国際連合は共産主義に侵食され、今やその「司令塔」と化しつつある。安全保障理事会はウクライナ侵略のロシア、共産党独裁の中国が拒否権を持つ常任理事国に席を占め、もはや機能しない。他の国連機関は文化共産主義者の巣窟と化し、世界の宗教・文化・家庭を破壊しようと策動している。その標的にされているのが日本である。軍事侵略に匹敵する「赤い文化侵略」を断じて許してはならない。
共産主義の巣窟と化した国連の醜態
国連の女性差別撤廃委員会は昨年10月、日本政府に対して夫婦同姓を定める民法の改正(選択的夫婦別姓導入)や、人権侵害された個人が国内で救済されない場合に国際機関に訴えられる個人通報制度を定める選択議定書の批准、さらに男系男子が皇位を継承することを定める皇室典範の改正などを勧告した。いずれも日本解体の策謀を秘めた許しがたい内容だ。
これに対して日本政府は今年1月、「皇位継承の在り方は国家の基本に関わる事項で、わが国の皇室典範について取り上げることは適当ではない」として、国連人権高等弁務官事務所への任意拠出金の使途から同委を除外することを申し入れた。当然の対抗措置である。夫婦別姓や議定書批准も断固、跳ね除けねばならない。
いったい女性差別撤退委はいかなる存在なのか。それを知るには共産主義に脆弱な国連の実態を把握しておかねばならない。元々、国連は共産主義者に都合の良いように設計されているのである。シナリオ(国連憲章)を描いたのはルーズベルト米大統領補佐官だったソ連スパイ、アルジャー・ヒスで、国連を「世界政府」と位置づけ、そこにエージェント(ソ連スパイ)を送り込み、コミンテルン(国際共産党)化を目指した。
実際、1978年にソ連出身の国連事務次長だったアルカディ・シェフチェンコが米国に亡命し、その実態を暴露している。それによれば、ソ連および東欧諸国(当時の共産国)の国連職員と代表部員は約2000人いたが、その3分の1から半分は諜報機関であるKGB(国家保安委員会)かGRU(参謀本部情報総局)、その傘下にあった東欧諸国の各国情報機関に属するメンバーだった。
フェミニスト(女権拡大主義者)ら文化共産主義者も国連の事務局に入り込み、さまざまな「権利条約」を作らせ、それを締結・批准させて各国に縛りをかけ、西側自由諸国を解体するシステムを作り上げてきた。
それを担ったのはルーズベルト米大統領夫人エレノア(過激フェミニストだった)で、国連人権委員会委員長に就任すると、同委を足場に米国共産党系の人物やフェミニストらを国連職員に送り込んだ。スウェーデンの社会主義者アルバ・ミュルダールは経済社会理事会の担当事務局で福祉や社会科学部門のリーダーとなり、国連を彼女らの牙城にした。自由諸国に居場所のない共産主義者たちが国連機関に集結し「赤い国連」を築き上げてきたのである。
そのツールが国連憲章71条「 経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる」である。同条を根拠に共産主義者はNGO(非政府組織)やNPO(非営利団体)、草の根市民団体、宗教系団体、シンクタンク、ボランティア等々、さまざまな民間団体を設立。国連はそれを「重要なパートナーであり、かつ国連と市民社会とを結びつける貴重な存在である」とし、国家国民を蔑ろにする「市民社会」の概念をもって国家破壊を企ててきたのである。
1975年、世界の文化共産主義者らが結集してメキシコで第1回世界女性会議(メキシコ会議)を開催し、これを起点に「フェミニストが行政に強力に働きかける極めて『能率的』なシステムを構築した」(『〝ポスト〟フェミニズム』海妻径子著)。すなわち国連を通じた「上からの革命」の道を開いたのである。その一つが79年の女子差別撤廃条約である。
同条約は男女平等を人権の柱の一つに据え、女子差別の撤廃を目指すという「大義」を作り、男女平等を基に教育・雇用・ヘルスケア・経済的社会的給付・国籍・法的能力・投票・結婚などの人権を保障し、「あらゆる形態の差別撤廃」を締結国に義務づけたのである。

2024年10月、ジュネーブで行われた女子差別撤廃条約第9回政府報告審査
ポリコレは日本をターゲットにする
こうして日本国内の文化共産主義勢力は同条約を根拠に国内の伝統的な家族や価値観を女子差別と規定し、女子差別撤廃委に通告、勧告を引き出して政府に法律の改廃などを要求するようになった。これが国連を通じて文化共産主義者が国家破壊を企てる「能率的なシステム」なのだ。国連は文化共産主義の司令塔と化したのである。
「あらゆる形態の差別撤廃」とは「ポリコレ」(ポリティカル・コレクトネス=人種、性別、国籍、宗教、年齢、障がいなどを理由とした差別撤廃)にほかならない。トランプ米大統領が「常識革命」を通じて米国から追放する「赤の集団」である。足場を失ったポリコレは日本を狙っている。その策動を断じて許してはならない。
【思想新聞 3月1日号】韓国・憲法裁の弾劾判決近し 戒厳令は「啓蒙令」尹大統領支持が拡大/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測