「日本を、世界の人々があこがれと尊敬をいだく、そして子供たちの世代が自信と誇りを持てる『美しい国、日本』とするために全力を尽くす」(安倍晋三第1次内閣所信表明演説=2006年9月26日)
安倍晋三元首相が逝かれて3年が経つ。7月8日が「特別の日」となって以来、この日が来ると、戦後生まれの初の宰相、安倍氏の所信演説の瑞々しい言葉が蘇ってくる。「美しい国、日本」を取り戻す。これこそ継ぐべき氏の遺志である。志ある日本人よ。今一度、この旗標のもとに総結集し、日本を取り戻そうではないか。
この3年、「安倍晋三」という重石のとれた左翼勢力がそこら中で跋扈し、安倍政治の否定に狂奔してきた。共産主義を信奉するマスコミ人、弁護士、政治屋、学者、宗教人らはその本性を露わにし、殺人犯を「英雄」のごとく奉り、宗教弾圧はもとより保守壊滅を目論んできたのである。
国を守る権利と義務を想起せよ
自民党は左翼の思惑にまんまと載せられ保守の矜持をかなぐり捨てて、LGBT法で象徴されるリベラル施策に溺れ、自主憲法制定は掛け声だけで、衆院憲法調査会会長の座を立憲民主党に渡しても平然としている。この体たらくを安倍氏は彼の世で嘆じていよう。
安倍氏はなぜ「美しい国」を標榜したのか。それは戦後日本が美しくない、醜い国になったからだ。先人の流した血と汗と涙を顧みず、人権と個人至上の鵺のような「自分だけ」「今だけ」「モノだけ」の堕落日本人に陥り、自国の守りを他国の青年の血にゆだねても恥じず、国際社会の平和創出にも汗を流さそうとしない卑劣な国となったからである。
このような国を世界の誰が憧れ、尊敬するだろうか。唯物論の国、神を畏れない国、仏心を抱かぬ国ならば、それを歓迎するのは共産国ぐらいのものだろう。いったい誰が涸れ果てたこんな国にしたのか。それは敗戦直後の軍事占領下で日本を二度と立ち上がらせないように歴史と伝統を抹殺し、自らの国は自ら守る権利と義務を蹂躙した「マッカーサー憲法」にほかならない。それを「神よ」とばかりに戴いてきた「戦後体制」の所産である。それゆえに「醜い国」から「美しい国」への転換は「戦後レジームからの脱却」、すなわち自主憲法制定にほかならないのである。
その第一の課題は国防である。国を守るとは、郷土を守り家族を守ることだ。先人が血と涙と汗を流したのもこのためである。その在り様すら戦後憲法は明記しない。こんな国は世界のどこにもない。今、戦火はウクライナから中東へと広がり、少なからず人々は身命を賭して戦っている。
共産中国は太平洋へと「赤い魔手」を広げ、台湾のみならず日本列島を襲わんと虎視眈々と身構えている。それにも関らず改憲に目覚めないから「醜い日本人」と呼ぶほかないのである。その打開は9条改正をおいて他にない。自衛隊の条文明記である。それが喫緊の課題だ。これは「美しい国」への精神革命を意味する。
現行法でも自衛隊の任務は「我が国の平和と独立を守る」ことであり(自衛隊法第3条)、自衛隊に入隊した国民は「服務の宣誓」を行うことが定められている(同53条)。すなわち「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」と宣誓するのである。
これは戦争になれば死ぬことを恐れず任務を全うするという誓いである。個人を犠牲にして他者のために死も厭わない。そのことを自衛隊は服務宣誓で自衛官に求めている。それを戦後日本はまるで他人事のように扱ってきた。自衛隊を憲法に明記するということは、国民全体が服務宣誓を行うこと、その覚悟を共有することを意味するのだ。
すなわち国を守るために、国民を守るために死ぬことは名誉である。肉体の生よりも尊い魂の「生」がある。自衛隊の憲法明記は国民全体がその覚悟を示すことなのである。それゆえに精神革命を意味するのである。このことを国民は想起しなければならない。
元来、国を守るのは国民すべての義務だ。国防義務の憲法明記は世界の常識である。第2次大戦の敗戦国であるイタリアも憲法に「祖国の防衛は市民の神聖な義務である」(52条1項)と明記する。左翼人士らは国民を国民と呼ばず、ことあるごとに市民と呼ぶが、その市民であっても祖国防衛は神聖な義務なのだ。
義務とは「何をしなければならないか、何をしてはならないか」すわなち「よいこと」「わるいこと」を自覚し行動する責務を言う。国を守ることを「よいこと」と自覚し、道徳規範を共有するのが自主憲法制定、改憲の意味なのだ。改憲とはすなわち精神革命なのである。それがあってこそ国が守れるのである。
防衛は国防意識があってこそ可能に
世界の大激動期、まさに「戦争前夜」、いや、すでに中国は「三戦」(世論戦・心理戦・法律戦)を仕掛けているが、「もし安倍晋三元首相がおわすなら日本をどう導かれるか」と心ある国民は問うであろう。「トランプ│シンゾウ」なら断じて戦争は起こさせない。もとより抑止力が必要だが、国を守る国民の精神基盤がなければ画餅に帰す。安倍晋三元首相の遺志を継ぎ、「美しい国」日本を取り戻そう。
【思想新聞 7月1日号】米、イラン核施設を攻撃 世界最大のテロ支援国に核を持たせるな/連載「文化マルクス主義の群像」/朝鮮半島コンフィデンシャル