人」の関係を規律するもので、その基本的原則は罪刑法定主義である。あらかじめどのようなものが犯罪になるのか、どのような犯罪を起こせば、どういった刑罰が適用されるのかといったことが法律上に明文化されている。その上、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(憲法32条)のであり、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う…憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない」(82条)と定めているのである。

 これこそ民主主義の基礎である。その厳格な刑事事件で教団幹部が有罪となった事件のみを解散命令の要件にしてきたのは「信教の自由」を重んじる立場から当然だ。だから政府は元来、「(要件には)民法の不法行為は含まない」としてきた。民法は「民対民」のものであり、国家権力が直接介入するものではないからだ。それを2022年10月19日、岸田文雄首相(当時)は閣議決定すら経ずに突然、「民法も含まれる」と国会答弁し要件を変えた。政治的判断での、すなわち恣意的に豹変したのである。

 その「政治命令」で文科相の諮問機関である宗教法人審議会が非公開の審議で解散請求を決め、東京地裁に解散命令を請求。地裁も同様に非公開での審理で解散命令を下した(教団は即時抗告)。これは「暗黒裁判」そのものだ。

 それゆえに心ある識者は声を挙げている。杉原誠四郎・元武蔵野女子大学教授は「非公開の行政行為としての解散命令」を問題視し、「文科省の提出した被害者と名乗る人の陳述書は内容が杜撰であり、証拠能力の点からも疑問があり、公開の裁判で審理すべきだ」と指摘している(世界日報3月26日付)。

 外務省元主任分析官で作家の佐藤優氏は、「民事」での解散命令に「背筋が寒くなる。いつキリスト教に向かってきてもおかしくない」と述べ、過去、解散させられた日本ホーリネス教会や大本教などを例に挙げ、「国家の宗教弾圧の姿勢は怖いものがある」と警鐘を鳴らしている(3月26日、参議院議員会館での勉強会で)。

 また麗澤大学特任教授の西岡力氏は「今回の決定で、わが国の信教の自由は大きく制限された」とし、「数十年間、この国で宗教法人として認められて宗教活動を行ってきた団体が、政府の突然の法人解散要件の変更とその遡及的適用で解散請求がなされ、地方裁判所が請求を受け入れる事態に、恐怖を感じざるを得ない」と述べている(3月31日、ブログで=以上、世界日報4月4日付)。

 安倍晋三元首相銃撃事件の直後、テロ犯・山上徹也容疑者の犯行動機が教団への恨みなどと左翼メディアが騒ぎ立てると、中国は「(教団を)いち早く邪教(カルト)と認定し非合法化してきた」と自慢し、共産党系の環境時報は「中国のカルト一掃の正しさを示した」とし、「(山上容疑者が)もし中国で暮らしていれば、政府は彼が正義を追求するのを助け、この宗教団体を撲滅しただろう」と自らの宗教弾圧を正当化してのけた(共同通信=毎日2022年7月30日付ネット版)。今回の解散命令で日本は中国の「血の弾圧」と同列に並ぶ恥ずべき事態に陥った。

東京地裁の「解散命令」に対し即時抗告した世界平和統一家庭連合の田中富広会長

マルクス以来の宗教迫害の宿痾

 共産主義の祖、マルクスは「すべての神々を憎悪する」と述べ、「宗教はアヘン」と断じた。「マルクス主義は、1840年代の初めにその創始者によって採られた立場から、永久に後退しなかった。それはつねに、宗教論争をその本質的な仕事の一つとみなしてきた」(英政治学者E・H・カー『カール・マルクス』未来社)のである。

 レーニンは「宗教への妥協なき闘争」を共産主義革命の主題に据え(『唯物論と経験批判論』1908年)、世界革命を遂行するために組織したコミンテルン(国際共産党=事実上のソ連共産党)に同様の使命を担わせた。その日本支部として創設されたのが日本共産党だ。

 その操り人形が全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士たちである。本連合が1980年代に主導したスパイ防止法制定運動を阻止するために策動したのもこの連中だ。中国に御意とばかりに「カルト」のレッテルを貼って教団潰しを煽ったのは「マルクス主義の思考にくるまる」(元朝日記者、長谷川煕氏)朝日新聞を筆頭とする左翼メディアである。

 共産勢力の策動に踊らされた政府・自民党は万死に値する。東京高裁は邪念を廃して「信教の自由」に真摯に向き合ってもらいたい。

【思想新聞 4月15日号】韓国・憲法裁、尹氏罷免を宣言 非常戒厳は憲法違反と断罪/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/朝鮮半島コンフィデンシャル

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