「家族回帰」と「地方創生」を進める好機

 

世界思想8月号を刊行しました。今号の特集は「日本の針路 安倍政権への緊急提言
ここでは特集記事の一部 「家族回帰」と「地方創生」を進める好機 ついてご紹介します。

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 6月21日、新型コロナの影響下における生活意識・行動の変化について、内閣府が実施した意識調査の結果が公表された。それによると就業している人のうち34・6%がテレワークを経験したと回答。特に東京23区では55・5%と半数を超えた。西村康稔経済再生担当大臣は記者会見で「社会全体のデジタル化や政府の手続きを含めたオンライン化が大きな課題なので、1丁目1番地で進めたい」と述べた。

 

 かねて日本では、行政、企業を問わず、デジタル化の顕著な遅れが国際的な競争力低下を招いていると指摘されてきた

 一律10万円の特別給付金についても、2009年リーマン・ショック後の定額給付金と変わらず市町村職員の手作業に頼っており、給付の遅れが問題となっている。
 

 行政手続きの効率化や企業の国際競争力強化の視点から見ても、デジタル化、オンライン化の推進は歓迎すべき変化だ。

 同時にこの変化は「働き方改革」を促すことで、個人の生活から社会全体のあり方をも変えていく大きなうねりとなるだろう。
 

 

 7月なかばの閣議決定を目指す本年度の骨太方針にも社会のデジタル化への集中投資や、東京一極集中の是正が盛り込まれることになった。

 

 

 新型コロナが一種の「黒船」となり、日本社会に大きな変化を促そうとしている。

 

 

仕事偏重から家族重視へ 国民意識の変化を後押しせよ

 

 内閣府調査では、ほかにもいくつかの点で国民の意識が大きく変化していることが明らかになった。

 

 1つは外出自粛や在宅ワークとの関連で、家族重視の傾向が強まったことである。
 

 

 実際に、家族と過ごす時間が増えた人の割合は、子育て世帯で70・3%にのぼり、そのうち81・9%が今後も保ちたいと回答した。

 

 さらに家事・育児の役割分担についても、感染拡大前と比較して34・1%が「より工夫するようになった」と答え、そのうち95・3%が「今後も工夫する」と答えた。
 

 DV相談の増加など家族関係が悪化するケースも目立ったが、全体的にみると、新型コロナの影響は家族の絆を強める方向に働いたようだ。
 

 「家族の重要性をより意識するようになった」人の割合も49・9%に達し、仕事から家庭に重心を移そうという願望は確実に高まっている
 

 

 非婚・晩婚化や出生率低下の背景には、結婚・家族形成よりも、仕事など個人の自己実現を過度に偏重する価値観があると指摘されてきた。

 

 せっかく生まれた「家族回帰」の流れを、政策面でも積極的に後押しすることが必要だろう。
 

 

 教育面でも、家族に焦点を当てた政策の強化は必須だ。一斉休校は解除されたものの、感染数の再拡大を受け、再度の臨時休校を実施する学校も現れてきた。一部の都府県は、すでに受験の出題範囲縮小を決定しており、「コロナ世代」の学力低下を懸念する声も上がっている。
 

 

 今後も感染症のほか自然災害などで公教育が機能不全に陥る局面が想定される。その際、家庭が持つ教育力によって、子供の学力に大きな格差が生まれてしまうだろう。家庭教育支援の充実に向けた動きを加速すべきだ。

 

東京一極集中是正に向けて地方創生の機運を高めよ

 

 

 同調査では、若者の地方志向の高まりも浮き彫りとなった。ちなみに「新しい生活様式」への変化は、若年層ほど肯定的に受け止められている。

 新型コロナを機に新しいことに挑戦した割合は50代以上が41・8%にとどまる一方、10代、20代では約7割に達した。テレワークの推進についても、通勤時間の短縮、業務の効率化など、メリットの方を強く感じているだろう。

 

 その結果、地方移住に関心を持つ若者が増加した。なかでも東京圏でその傾向が顕著だ。20歳代で地方移住に対する関心が高くなった割合は東京圏で27・7%、23区では35・4%に達し、大阪・名古屋圏の15・2%を大きく上回った。

 

 わが国では長年、東京一極集中のリスクが指摘されながらも、若年層の東京圏への流入に歯止めをかけることができず、地方は衰退する一方だった。その傾向を反転させる絶好の機会が訪れているのだ。

 

 もちろん、若者の地方移住を促進するには職場の確保が欠かせない。

 企業のデジタル化、オンライン化を促進し、本部機能や事業所の地方移転に対する支援制度を強化すべきだ。特に、資金面などからテレワーク導入に消極的な中小企業への支援は効果的だろう。

 

 6月11日、自民党政調会のデジタル社会推進特別委員会は、政策提言「デジタル・ニッポン2020」を発表した。その序文では、大平正芳元首相の「田園都市国家構想」を引用。デジタル技術で働き方改革が進む今こそ、「デジタル田園都市国家」を目指すべきだと指摘した。
 

 大平元首相の構想は「都市の持つ高い生産性、良質な情報と、田園の持つ自然、潤いのある人間関係」を結合させた、総数2~300の個性豊かで活力ある地域社会が相互交流する国家像を目指すもので、まさに現代社会のニーズとも一致する。
 

 1970年代の終わりに大平氏は有識者を集め、21世紀に向けた提言をとりまとめた。その柱こそが「家庭基盤充実」と「田園都市国家構想」だった。

 

 40年の時を経て、新型コロナがもたらした家族・地方回帰の流れは大平提言に再び脚光を当てている。

 

 家族と地方の再生に向けた変化を確かなものとすることができれば、憲政史上最長となった安倍政権が未来世代に残す最大のレガシーとなるだろう。

 

 

 

 

(「世界思想」8月号から抜粋)

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