安定的な皇位継承の在り方について政府の有識者会議は2021年に①女性皇族が婚姻後も皇族身分を保持する②旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える―の2案を示し、これに対する与野党・各会派の考えが出揃い、森英介衆院議長は国会の取りまとめ案を提示する見通しである。
結論から言えば、男系皇位継承による「万世一系」を揺るがさない皇室典範改定案でなければならない。左翼勢力は世論調査で決めよと言わんばかりに「国民の総意」(憲法第1条)を口にしているが、国民の総意とは過去、現在、未来の日本人の「総意」であって「ある世代が自分たちの勝手な思い込みや薄っぺらな考えで改変することは許されない」(英政治思想家エドマンド・バーク)。それが厳かな伝統であることを想起すべきだ。男系皇位継承は世界に誇るべき日本の伝統なのだ。
「国の個性」に想いを馳せよう
戦後、「歴代内閣の経済指南番」と呼ばれ、「勝共運動を応援する会」の座長を務めてくださった木内信胤先生(元世界経済調査会理事長)は、「昭和30年代からずっと国の在り様を考え続け、日本も世界の国々も、すべて『国の個性』に生きてこそ、よき世界が実現するとの確信に至った」と述べておられる(『國の個性』プレジデント社、1986年刊)。達観されたお考えである。その日本の「国の個性」を体現するのが皇室であり、男系皇位継承であり、それがすなわち国柄である。
近世欧州で啓蒙思想が闊歩した時代、機械的唯物論者は人間社会を機械のように捉えて人をその部品に見立て、国柄も民族性も認めず、ただ単なる「人間」と呼んだ。これに対してフランスの思想家が「私は人間を見たことがない。ギリシャ人やアラブ人、エジプト人なら見知っているが」と語った逸話が残る。
それを花で言うなら、我々は「花」を見たことがないのである。晩春から初夏のこの季節は花々が咲き誇るので満月は「フラワームーン」と呼ばれるが、我々がそれを目にするのは「薔薇の花」、「チューリップの花」、「ツツジの花」、「藤の花」といったようにそれぞれに個性がある花であって、ただ単なる「花」を見ることは決してない。植物学的に花とは「種子植物の生殖器官」のことを言い、それが普遍的な特徴であるが、その形や色合い、咲く季節など現れ方が個別的なのである。
人もまた然りである。もとより普遍的な「徴表性」(事物が共通に持つ必然的な性質)は持つ。18世紀にスウェーデン人の学者、リンネが「生物分類の階級」を示し、ホモ・サピエンスを動物(界)、脊索動物(門)、哺乳(綱)、サル(目)、ヒト(科)、ヒト(属)、ヒト=サピエンス(種)の7単位の特徴で捉えた。サピエンスはネグロイド(黒色人種群)、コーカソイド(白色人種群)、モンゴロイド(黄色人種群)、オーストラロイド(黒褐色人種類)の4大人種に分類され、各民族が存在する。
それも全ての「生物分類の階級」において陽性(雄、男)か、陰性(雌、女)として現れ、それを基盤に人は全て「天上天下唯我独尊」の個性を持っている。すなわち徴表性(勝共思想では「普遍相」と呼ぶ)は個性(「個別相」)をもって顕現する(「個性真理体」)。したがって個性を消し去ることは即、存在そのものを消し去ることを意味する。
国もまた然りと言わねばならない。憲法前文は「人類普遍の原理」や「普遍的な政治道徳の法則」を謳うけれども、「国の個性」がなければ無きに等しい。自由や民主主義、人権などは確かに普遍性があるが、それだけでは国は存在しえない。唯物論を信奉する左翼勢力はそこで思考を止め、「国の個性」へと思いを至らせないのである。
なぜかと言えば共産主義は「精神は物質の産物」であるという唯物論に立脚して人間(精神)は環境(環境)によって作られるものとし、まず環境が必要であると主張して「革命的人間」を出現させるためにデモや暴動などを惹起させる。個性という概念は彼らの思想から全く生まれてこない。陽性、陰性という男女の概念とも無縁なのである。ましてや「国の個性」など露とも考えない。だから彼らは平然と女性・女系天皇を唱える。それも皇統を抹殺する手段として、である。
「反天皇」思想は唯物史観に基づく
共産党を筆頭とする左翼勢力は唯物史観の立場から「歴史と伝統」を支配階級の所産として一切合切を否定、抹殺しようとする。彼らの言う「民主主義」とは「人民民主主義」のことで、それは労働者階級の前衛である共産党の指導の下で農民や知識人らの諸党派が人民戦線を結んで「連合政権」を樹立し社会主義社会の実現を目指していくことを言う。我々が日常に言うところの「民主主義」とは根本的に違うのである。そこでは権力も権威もすべて共産党に属することになり、それに対抗する権威を全面抹殺する。「国の個性」を抹殺して国そのものを滅ぼそうとするのである。それが反天皇の狙いであると知らねばならない。
我々はこういう視点から「国の個性」を守ること、すなわち男系皇位継承による「万世一系」を支持するのである。
【思想新聞 6月1日号】米中首脳会談 圧倒する米国 身構えるだけの中国/真・日本共産党実録/文化マルクス主義の群像/共産主義定点観測