辺野古移設の意義は不変だ

 9月30日に投開票された沖縄県知事選挙で共産、社民両党など左翼陣営が推す前衆院議員の玉城デニー氏が与党などの推す前宜野湾市長の佐喜真淳氏を破り当選した。玉城氏は故・翁長雄志前知事の「後継者」をうたい文句に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対し、国との対決姿勢を露わにしていた。

 だが、わが国を取り巻く安保環境は一段と厳しさを増している。玉城知事のもとにあっても辺野古移設工事を粛々と進めねばならない。平和を守るには何が必要か、それは国防への確固たる決意と取り組みである。保守陣営は知事選敗北を教訓に改めて国民啓蒙に臨むべきである。

移設先の辺野古地区(名護市)

移設元の普天間基地(宜野湾市)

 

 沖縄知事選で玉城氏は「弔い選挙」を前面に打ち出す戦術で支持を拡大し約39万6千票を獲得。佐喜真氏は政府・与党とのパイプを生かした経済振興や暮らしの向上を訴え普天間返還の早期実現を主張したが、約31万5千票にとどまった。左翼陣営が翁長氏を「神格化」し、「弔い」を演出したのが勝因とされる。

 こうした情緒的な訴えが国家の安全保障よりも優先するというところにわが国の脆弱性が露見している。ポピュリズム(大衆迎合)によって日本の進路が歪められる可能性を改めて指摘せざるを得ない。そこに共産中国が付け込んでくるのは容易に想像できよう。国民啓蒙を急がねばならない理由はまさにここにある。

 

普天間の危険性除去と安保確立

 辺野古については今さら言うまでもない。普天間返還・辺野古移設の日米合意から20年以上も経つが、移設の意義はまったく減じていない。宜野湾市の市街地にある普天間飛行場の騒音や墜落事故の危険性を除去し、同時にわが国のみならず東アジアの平和を守るためである。

 わが国を取り巻く安保環境は予断を許さない。北朝鮮の非核化への道は平坦でなく、中国は「軍事力の急速な近代化を進めており、わが国周辺を含む地域及び国際社会の安全保障上の強い懸念」(2018年版防衛白書)があるからだ。

 ペンス米副大統領は10月4日の講演で、中国が南シナ海などでこれまでにないほど覇権的になっていると指摘。9月末には米駆逐艦が南沙諸島周辺で「航行の自由」作戦を実施した際、中国軍の駆逐艦が異常接近したことを非難し、「国際法が認め、米国の利益にかなえば、どこでも飛行や航行を続ける。脅しには屈しない」と中国の海洋進出を指弾している。

 中国の矛先は南シナ海から東シナ海、そして南西諸島(中国は第一列島線と称している)に伸びている。その脅威に備える「抑止力」を維持してこそ平和は守れる。このことを再確認しなければならない。

 すなわち日米同盟を強固にしなければならないのである。辺野古移設はそのために欠かせない。沖縄県知事選で安保の在り方がまったくと言っていいほど論じられなかったのは誠に遺憾である。

 辺野古移設によって米軍基地の再編が進み、沖縄の負担は大きく減じる。普天間返還後の跡地には一大再開発ビジョンが描かれており、北部地域は辺野古移設を契機に地域経済の活性化を期す。沖縄の未来は大きく開かれるのである。地元・辺野古区は周辺整備を条件に移設受け入れを表明している。

 それを情緒的に反対するのは、結果的に中国の反米・反基地工作に乗ることを意味する。中国の対日工作はさまざまな形で日本国内に浸透している。これを間接侵略と言う。この後に直接侵略(軍事侵攻)があるのは歴史の示すところである。

 中国の工作を許してはならない。わが国の主権を守り、平和と安全を守らねばならない。したがって沖縄県知事に誰がなろうと、辺野古移設は粛々と進めねばならない。ところが、辺野古移設工事は沖縄県が8月末に埋め立て承認を撤回したことで中断している。

 

国は法的措置で工事を再開せよ

 移設工事の合法性は(これも今さら指摘するまでもないが)、すでに決着済みである。翁長前知事は「裁判闘争」を繰り返し、15年10月には埋め立て承認を取り消したが、国は代執行訴訟を起こし、16年12月に最高裁は知事の承認取り消しを違法と断じている。

 県は8月、埋め立て承認後に「留意事項」(承認の条件)に違反があるとし、それを根拠に承認を撤回したが、その根拠に合理性はまったくない。例えば、辺野古岬の東側の大浦湾に活断層や軟弱地盤が存在するというが、現在埋め立て準備を進めているのは辺野古側で、仮に活断層や軟弱地盤があっても工法の変更などで対応できる。

 また国立沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)の校舎などが米国防総省の決めた「高さ制限」に抵触するとするが、離着陸で集落上空を通過しないように辺野古沖合にV字型の滑走路を作ることになっている。

 いずれにしても国は速やかに必要な法的措置を取り、撤回処分の取り消し訴訟を起こし、移設工事に法的決着をつけ、普天間飛行場の返還へ全力を挙げるべきである。辺野古移設は沖縄県民、全国民のために必要不可欠なのである。

思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー

10月15日号 第4次安倍改造内閣が発足 天王山は来夏の参院選だ / 東大で中核派全学連委員長が誕生、学内過激派への警戒が必要だ /  勝共50周年にあわせ一宮安保大会 etc

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