元沖縄県会議員 西田健次郎 氏「正念場を迎えた普天間飛行場の辺野古移設」

世界思想9月号を刊行。今号の特集は「間違いだらけの『沖縄問題』です。

本誌の「WEB立ち読み」として
元沖縄県議会議員の西田健次郎氏へのインタビューの一部をご紹介します。

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正念場を迎えた普天間飛行場の辺野古移設

宮古島市長選、うるま市長選、那覇市議選と辺野古移設反対の「オール沖縄」は4連敗。
沖縄の政治情勢は変わりつつあるー

OKINAWA政治大学名誉教授・元沖縄県会議員

西田健次郎 氏

辺野古の地元民は移設賛成。国が粛々と事態を進めることが肝要

 --今年に入り、宮古島市長選、浦添市長選、うるま市長選、そして那覇市議選と辺野古移設反対の「オール沖縄」は4連敗した。

 辺野古一点主義の弊害で、翁長知事の政策は破たんしている。7月9日の那覇市議選(定数40)では、翁長知事派が改選前の20人から18人に後退し、過半数を割り、8月6日投票の与那国町長選挙では立候補者が保守の2人だけで、翁長知事は実質5連敗となる。那覇市議選挙では「オール沖縄」からの立候補予定者3人が、保守本流の後援者の離反で立候補できなかった。「オール沖縄」に与した4人も落選している。

 県議会議員選挙では共産党県議がトップ当選し、那覇市、浦添市、宜野湾市でも共産党が上位当選している。東京都議選で見られるように、無党派層の批判票が共産党に流れている面がある。

 辺野古移設については、移設先の地元民は賛成なので、国が粛々と事態を進めることが肝要だ。地元の3地域で住民投票すると賛成が圧倒するので、翁長知事は行わない。名護市全体だと、関係のない東部の住民らの反対で反対票が上回るが、反対運動は次第に委縮してきている。翁長知事の抵抗としては最後に住民投票があるが、保守系9市長でつくる「チーム沖縄」の市町村会が、最低10億円はかかる無駄な投票だと反対しているので実施できない。

 米国政府も、以前、反対だった共和党の有力者マケイン上院議員なども、普天間基地の移設先は辺野古しかないと言い出している。翁長知事には辺野古移設の承認撤回の手があるが、防衛省から翁長氏個人を対象に損害賠償の訴訟を起こされる可能性があるので、これもできないし、撤回する理由も、最高裁の判例を見る限り見いだせない。

 昨年、安慶田光男副知事(当時)が、翁長知事が辞任して再選挙になっても、また圧勝すると菅義偉官房長官を脅したのだが、私は無視すればいいと助言した。そんな脅しは通じず、安慶田副知事は今年1月に辞任した。

 現在、沖縄県は無駄な裁判闘争を続けているが、既に最高裁で結論が出ているので、単なる嫌がらせの時間稼ぎにすぎず、県民の税金を前回9000万円、今回の訴訟で500万円浪費している。

 翁長知事が辺野古移設反対にこだわるのは、新基地建設はあり得ないのとサンゴ礁が破壊されるというのが理由だが、沖縄市では南西諸島でも最大級の規模を誇る泡瀬干潟の埋め立てが進行中で、那覇空港第2滑走路については、辺野古の数倍のサンゴ礁がある海底の地形変更に必要な岩礁破砕の工事を許可している。浦添港の移設でも、手つかずのサンゴ礁があるのに、経済界の猛反発を怖れ黙認している。那覇市議会では翁長与党の共産党と社会大衆党・社民党は、那覇空港の拡張工事に反対決議をしている。

