安定的な皇位継承の在り方について与野党・会派が協議を進めているが、薄っぺらな論議であってはならない。歴史と伝統を蔑ろにするようなことがあっては断じてならない。男系皇位継承による「万世一系」を揺るがしてはならない。これを破壊しようとする勢力は何者ぞ。それは日本を革命転覆し太平洋の藻屑に貶めんとする共産主義者に他ならない。このことを銘記すべきである。
共産党が巡らす皇室抹殺の陰謀
日本共産党を見よ。終戦直後の1946年に「日本人民共和国憲法草案」を発表したが、同草案には天皇条項はまったく存在せず、その名のとおり皇室を完全抹殺した「人民共和国」憲法草案だった。現在の「綱領路線」(すなわち宮本賢治路線)が確立した61年の共産党綱領においても、現行憲法について「天皇条項などの反動的なものを残している」とし「君主制を廃止し、反動的国会機構を根本的に変革して民主共和国」を作ると豪語している。
2004年1月の第23回党大会で採択した「改定綱領」においても「一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」と、情勢が熟せば(すなわち革命政権を樹立すれば)廃止すると事実上、宣言している。20年1月の第28回党大会で採択した現行綱領もこれを全面的に継承している。
なぜ共産党は皇室を抹殺しようと企てるのか。それは第1に、唯物史観の立場から「歴史と伝統」を支配階級の所産として一切合切を否定、抹殺しようとするからである。第2に、共産主義の言う「民主主義」とは「人民民主主義」にほかならないからである。人民民主主義とは労働者階級の前衛である共産党の指導の下で、農民や知識人らの諸党派が人民戦線を結んで「連合政権」を樹立し社会主義社会の実現を目指していくことを言う。我々が日常に言うところの「民主主義」とは根本的に違うのである。そこでは権力も権威もすべて共産党に属することになり、それに対抗する権威を全面抹殺するのが反天皇の狙いである。
すなわち共産党は天皇を「反動」と位置づけ、「一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴」とすることに反対し皇位継承を粉砕しようと虎視眈々と情勢が熟するのを待っているのである。その方策として登場するのが「女性・女系天皇」にほかならない。このことを赤裸々に語るのは共産党の熱烈支持者だった奥平康弘・東大名誉教授(15年死去)である。
奥平氏は月刊誌『世界』(04年8月号)で「この(女帝容認)策は、天皇制のそもそもの正当性根拠であるところの『万世一系』イデオロギーを内において浸蝕する因子を含んでいる。男系・男子により皇胤が乱れなく連綿と続いて来たそのことに、蔽うべからざる亀裂が入ることになる」と強調し、「そんな、『万世一系』から外れた制度を容認する施策は、いかなる『伝統的』根拠も持ち得ない」から、女系天皇で伝統根拠がなくなり正統性のなくなった女系天皇の次には天皇そのものの否定論へと〝発展〟していくとし、「女系→廃止」の2段階天皇抹殺論を唱えている(『「萬世一系」の研究 ―「皇室典範的なもの」への視座』)。
共産党は党綱領で「ジェンダー平等社会」の実現を唱えるようになったが(20年)、これこそ奥平氏が示唆した「形を変えた天皇廃止運動」すなわち日本破壊の革命運動なのである。それ以降、ジェンダー平等なる運動がにわかに起こり、自民党まで浸食されてLGBT法を制定し、夫婦別姓で日本の家族の基礎が崩されそうとしている。「民族一大家族」こそ天皇を頂く日本の本質であるが、それが危ういのである。
立憲民主党の辻元清美氏は皇室を「生理的に嫌だ。ああいう一族がいる近くで空気を吸いたくない」と述べていたが、最近は持論を引っ込め女性・女系天皇に賛成している。それはLGBT支援運動、夫婦別姓が「女性・女系」、さらに天皇廃止につながると見ているからであろう。

皇室の方々(令和3年)
読売新聞の愚かな女系天皇の推進論
ところが、読売新聞は5月15日付1面トップに「皇統の安定 現実策を」と題する「提言」を発表し、女性宮家の創設のみならず、その夫・子も皇族とし、「女性天皇に加え、将来的には女系天皇の可能性も排除することなく、現実的な方策を検討すべき」と女系天皇容認論をぶち上げている。恥ずべき容共新聞だ。
銘記すべきは古来連綿として続いてきた、そして続いていく「国民の総意」(憲法第1条)とは過去、現在、未来の日本人の「総意」にほかならないということである。「ある世代が自分たちの勝手な思い込みや薄っぺらな考えで改変することは許されない」(英政治思想家エドマンド・バーク)のが伝統である。守ろう、男系皇位継承による「万世一系」の皇統を。
【思想新聞 6月1日号】トランプの闘い はびこる学内左翼勢力に鉄槌下す/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測