思想新聞2月1日号の共産主義特集「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の主張を一方的に垂れ流すNHK」を掲載します。ICANが主張する「核兵器禁止条約」は非現実的な空想的核兵器廃絶論であり、むしろ、日本が国連に提出した「核廃絶決議」こそ現実的な選択肢ではないでしょうか。
156か国が賛成した、日本主導の核兵器廃絶決議案の報告を伝える外務省ホームページ
1月17日、NHKニュースでノーベル平和賞を受賞した国際NGO(非政府組織)、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長の来日インタビューが放映された。今回来日するまで広島長崎を訪れることもなかったフィン女史が日本はなぜ核兵器禁止条約に参加しないのかと、核の脅威を煽る北朝鮮よりも日本が問題であるかのような態度に違和感を感じた。
それと同時に聞き手側も「勉強不足」か恣意的な歪曲に映った。即ち、米国など核保有国がなぜ核兵器禁止条約に参加しないのかも明らかにしないし、さらには、日本は核兵器廃絶に対して何らの努力もしていないかのような言い様だった。これは、一方的なICANの情報のみを垂れ流す、公共放送にあるまじき明らかな放送法第4条違反と言えるものだ。
核兵器廃絶国際キャンペーンのメンバー、日本では北朝鮮との関係が疑われる「ピースボード」が関わっている。
昨年7月7日、国連で投票した122ヵ国が賛成し核兵器禁止条約が採択された(核保有国の米露中英仏と日本は投票せず)。この時、米政府は「この条約は国際的な安全保障環境の現実を無視しており、一つの核兵器の削減にもつながらない」とし、ICANのノーベル賞受賞後も、「この条約が世界を平和に導くことはなく、核兵器の廃絶につながるどころか、各国の安全を強化することもない」と表明している。
また当時の岸田文雄外相は「米国の核の傘に依存する日本が核兵器全面否定のこの条約には賛成できない」「核兵器国と非核兵器国の対立を一層深めるという意味で、逆効果にもなりかねない」と述べていた。
つまり日本側の立場は核兵器保有国が納得した形での相互核軍縮のプロセスを経ない限り、現実的な「核廃絶」には結実しないと考えるものだ。それは、国連における日本提出の「核廃絶決議」にも現れている。
昨年10月27日、国連総会第1委員会で「核兵器廃絶決議」案が採択された。同決議案の採決では、核保有国の米英仏が賛成、北朝鮮、中国、シリア、ロシアが反対。棄権は昨年より10カ国増え、「核兵器禁止条約」主導諸国が棄権した。
つまり冒頭のフィン氏インタビューで記者がこの日本の提出した「廃絶決議」について一言も触れず、「禁止条約に参加しない日本は被爆国なのにおかしい」との印象を植えつけた。これも明らかな放送法違反(両論併記する義務)である。そしてこのインタビューでは「日米同盟があるからといって米国と同じ歩調を取る必要はない」と「日米分断」を教唆する極めて政治的発言が印象的だった。
しかも、核保有国に対し核軍縮を鼓舞した日本の努力を毫も評価しないICANの姿勢は、「唯一の戦争被爆国」である日本への侮辱や冒涜ではないか。
禁止条約が成立したからと言って核兵器がサイバー空間のように消えてなくなるわけではない。それが核抑止の議論を無視した空想的平和論に陥っている自己満足的なものでしかない。
現実の野放図な核拡散の危機に立たされているのが他ならぬ北朝鮮の核問題ではないか。その北朝鮮の核に曝されているわが国に対し、フィン事務局長はまさに「核の傘を脱げ」と言っているに等しいのである。
では、なぜこれほど「北朝鮮の核」に対し無頓着なのはなぜか。それはズバリ背後にある「ピースボートの影」だろう。ICAN国際運営委員に名を連ねているのが川崎哲・「ピースボート」共同代表だからだ。現在、立憲民主党幹事長の辻元清美衆院議員らが学生時代に設立したNGO「ピースボート」は、かねてから北朝鮮との関係が指摘されてきた。辻元議員の内縁の夫である北川明・第三書館社長は日本赤軍のヨーロッパ担当兵だったとされる。日本赤軍の前身組織・共産同赤軍派は日航機よど号ハイジャック事件で北朝鮮に亡命し、日本人拉致を主導したほか、欧州では反核運動に携わった。
それを踏まえれば、「核兵器禁止条約が核兵器廃絶に繋がるものでないとわかっていて礼賛する報道は、核兵器を真剣に忌避する人に対する偽善や冒涜だ」(「ジャパン・イン・デプス」)とジャーナリストの古森義久氏の批判は全く正しい。
思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー
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