問われる宗教の役割

世界思想12月号を刊行しました。今号の特集は「世界史の大転換~激動の世界に求められるビジョンとは~です。
ここでは特集記事の一部 「問われる宗教の役割」 についてご紹介します。

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 あらゆる宗教にとって平和は基本理念の柱だ。個人の平和を礎に、家庭、国家、世界の平和に至るべきことが強調される。その核心的価値は他者への愛、仁、恕(おもいやり)などである。

 

 しかし現実はそうなってはいない。過去も現在も、このままでは未来も、との思いに駆られる。

 人間の歴史を振り返れば、最も残忍な戦争は国家間の戦争ではなく人種間の戦争だったといえよう。なかでも宗教を前面に出した人種間の戦争は悲惨である。

 

 記憶に新しいボスニアの内戦は20世紀最悪の民族紛争といわれた。1991年に勃発したユーゴスラビア紛争にともなうユーゴ解体の動きの中で、92年3月にボスニア・ヘルツェゴビナが独立を宣言。

 当時、ボスニア・ヘルツェゴビナには約430万人が住んでいたが、そのうち44%がボシュニャク人(ムスリム)、33%がセルビア人(セルビア正教)、17%がクロアチア人(カトリック)と、異なる民族が混在していた。

 

 ボシュニャク人とクロアチア人は独立を推進したが、セルビア人はこれに反対し分離を目指した。両者間の対立はしだいに深刻化し、独立宣言の翌月には軍事衝突に発展した。

 およそ3年半以上にわたり全土で戦闘が繰り広げられ、死者20万人、難民・避難民は200万人を数えた。国連も停戦に向けて努力したが、最終的に停戦合意を実現したのは、NATO(北大西洋条約機構)軍によるセルビア攻撃だった。
 

 

 2001年9月11日には、米ニューヨークのツインタワーがイスラム過激派テロリスト集団アルカイダによって急襲され、3000人以上が犠牲に。その後、戦火はアフガン、イラクへと拡大した。混乱の中で生まれた過激集団IS(イスラム国)がもたらした惨劇は現在も尾を引いている。
 

 

 今年9月末、アルメニア、アゼルバイジャン戦争が勃発した。

 すでに死者は5000人を超えているとみられる。宗教面から見ればアルメニア人の多くはキリスト教の正教徒、アゼルバイジャン人の多くはイスラム教シーア派である。ロシアはアルメニアに近く、トルコがアゼルバイジャンを強く支持してきた。

 

 アルメニアとアゼルバイジャンは1990年代に全面戦争を経験している。(ナゴルノカラバフ戦争)民族浄化の嵐が吹き荒れて約3万人が死亡し、100万人の難民を生んだ。そのほとんどがアルメニアの占領地からでたアゼルバイジャン人だった。
 

 戦争の遠因は、ソ連共産党が強制的にこの地域をアゼルバイジャン共和国に編入したことにある。1980年代にソ連の統制が緩むと、ナゴルノカラバフにいるアルメニア人がアゼルバイジャン支配に抗議の声を上げ、アルメニアへの編入を要求。88年には民族的な対立が激化するようになった。終盤はアルメニア優位となり、94年、ロシアの仲介で停戦が成立した。

 

赤く染められている場所「ナゴルノカラバフ」は、両国間の長年の係争地になっている。

 

 今年に入って事態が悪化した原因は「コロナ禍」だ。夏から国境付近で小競り合いが繰り返されていたが、コロナ禍で社会のストレスが高まり、経済も破綻寸前。政治家が愛国心を前面に押し出して、互いに相手の攻撃が先だと非難しあうことによって、対立は激化の一途をたどることとなった。

 

 

政治目的に利用される宗教

 

 このように、宗教紛争が頻繁に起こるのは、多くの政治家が利己的な欲望を満たそうとして宗教間に潜む反感を利用するからだ。

 

 政治的な目的を前に、宗教は方向性を見失い、本来の目的を喪失してしまう

 

 既述のように宗教は本来、平和のために存在する。しかしそれが果たされていない。何が問題なのか。

 

 問題は「世俗化」である。

 世俗化とは利己的になるということだ。利己的になるとは、神との「真の関わり」が失われるということである。

 近代化の裏側で霊性の軽視が進み、経済的な論理で利己的欲望が正当化される時代を迎えた。

 

 その結果、宗教すら利己的かつ党派的な争いに利用される状況が生まれてしまったのだ。

 

 宗教者たちが集まって、平和について語り合うことも重要だ。

 しかしそれ以上に必要なことは真の愛の根源である神(宇宙の根本)との真の関わりを回復することだ。既存の倫理や道徳の重要性を強調するだけでは不十分である。利己心(時には愛国心の仮面をかぶることもある)を超える神による真の愛の力を受ける必要があるのだ。

 

 釈尊やムハンマド、イエスが歴史に輝くのは「宇宙の根本」である神や真理とかかわる道(教義と実践)を革命的に示したからだ。
 UPFの韓鶴子総裁は昨年10月、名古屋で開催された「JSLC2019」で次のように語った。 

 「今日の政治家たちは、謙虚な姿勢で天の声を聴くことができるものでなければなりません。天の祝福を受けることができる人にならなければなりません」

 

神霊を受ける人間革命の必要性を示されたUPFの韓鶴子総裁

 

 政治家に向けられた韓総裁の忠告は、人間が他者を愛する前に「心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ」(マタイ福音書22章37節)と語られたイエスの戒めと響きあう。このメッセージには真理(教義)とともに、神霊を受ける人間革命の必要性が込められている。

 

 そのためにはまず、宗教人、宗教指導者が覚醒しなければならない。UPFの理念と実践はその道を提示している。

 

 

(「世界思想」12月号より )

◆2020年12月号の世界思想 特集【世界史の大転換~激動の世界に求められるビジョンとは~】
提言1 世界平和を模索する国連の現実と課題
提言2 常軌を逸した中国の暴走
提言3 欧米の衰退招いた家庭崩壊
提言4 問われる宗教の役割

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