高市早苗内閣は「非核三原則」の見直しに着手する。当然のことだ。「核兵器を持たず、作らず、持ち込まず」で平和が守れれば結構な話であるが、そうは問屋が卸さない。激変する国際情勢の下で非核三原則にしがみ付いていれば平和が守れる? 冗談も休み休みに言ってもらいたい。残念なことに、そんな「空念仏」が通用するほど今日、能天気な世界ではない。
見よ、わが国周辺に〝林立〟する悪意ある核兵器を。他国に侵略し人を殺しても何の痛みも感じない悪辣極まりない独裁国の核兵器を。かの国の権力者は自国民に対して粛清・弾圧、人権蹂躙あらゆる悪を働いても平然としているではないか。その輩が日本人に温情を示すことなどあり得ようか。日本人を地上から消し去ることに何ら躊躇しないであろう。そうであるから、彼らに核兵器をいかにして使わせないようにするか。それが大問題なのである。
「核兵器は防御の兵器」が世界常識
では、どのようにして核の惨禍から国民を守るのか。世界の常識は、核は核で封じ込めるということだ。すなわち核抑止力をもって平和を守る。それが普通の考え方である。1965年にマクナマラ米国防長官(当時)はこれを「相互確証破壊」と名付けた。核を使えば、自らも核の餌食になるので、相手が核をもっていれば使用できないという概念である。
それで国際社会では「核兵器は防御の兵器」というのが常識となった。核保有こそ真の核抑止力というのである。これが「良心」に目覚めない邪悪な独裁国に対する現実的な「核を使わせない」方法である。
もとより命も惜しくない「悪魔」が居るかも知れない。良心に働きかけても何ら反応しない輩が居るかも知れない。そういう独裁者が核ミサイルを発射するかも知れないのである。そんな時はミサイル基地を破壊して核攻撃させない。あるいは国全体に迎撃網を張り巡らせ、飛来する核ミサイルを打ち落とす。その網を破って国土に降り注ぐ核弾道もあろうから全国民の身を守る核シェルター(防空壕)を整備せねばならない。こんな風に考えて海外では核戦争に備えているのである。
こういう視点に立てば、非核三原則は陳腐な空想的平和論である。1967年、米国からの小笠原返還に際して非核を問われた当時の佐藤栄作首相が「核兵器を持たず、作らず、持ち込まず」と語ったもので、翌68年1月の施政方針演説で「非核三原則」として表明した。沖縄返還でも示したため、いつの間にか「国是」とされているが、憲法はむろん法律にあるわけでもなし(作るについてのみ法律があるが)、単なる「宣言」の類だ。
非核三原則は横暴きわまる独裁国家が「核の恫喝」「核の使用」へと歩を進める可能性があるときに丸裸になれと言うに等しい愚論だ。「核の恫喝」、たとえば中国が台湾に軍事侵攻しようとした時、日本が米軍とともに防衛に関与しようとすれば「核の標的になりたくなければ手を引け」といった類の脅しを平然と行うであろう(昨今の中国の脅しは日本人の反応を探っているのだ)。わが国が何らかの形で、自らの意思で核に関わっていれば、こんな「核の恫喝」は通用しなくなる。
したがって非核三原則の「持ち込ませず」をまずは抹消しなければならないのである。米国の核搭載艦船の寄港、領海通過や米軍機の飛来までもがいつの間にか「持ち込む」とされているが、国際社会では通常、外国艦船や空軍機が寄港しても船内・機内に寄航先の国の権限が及ぶとは解されず、本来は「持ち込み」とは言えない。だから寄港、領海通過は堂々と行うべきである。
もとより核抑止力として陸上配備が必要なら躊躇することなく実施する。「持ち込ませず」を完膚なきまで一掃せねばならない。その決断を早急に下さねばならない。
核シェアリングで攻撃型原潜保有を
次に「持たず」を消し去らねばならない。その第一歩は奇しくも安倍晋三元首相の「遺言」となった「核シェアリング」(核兵器共有政策)の導入である。これは承知のように北大西洋条約機構(NATO)の核戦略に参画したドイツとイタリア、ベルギー、オランダなどが採る政策である。米軍の核兵器を自国内に配備し(米軍が管理するが)、有事にはそれを自国軍のものとして運用する。「共有」とは言え、保有なのだ。それがなぜ必要かと言えば、単なる「核の傘」(拡大抑止)のみでは信用できないと考えるからである。だから「持たず」ではなく、有事には自ら「持つ」ことを示し、核抑止力を確固たるものにするのだ。
その際、原子力潜水艦が必要不可欠だ。日本の地理的特性を生かすには、核ミサイル搭載原潜を常時、深海を巡回させておくことが有効であるからだ。自民党と日本の維新の会の連立合意書に「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS(ミサイル垂直発射装置)搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」とあるが、これが核ミサイル搭載原潜である。早急に陳腐な非核三原則を葬り去れ。
【思想新聞 12月1日号】高市首相の発言に中国反発 「一つの中国」原則は国連の原則ではない/真・日本共産党実録/文化マルクス主義の群像/共産主義定点観測