「平和を守る」アクセルを全力で踏め

 高市早苗新内閣がスタートを切った。高市首相は初の所信表明演説で「安倍外交」の復活を堂々と宣言し、「自由で開かれたインド太平洋」の創建へ全力を尽くすことを誓った。これこそ「平和を守る」一里塚である。自公連立が解消され歪なブレーキ役が政権から去り、雨降って地固まるである。今、必要なのはブレーキ(止める)ではない。「平和を守る」ためのアクセル(推進)である。そのアクセルを全力で踏む時が来た。 

戦後に決別した自維連立合意書

 高市政権発足の前提となった自民党と日本維新の会の「連立政権合意書」が極めて重要であると我々は考える。そこには公明党の連立ゆえに超えることができなかった視点があるからだ。例えば、次なる一文である。

 「わが国は、『自立する国家』として日米同盟を基軸に、極東の戦略的安定を支え、世界の安全保障に貢献する。わが国には、そのような覚悟に加え、安全保障環境の変化に即応し、『国民をどう守るか』『わが国の平和と独立をどう守るか』というリアリズムに立った視座が不可欠である。両党は、このリアリズムに基づく国際政治観および安全保障観を共有する」

 日米同盟を基軸に極東の平和、世界の安全保障を見据えることを謳っている。これは戦後を超克する重要な視点である。アジアの平和、世界の平和があって初めて日本の平和がある。一国平和主義に陥らず、アジア、世界の平和をリアルに希求する。共産中国やロシア、北朝鮮の毒牙から世界を守らねばならない。それが日本の国家的使命(ミッション)であると我々も考える。

 「平和を守る」アクセルを踏むとはいかなることを指すのか。それはエセ平和憲法を改正し、真の日本国憲法を制定することである。自維合意書は「日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』を踏まえ、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する」としており、これも刮目すべき視点である。

 同提言は「憲法9条2項を削除し、集団的⾃衛権⾏使を全⾯的に容認する。それに伴い、我が国の防衛の基本⽅針は、『専守防衛』から『積極防衛』に転換する」と9条2項削除を打ち出し、その上で「国際法の原則に則り、我が国が、国家固有の権利たる⾃衛権(個別的⾃衛権及び 集団的⾃衛権)を有することを憲法に明記する」としている。実に明快な改憲論と言わねばならない。

 周知のように憲法9条は1項において戦争の放棄をうたい、2項において「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない」とする、まことにもって滑稽な条項である。世界いずこの国も「戦力」(軍)を保持し、交戦権(戦争状態においてあらゆる軍事組織が遵守するべき義務)を有しているからである。これを放棄する憲法など(日本国憲法を除いて)世界のどこにも存在しない。

 それにもかかわらず、安倍政権下で自民党が打ち出した「改憲4項目」は「現行の9条1項、2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき」としている。これは公明党に譲歩した結果、9条維持(護憲)+自衛隊明記としたからで、まさに妥協の産物である。

 公明党は元来、「護憲の党」である。1981年に自衛隊を違憲とする立場から合憲へと転換したが、その後の自公連立政権下でも公明党は「護憲」にこだわり続け、自衛力強化の足を引っ張り続けてきた。護憲の面目を維持するために苦し紛れに現行の憲法の足りなきを加えるという「加憲」を言い出したのである。その公明党と折り合いをつけたのが自民党改憲4項目の自衛隊明記案にほかならない。もはや、こうした妥協の産物は要らない。堂々と9条改正へのアクセスを踏まねばならないのである。

 さらに次なる自維合意書の一文に注目したい。「わが国の抑止力の大幅な強化を行うため、スタンド・オフ防衛能力の整備を加速化する観点から、反撃能力を持つ長射程ミサイルなどの整備および陸上展開先の着実な進展を行うと同時に、長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」

 次世代動力とは原子力のことであり、VLSとはミサイル垂直発射装置のことである。すなわち弾道弾ミサイルを発射できる原潜の保有を打ち出しているのである。

スタートした高市内閣

情報機関、スパイ防止法制定めざす

 さらに自維合意書は、内閣情報調査室および内閣情報官を格上げし、「国家情報局」「国家情報局長」の創設、「国家情報会議」の設置、対外情報庁(仮称)の創設を謳っている。情報要員を組織的に養成する養成機関の創設やインテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法およびロビー活動公開法など)の成立も掲げている。

 ちなみにスパイ防止法については国民民主党が10月7日に党内議論の中間報告を発表し、外国政府のために国内でロビー活動をする団体を登録する制度や「国家インテリジェンス戦略」の策定などを提唱している。

 もはや「戦後」ではない。古き輩(左翼政党)は去れ。新しい酒は新しい皮袋に盛れ。「平和を守る」アクセルを全力で踏む時だ。

【思想新聞 11月1日号】高市新政権がスタート 所信表明「強く、成長する国づくりへ」/真・日本共産党実録/文化マルクス主義の群像

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