中国共産党(中共)は独裁国家の毒牙を一層、露わにしてきた。そのひとつが日本維新の会の石平参院議員に対して「反外国制裁法」なるものに基づく制裁措置を実施し中国国内の財産凍結やビザ(査証)の発給を行わないと発表したことだ。石氏が台湾や歴史、香港などの問題に関して長期間にわたり「誤った言論をばらまいた」ことを制裁理由に挙げている。言語道断と言うほかない。
石氏は中国出身だが、日本国籍を取得した、れっきとした日本国民である。そればかりか「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である国会」(憲法)に公選を経て議席を有する公人である。氏はその言論をもって施策・法案の成立に寄与し、日本国民の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(同)を守っている。その言論を制裁対象とするのは日本の主権を侵害する、許されざる蛮行である。
中共の間接侵略断固粉砕しよう
中共の弾圧・横暴は間違いなく世界中に広がっている。反外国制裁法だけでなく、さまざまな手を使って自国民のみならず他国民にも弾圧の魔手を広げ、世界支配を企てているのである。その手法は巧妙かつ狡猾である。外国人に対してもそうだから中国人に対しては何の遠慮もなくスパイ・破壊工作員に仕立てあげるのである。
胡錦濤前国家主席は1999年に「西側軍事科学技術の収集利用に関する計画」を作成し、情報収集機関を4000団体設立し、あらゆる階層の華僑、華人に情報収集を命じた。2010年には国防動員法を施行し、本国を離れていても中国国籍保持者である18~60歳男性、18~55歳女性の全てに中共政権が有事と認めた際の軍務協力を義務づけたのである。
習近平時代になるとさらに過激化し、15年に制定した「国家安全保障法」は、国民に対して国家安全当局者に協力し命令・指示に従うこと、中国企業に対して政府の要請に応じて情報を提供しアクセスすることを義務付けたのである。
17年に制定した「国家情報法」は、国民に対して国家のインテリジェンス活動(諜報活動)を支援する義務があるとし、諜報活動を行う機関は関係機関や組織(企業など)、国民に対して必要なサポートや支援、協力を要求することが許されると規定した。トランプ米大統領はかつて「中国人を見たらスパイと思え」と述べたが、まさにその通りなのである。中国人は「スパイ」を義務付けられていると言っても過言ではない。
わが国には在留外国人が約377万人在住しており、うち中国国籍を有する中国人は87万人に達する(24年末)。中国人は毎年5万人規模で増加しているのである。こうした在留中国人は有事の際、中共の指令に従ってスパイ・軍事要員となり、反日戦争に駆り出されるのは必至である。
例えば、08年の北京五輪の際、中共のチベット弾圧に反対し世界各地で聖火リレーへの抗議行動が行われたが、これに対抗して中共は同年4月、約4000人もの中国人留学生らを長野市に動員し、聖火が通る繁華街を中国国旗で埋め尽くし、これに異議を唱える日本人に暴力まで振るった。これは国家動員法の小手調べだったのである。
日本国籍を取得した中国人は数十万人に上ると見られている。彼らは日本国籍を得た時点で在日中国大使館(領事館)に「国籍喪失届」を提出し、中国国籍離脱手続きを行うことになっているが、中共がそれを認めているかは不明である。中国国籍を離れても中国国内の家族・親族を監視し、脅迫して手先化する可能性が高い。それができないときに石平氏のように反外国制裁法を口実に制裁するのである。
オーストラリアのクライブ・ハミルトンが『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)で指摘するように関節侵略はすでに始まっていると言うべきだ。これに対して国家たるものは自衛権を発動する。それが世界の常識である。自衛権は国際法(国連憲章51条)で認められた独立国の固有の権利だからである。国家機密や防衛機密を守るのは自衛権の現われなのだ。それでどの国も、刑法や国家機密法に「スパイ罪」を設けているのである。
「防諜は自衛権の発露」が世界常識
例えばスウェーデン王国は世界で最初に情報公開法を設けた国だが、刑法典第19章「王国の安全に対する罪」に「スパイ罪」を設け、「(スパイ活動が)重大であると解すべき場合は、『重スパイ罪』として4年以上10年以下の有期拘禁又は終身拘禁に処する」(第6条)とする。米国は連邦法典794条、英国は国家機密法1条にスパイ罪を設け、最高刑で臨む。ところが、わが国にはスパイ罪が存在しない。スパイ行為を取り締まる法律そのものがない。まさに欠陥国家なのだ。
民主国家は罪刑法定主義が基本で、あらかじめ犯罪の構成要件や刑罰を定めておかなければ、いかなる犯罪も取り締まれない。スパイ罪がなければスパイ活動は〝合法〟と見なされ、それでわが国は「スパイ天国」と呼ばれてきた。こんな丸裸国家は世界に例を見ない。直ちにスパイ防止法を制定せよ。
【思想新聞 10月1日号】スパイ防止法で日本とアジアを守れ 神奈川 勝共遊説団と共催でシンポ/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測