日本学術会議を特殊法人化する日本学術会議法案が衆院で審議入りした。結論から言えば、同法案は護憲・共産勢力に支配されてきた学術会議を正常化するにはほど遠い内容である。こうしたエセ学術会議に国民の税金を投入する必要があるのか。真に国家国民に奉仕する新たなる組織を構築すべきではないのか。我々は本質的論議を望む。
GHQが作った日本解体の砦だ
日本学術会議をめぐる議論は2000年、菅義偉首相(当時)が同会議の推薦した候補105人のうち6人の任命を見送ったことから始まった。第一報は一般紙でなく日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」(同10月1日付)だった。このことが皮肉にも同問題の本質を浮き彫りにしている。
「赤旗」に情報を垂れ込んだのは拒否された1人、松宮孝明・立命館大学教授だ。同氏は17年の改正組織犯罪法を巡る国会審議で同法を「戦後最悪の治安立法」などと赤旗張りの主張をしていたことで知られる。
他に拒否されたのは安保法制に反対する会の呼びかけ人(宇野重規・東大教授)や、その反対署名を集めたり(小沢隆一・東京慈恵会医科大教授)、辺野古反対声明を出したり(岡田正則・早稲田大学教授)、名うての「左翼活動家」だ(肩書は当時)。学術会議ではこうした人物たちが委員に推薦される。同会議の「異常体質」が浮き彫りだ。
学術会議はGHQ(連合国軍総司令部)の「日本弱体化」政策の産物だ。わが国に主権がなかった終戦直後の1949年に創設されたもので、科学者が戦争に協力した「反省」のうえに政府から「独立」した立場で政策提言や海外の学術団体との連携などに取り組むとされた時代錯誤組織である。まさに「戦争放棄」の憲法9条学者版。だから安全保障・自衛力の整備を「戦争の準備」と捻じ曲げ拒否してきたのだ。
1950年と1967年には戦争を目的とする科学研究を行わないとする声明を出し、2015年に防衛省が防衛装備品に応用できる先端研究を大学などに委託する公募研究資金制度を発足させると、「政府の研究への介入が著しい」と懸念を表明し、研究の適切さを審査する制度を各大学などに設けるよう圧力をかけた。「国の守り」を阻害する売国・売国民的態度を平然と行う共産勢力の尖兵と化してきたのだ。
そればかりか中国が世界から技術を盗み出そうとする「千人計画」に積極的に協力し、北朝鮮の核開発にも日本の大学の研究者が貢献した疑いすらある。中国が「核汚染水」とレッテルを貼った東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出では、科学的知見に基づく反論を全くしなかった。これこそ学術会議の反国民性を如実に示すものだ。
これは共産党が長年に渡って「学術会議浸透工作」を手掛けてきた〝成果〟である。それを担ってきたのは「日本科学者会議」(日科)という旧ソ連の工作機関「世界科学者連盟」と連携してきた団体で、1965年の創立発起人総会には共産党の野中参三議長(当時)が来賓として出席し、「全面的支援」を表明している(『アカハタ』同年12月5日付)。
日科は第2回全国大会(67年)で日本学術会議への浸透方針を決定している。当時、会員は選挙制で第8期会員選挙(68年)では60人を推薦し47人を当選させ、第9期選挙(71年)では75人を推薦し57人を当選させた。その結果、学術会議会員に占める日科すなわち共産党系の推薦者比率は27・1%に及んだ(思想運動研究所編『左翼100集団』)。もっともこれは共産党系であって日本社会党系や過激派系を加えると、その比率はさらに高まる。現在の浸透率は定かでないが、学術会議の態度を見れば、共産勢力が主導権を握り支配していることは疑いもない事実だろう。

日本学術会議の総会
学術会議法案は生煮え役立たず
現行制度では同会議の会員は210人で任期は6年。選挙制でなく推薦制で3年ごとに半数を入れ替えるが、誰がどんな方法で推薦するのか、不透明きわまりないのである。いずれにしても共産勢力の徘徊を許す悪しき「戦後体制」である。
それをどう変えるのか。報道によれば、学術会議法案は現在の「国の特別機関」から特殊法人に改め、首相が任命する監事や評価委員を置き、業務や財務の監査や活動状況の評価を行い、会員の選任は首相任命をやめ、外部有識者による選定助言委員会を設けて、学術会議が総会で決めるとしている。だが、これで正常化ができるのか甚だ疑わしい。総会で決めるのは以前への逆戻りで共産勢力の徘徊を阻止できない。生煮えの法案だ。
国会論議が始まった4月18日の衆院本会議で日本維新の会の三木圭恵衆院議員は学術会議と共産党の関わりについて言及し、「共産党70年の本に同党が学術会議の設立に一定の役割を果たしたと誇らしげに書かれている…学術会議が特定政党の成果のように語られること自体、政治的中立性を求められる学術会議にとってふさわしくない」と指弾した(産経ネット版4月19日)。まさにその通りである。国民を守らない学術会議は不要である。別途の健全組織を新たに構築すべきだ。
【思想新聞 5月1日号】トランプ関税戦争 日本に「米国か中国か」を迫る/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測