 そうした内部矛盾を抱えながら、辺野古移設反対に一点集中し、政治ショーを続けているのが翁長県政だ

「赤旗」以上の偏向報道を続ける沖縄二紙。辺野古移設賛成署名8万名集めても意見が掲載されず

 --本土でもメディアの報道姿勢が問題になっているが、沖縄では特に地元メディアのあり方が課題になっている。

 地元二紙「琉球新報」「沖縄タイムス」の紙面には、米軍基地反対を訴える記事が連日のように載り、イデオロギー的に偏向した報道が当たり前のように行われている。本土と違って、朝日、毎日に対する産経、読売のような対抗メディアがないため、沖縄の人たちは二紙の報道が事実だと思い込んでしまう。

 私たちがそれに反論しようとしても、掲載してくれない。私は辺野古移設に賛成する署名を8万余人集め、仲井眞知事に届けたことがあり、そんな意見の人を取材したいという琉球新報の女性記者から2時間、インタビューを受けたが、記事にはならなかった。彼女に電話すると、社の方針に反するとして記事がボツになったという。

 辺野古移設が適当かどうかは読者の判断にゆだねるのが公正なマスコミのはずだが、沖縄の新聞は中立のふりをして、やることは共産党の「赤旗」以上なのである。「赤旗」は最初から色がついているからいいが、一般紙は公正中立の姿勢を貫くべきだ。

 沖縄でも中立の新聞を発行したいのだが、ネックなのは資金問題だ。八重山日報は中立の立場で頑張っているが、八重山諸島のローカル紙なので影響力が弱い。本土復帰前に、当時の左派的論調に批判的な国場組など財界の支援で沖縄時報が創刊されたことがある。

 沖縄時報社の社長には元琉球政府法務局長の崎間敏勝が就任したが、経営が不安定で、財界の支援も滞り、既存2紙の反対で記者クラブ加盟を拒否されるなどの困難が続き、2年弱で廃刊に追い込まれた。崎間氏は反日的な学者で、保守系の新聞社のはずだが労働組合が結成された。私も琉球大学を卒業して入社したのだが、3カ月間給料が出ず、辞めざるを得なかった。だから、沖縄で新たに新聞を発行するのは容易でない。

 

「(有事でも)米軍には絶対に那覇空港を使わせない」は、翁長知事のノー天気さのあらわれ

 ーー沖縄は日本防衛の「要衝」とされるが、総合的な将来展望をどう考えるか。

 沖縄から米軍基地を撤退させるのが革新勢力や琉球独立派の主張だが、そうなるとすぐに入ってくるのは中国だ。フィリピンの例を見ても間違いない。沖縄がそうなると台湾も中国に併合されてしまう。沖縄は地政学的に、アジア太平洋の安定と平和のキーストーン(要石)になっている。安全保障の要衝にあることを、沖縄県民も日本人は自覚しておくべきだ。

 そのための負担は覚悟し、政府の経済支援で経済的な発展を実現する。与那国島には自衛隊員200人が駐屯しているだけで、町長選挙で革新系は候補者を擁立できなくなった。国境警備の意味も含め、自衛隊基地の国境の島への配備を進めるべきだ。

 2013年に日米両政府が合意した統合計画で、普天間飛行場の返還条件の一つに有事など緊急時の民間施設の使用が盛り込まれている問題で、翁長知事は県議会6月定例会で「米軍には絶対に那覇空港を使わせない」と述べたが、稲田朋美防衛相(当時)は6月の参院外交防衛委員会で、米側との調整が整わなければ普天間飛行場は「返還されないことになる」と明言した。

 有事とは戦争状態で、一番予想されるのは、北朝鮮がミサイルを日本に向けて発射した時のことだ。そんな緊迫した事態になって、米軍に那覇空港を使わせないという知事の論理は通じない。戦時になれば、米軍の那覇空港使用は国が判断することで知事の許可は必要としない。いかに翁長知事がノー天気か分かるだろう。

 森友学園や加計学院問題で国会が時間を浪費している間に、北朝鮮は核ミサイルの開発をどんどん進めている。気がついた時には、取り返しがつかない事態になってしまっているということになりかねない。

続きは本誌でお読みくださいーー

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