【巻頭言】コロナ禍が問いかける「太平洋海洋文明」の未来:梶栗正義会長

世界思想10月号を刊行しました。今号の特集は「東アジア情勢と日韓関係解決の糸口
ここでは巻頭言の梶栗会長のメッセージ「コロナ禍が問いかける太平洋海洋文明の未来」を紹介します。

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UPF-Japan / 国際勝共連合会長  梶栗正義

 

 第一次世界大戦が終わるころに流行したスペイン風邪。その終息後に現れたのは、「パックス・ブリタニカ」(大英帝国による支配)による世界秩序から「パックス・アメリカーナ」への歴史的転換の流れでした。

 現在、各界の有識者が「ポスト・コロナ」について論じています。中でも「コロナによって、それ以前からあった人類史の潮流が加速度的に進み、社会の変化がますます大きくなっていく。コロナはその促進剤の役割を果たしている」との言葉をよく耳にします。

 その最も具体的な事象が米中対立と言えるでしょう。新冷戦とも言われている米中の衝突はコロナ禍でより先鋭化し、激化しています。貿易摩擦に端を発した対立は、やがて金融などの経済全般に拡大し、今では価値観の相違による衝突の様相が露呈してきました。新型コロナ克服において優位なのは独裁制か民主制かといった議論も盛んに行われているようです。

 現在米国では、自由主義諸国が中国により、大きく3つの挑戦を受けているとの認識を強めています。第1に経済、第2に価値観、そして安全保障上の挑戦です。

 ポンペオ米国務長官は7月23日、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で「共産主義の中国と自由世界の未来」と題した演説を行い、米国歴代政権の対中国関与政策は失敗したと明言し、政策の転換をはっきりと表明しました。

 経済の再生は重要な課題ですが、私たちはチャイナリスクと真剣に向き合い、極端な中国依存について再考せざるを得ない状況に直面しています。国際社会は新型コロナ拡散について、発生初期に中国がこれを隠蔽し、正しい情報を世界に伝えなかったことで世界的パンデミックを招来したとの見方を強めています。さらに香港問題。中国は国際社会の非難を承知の上で香港に介入し、英中共同声明で保障した「1国2制度」を否定する法律を制定させました。

 度重なる中国による国際秩序を逸脱した行為は、正に自由民主主義世界に対する「経済」「価値観」「安全保障」の挑戦と見ることができます。
 

 この間、日本が標榜して来た価値の外交とは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済という普遍的価値を追求することで平和と繁栄の国際秩序を築こうとするものでした。その大前提となるのが海洋平和秩序です。国境線を描くことができない海を人類共通の公共財と位置づけ、国際ルールを作り、互いに繁栄しようという発想を共有できるかが肝要なのです。
 

 現在の中国共産党政府は、覇権主義的姿勢を隠さない「大陸国家」の姿であり、海の覇権掌握にも貪欲な姿勢を隠そうとしません。米中対立は、「民主と共産」の対決だけでなく、「大陸国家と海洋国家」のせめぎ合いでもあるのです。

 コロナ禍で先鋭化する米中の衝突は、太平洋海洋平和文明が人類を新しい平和な未来へと導くことができるのかという歴史的な問いかけでもあります。海洋国家日本はポストコロナの時代に向け、米国、韓国、台湾などと共に普遍的価値による国際平和秩序構築において主導的役割を果たさなくてはなりません。

 

(「世界思想」10月号より )

◆2020年10月号の世界思想 特集【東アジア情勢と日韓関係解決の糸口】
Part 1 支持率急落で窮地の文在寅政権 景気後退は構造的な問題
Part 2 北朝鮮建国神話とチュチェ思想 金正恩後継体制に移行か
Part 3 「底割れ」危機に近づく日韓関係
Part 4 曲がり角に立つ米韓同盟~求められる自由主義陣営の一員としての自覚と責任~
Part 5 朝鮮半島は新世界秩序構成の「ベアリング」
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