わが国はいま、分水嶺に立たされている。分水嶺とは雨水が異なる水系に分かれる山稜を指す。どの方向に向かうのか、その選択によって行き着く先がまったく異なる。天国か地獄か。国の存亡がかかっている。そんな分水嶺に我々は立たされているのである。
もはや戦後は終わった。パックス・アメリカーナも終わったのである。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」と古来、言うではないか。その時代の趨勢を見定めないと、わが国、わが民族は奈落の底へと落とされるであろう。
今日の時代の「予言」を想起したい。それは米国の国家情報評議会(NIC)が2008年に発表した「世界潮流2025 変革される世界」と題する報告書である。08年からの20年間は「新秩序への移行期に当たる」として不安定化に向かうと予想し、25年には「第2次大戦後に構築された国際体制はほとんど見る影もなくなる」と予測し、安定性のない多極時代に入り、米国は軍事技術の進歩によって依然として「最も強力な国」であり続けるものの、経済力や国際的影響力の低下を不可避とした。
西太平洋守護には真の日米同盟必須
さらに中国が影響力を増大させ、25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測し、途上国は西欧モデル型(市場経済・民主主義)よりも国家資本主義的な中国型モデルに傾斜し、世界各地で民主化が後退するとの悲観的な予測もした。こうした見方がありながら手をこまねいてきた米国と自由諸国は猛省しなければなるまい。
そうした中、トランプ米大統領が登場し、「ドンロー主義」を唱えている。ドンロー主義とは、1823年に第5代大統領モンローが打ち出した「米欧両大陸の相互不干渉」つまり米国は欧州に、欧州は米大陸に口出ししないというモンロー主義に「それを凌駕した」というトランプ氏の概念を加えた造語である。「西半球における米国の支配力」を不動にするのがドンロー主義と解釈されている。
西半球とは経度0度(英グリニッジ天文台)から西へ地球を半周した地域、その西端は太平洋の真ん中である。わが国は東半球に位置し、トランプ大統領の「ドンロー主義」からみると、その範疇外となる。その意味で実に危うい地域が、日本を含む西太平洋と言わねばならない。
米国防総省が1月23日に発表した戦略文書「国家防衛戦略」では、中国を「あらゆる指標で米国に次ぐ世界第2位の強国」と位置付け、対中抑止力強化に優先して取り組む考えを示し、南西諸島や台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」での防衛力を強化すると表明している(読売新聞1月25日付)。ただし、条件を付けている。それは日本などの同盟国に防衛費を国内総生産(GDP)比5%まで引き上げるよう要求していることだ。南北アメリカ大陸は米国自身で、西太平洋は「米国プラス同盟国」を安全保障の基本としていることを想起すべきだ。
その同盟とはいかなるものか。トランプ米大統領は「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る。でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない」と、かねてから片務条約に異議を唱えてきた。
安倍晋三元首相も「軍事同盟というのは〝血の同盟〟です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし、今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです。…完全なイコールパートナーと言えるでしょうか」(『この国を守る決意』芙蓉社)と日米同盟の在り方に一石を投じ、集団的自衛権の一部行使の道を開いた。
そこからさらに真の同盟関係へと昇華させねばならない。そもそも国連憲章は51条において加盟国が個別的、集団的自衛権を行使することを国家の固有の権利として認めている。個別的自衛権とは1国だけ、集団的自衛権とは他国との共同(同盟)で自衛することを指し、当たり前の普通の国の権利としている。
この「普通の国」に日本が立たねば、日米同盟は成り立たなくなった。そうしなれば西太平洋の安全は藻屑と消える。憲法が立ちふさがるなら、もはやそんな憲法は用なしである。新たな憲法を定めねばならない。
すなわち分水嶺の第1は、日本の国を守らぬ現行憲法を維持するのか、それとも憲法を改正し日本と西太平洋(わが国の排他的経済水域は国土面積の10倍以上)を守るのか、の選択である。
「個」助長させず家族と国を守ろう
国内に目を転ずれば、一部の左派メディアが総選挙の争点を「国か個か」と位置付け、盛んに「個」を強調し、「国」を否定し排除するかのような論調を張っている。すなわち分水嶺の第2は、行き過ぎた「個」をさらに助長させるのか、それとも家族を基礎とした歴史的共同体である国を守るのか、その選択である。
先祖が築いた麗しの祖国・日本を守るのか否か、その分水嶺に立っていることを想起し、子孫に誇れる日本を創建する政治選択を国民に望みたい。
【思想新聞 2月1日号】日本にも繋がる「グリーンランド問題」/三浦小太郎氏インタビュー/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測