麗澤大学教授・八木秀次氏「子を産み育てる婚姻制度の趣旨の再認識が必要だ」

 

世界思想 6月号 (平和大使協議会発行) を刊行しました。今号の特集は「LGBT・同性婚合法化を巡る5つの論点」です。

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今年2月、「同性婚を認めないのは憲法違反」として13 組の同性カップルが国を相手に4地裁に一斉提訴し、4月半ばから審理が始まった。しかし、LGBT(性的少数者)に結婚の門戸を開くことは、男女に限ってきた子供を生み育てるべき共同体としての婚姻制度の形骸化に繫がる認識が必要だ—これまでジェンダーフリーや夫婦別姓、最近の LGBT 運動の問題でも果敢な発言で保守論壇をリードする八木秀次・麗澤大学教授に話を聞いた。(文責編集部)

麗澤大学教授 八木秀次

――同性婚訴訟の審理が始まったが、この訴訟をどう見るか?

 よく聞かれるが「(原告が)確実に負ける」と答えている。

 彼らは負けるのを覚悟でいわば政治運動として世間の認知度を高めるため提訴している。「なぜ同性婚が認められない」という主張がメディアを通じてできるからだ。

 

 これまで憲法24条には確立した解釈があった。「両性の合意」という文言から、「婚姻は男女両性の合意によるもの」と解釈されてきたが、最近になって学界でも極めて少数説だった「同性婚を容認する」との考えを、少なからぬ学者が言い始めた。

 「24条の両性の合意のみに基づいて成立とは、イエ制度からの解放を示唆し、何も同性婚を禁止する趣旨ではない」という解釈だ。さらに憲法13条の「個人の尊重」を持ち出し、「同性で結婚したい意思を実現できないのは、個人の尊重に反する」という屁理屈が展開されている。

 

 司法試験の教科書として定評があるとされる『憲法学読本』は憲法24条の解釈について、「異性間の婚姻を前提としているように読める。しかし同性間婚姻を禁止する趣旨まで含むものではなかろう。そうだとすれば憲法13条を根拠として同性間の婚姻を認めることは可能」とする。執筆者は安西文雄・明治大法科大学院教授だが、何と浅薄な理解か、と呆れる。

 「婚姻制度とは何か」についての考察が全くないからだ。

 単に、当事者同士の関係だけよければいい、という考え方だ。そうした理解であれば、同性婚も異性婚も何でもあり、ということになってしまう。

 

 だが婚姻制度そもそもの趣旨はそういうことではない。基本的には子供を産み育てるための制度として作られている。

 それで同性愛者の関係と、「結婚」とは趣旨が異な理、別のカテゴリーとして考えるのであれば分からなくもないが、婚姻の領域に入れてはいけない、と主張している。

 

子の福祉のため離婚しにくい婚姻制度

 ――夫婦別姓とか事実婚という議論に、子供の福祉が置き去りにされているのではないか。

 婚姻を法制度にしているのは、男女の間柄であったとしても、事実上の関係や結びつきだけならば、その関係性は弱い、あるいは脆いからだ。これまた人類の経験の中でと言えるものだが、2人の関係性や結びつきを強固にするために、敢えて国に届け出る、つまり社会が公認する。2人の関係を社会が公認し、届け出だけでなく様々な制度の中で「夫婦」「カップル」として、広く社会一般に認知される。

 このことによって、関係性は強化される。簡単には別れられない。別れられないのは、その間に生まれる子供の福祉を考えてのことだからだ。

 結婚は紙切れ1枚のものではない。確かに届け出は紙切れ1枚かもしれないが、そこから派生して2人の関係性や間柄が強化されるものだ。

 だから、事実婚よりも法律上の婚姻の方が別れる率は低い

 

 結婚や婚姻制度が一体どういうもので、どういう効果があるのか、についての再認識が必要だろう。

 

 単に好きな者同士がくっついて、一緒に住んでいるだけではなく、次世代を産み育てる制度であり、そのための共同体を築いている。そうしたことが法的にも認知され、社会も受け容れる。そのために、結婚に他の人間関係よりも優位性を持たせて、特別に保護している。法的にも多くの優遇策を設けているのだ。

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 記事全文は「世界思想 6月号」(平和大使協議会発行)をご覧ください。

【八木秀次】昭和37年、広島生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治研究科博士後期課程研究指導認定退学。平成14年、正論新風賞受賞。慶應義塾大学講師、高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。日本教育再生機構理事長、教育再生実行委員会議委員など。法制審議会民法(相続関係)部会委員を務めた。『憲法改正がなぜ必要か』ほか著書多数。

 


 

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