「戦術核」で鉄壁の抑止力を(思想新聞9月15日号)

 思想新聞9月15日号に掲載されている「主張」を紹介します。


 北朝鮮の軍事的脅威が逼迫(ひっぱく)してきた。弾道ミサイルを北海道の上空を飛ばし、核実験まで強行した。国際社会に核放棄を依存するだけでは国民の生命を守れない。わが国独自の制裁強化策を実行し、防衛態勢の再構築を図らねばならない。

 北朝鮮は8月29日、弾道ミサイル1発を通常の角度で発射、北海道の上空を通過した後、襟裳岬の東約1180kmの太平洋上に落下した。最高高度は550km、約2700km飛行した。日本の上空通過は通算5回目。予告なしの発射で奇襲攻撃能力を誇示したようだ。

 9月3日には「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験」と称する6度目の核実験を強行した。爆発規模は広島原爆の10倍以上に相当する160キロトンと推定され、山本朋広防衛副大臣は「水爆実験の可能性も否定できない」としている(5日、参院外交安保委員会)。

トマホーク配備で敵基地攻撃能力を

 核ミサイル脅威が切迫してきたのは間違いない。国連安全保障理事会で日米は対北朝鮮石油輸出禁止を提起しているが、中露に応じる気配はない。核ミサイル問題の解決を他国に依存しても何ら進展しない。独自策を考慮しなければならない。

 まず核ミサイル開発の資金源の完全遮断を図るべきだ。日米は制裁対象を増やし、北のマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった中国の丹東銀行などを資産凍結の対象に加えたが、不十分だ。

 2005年、ブッシュ米政権はマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)を取引禁止対象に指定、北朝鮮の資金を押さえて打撃を与えた。同様の資金切断策を実施すべきだ。売上が30兆円のパチンコ業界の北朝鮮系企業が資金源との指摘もあり、国内金融機関の徹底調査が必要だ。

 想起すべきは日本が核ミサイル開発の技術・資金源になってきたことだ。2012年3月、制裁による全面禁輸後もパソコン機器を無承認で北朝鮮に輸出していた在日朝鮮人の会社社長が逮捕されている。また「北朝鮮で製造のミサイル部品の90%は日本から輸出されていた」(03年5月、米上院公聴会で北朝鮮元技師)との証言もある。

 北朝鮮の核施設の元職員は核施設には多数の日本製の機械や設備があったとし、「日本の技術が北朝鮮の核開発を支えたことになる」と語っている。資金援助・技術スパイを断つためにスパイ防止法の制定が急務だ。

 防衛態勢強化は言うまでもない。まずミサイル迎撃能力の向上だ。現行の迎撃ミサイル「SM3」は高度500kmが上限で、今回のミサイルには届かない。防衛省は高度1000km超での迎撃が可能な新型の「SM3ブロック2A」をイージス艦に搭載予定だ。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入も急がれるが、これら迎撃能力の整備でも全土をカバーするのは不可能だ。敵基地攻撃能力敵ミサイル発射装置攻撃能力を保有すべきだ。

日韓の核武装論が米国内から高まる

 今年6月の日米共同訓練で米軍は巡航ミサイル「トマホーク」を約150発撃てるオハイオ級原子力潜水艦「ミシガン」、約30発を搭載するミサイル駆逐艦数隻を展開、約300発のトマホークが北朝鮮の核実験場や地下施設に照準を合わせた。

 だが、初動攻撃で北朝鮮の地下基地を叩くには「トマホークなどのミサイルが1000発程度必要」(元自衛艦隊司令官、香田洋二氏)とされる。トマホークを自衛隊に配備する必要がある。

 さらに核政策の見直しが不可避だ。米国の「ブルッキングス研究所」のトーマス・ライト上級研究員は、北朝鮮が核放棄する見通しがないなら、日韓の核武装も容認し、局地的な軍事衝突も辞さない構えで今後数十年にわたって北朝鮮の「封じ込め」を図るべきと主張している(産経新聞9月3日付)。

 09年6月にはマイケル・グリーン元米国家安全保障会議アジア担当上級部長が米下院外交委員会の公聴会で、1980年代に北大西洋条約機構(NATO)はソ連の戦域核ミサイル(SS20)配備に対抗し、西独やオランダに米国の巡航ミサイルなどを600基近く配備してソ連の戦域核を封じ込め、冷戦終焉に至らせたと指摘、日本も米国の核ミサイルを自国領土に配備し、北朝鮮への核抑止力とすべきと主張している。

 こうした提言に真摯に向き合うべきである。非核三原則のうち何ら法的拘束力がない「持ち込まず」を放棄すべきだ。日韓はお互いの誤解を生まないために連携して同時に「核持ち込み」政策に転換し、北朝鮮に対抗する戦術核を両国内に配備する必要がある。

 さらに核抑止力を高めるために有事に米国から核弾道の譲渡を受ける「核兵器共有政策」(ドイツ、イタリアなど欧州非核5カ国が採用)を導入すべきだ。

 その核抑止力を最大限に発揮できるのは原子力潜水艦だ。核ミサイルを常時、搭載して深海を巡回させておくだけで抑止力となるからだ。

 いずれにしても小手先の防衛論議では済まされない。地下シェルターの整備など民間防衛も推進すべきだ。防衛態勢を再構築し、わが国の平和と安全を守るべきである。

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