9条改正こそ平和を守る方策だ

 

 北方四島の「ビザなし交流」の訪問団に顧問として参加した丸山穂高衆院議員は「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」と発言した。論じるにはあまりにもお粗末な発言である。

 我々が考えねばならないのは、なぜこういう妄言が生まれるのか、ということである。

 そもそもそんな軍事力をわが国は持ち合わせていない。妄言は国際軍事情勢や戦争の現実、軍事力の何たるかといった「軍事」について考える思考を遺棄した、これもまた憲法9条の裏返しの発想と言わねばならない。

 

 国際政治学者の三浦瑠麗氏は『21世紀の戦争と平和│徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)の著作の中で、「徴兵制が平和に向かう逆説」を問うている。

 それによれば、安定した民主国家が安易に戦争を起こしたり、市民が好戦的姿勢に走ったりするのは「実際に戦場に派遣されて戦う『血のコスト』の負担が、志願兵制下で特定の社会層が集まる軍に偏ってしまって、圧倒的多数の有権者や政治家は自ら血を流すことを想定していないから」だと指摘している(産経新聞4月27日付インタビュー)。まさに丸山氏がそうではないか。

 これに対して徴兵制は国民が自ら血を流すことを想定するので、安易に戦争は起こせない。徴兵制は一見、平和を脅かすように見えるが、実際はその逆で安易な戦争を防ぐというわけだ。

 

欧州諸国は徴兵制復活で平和を守る

 

 欧州では戦後、英国を除いてほとんどの国が徴兵制を実施していたが、冷戦終焉後に廃止した。

 だが、ウクライナはロシアのクリミア併合を受け2014年に復活。15年にはロシアに隣接するバルト三国のリトアニア、昨年1月には中立国のスウェーデンが8年ぶりに復活させ、初めて女性も対象にした。

 

 いずれもロシアの軍事脅威に備えるためであって、戦争を仕掛けるものではないロシアの野望と巨大な軍事力から国を守るには、国民挙げて戦争を防ぐ意思表示と具体的な戦力が必要なのである。

 平和を守る「血のコスト」を国民等しく担う。それが抑止力となる。マクロン仏大統領も徴兵制の復活をとなえるが、それは相次ぐテロの脅威に備え、国民の団結を強めるためだ。

 

 このように先進民主主義諸国において軍事は戦争のためでなく、平和のためにある

 

 丸山氏は東大卒の元経済官僚で、典型的な戦後の知的エリートの一人である。伊藤俊幸氏(元海将=金沢工業大学、虎ノ門大学院教授)によれば、こういう戦後エリートは憲法9条で「戦争放棄」がうたわれているとして、「戦争」に関する学びがない。大学では国際社会で常識とされる戦時国際法すら教育されない。

 そういう無知を背景に「国際紛争を平和的に解決するため、日々懸命に努めている自衛隊員や防衛省、外務省の職員に対する冒涜ぼうとく的な発言」が生まれるのである(産経5月17日付『正論』)。

 

 無知なのは「戦争発言」だけでなく「9条信仰」も同類である。戦後エリートを担う言論人にも無知を平気と唱える人々が少なからず存在する。

 

 例えば、沖縄本土復帰記念日の5月15日、毎日新聞は「沖縄と日米地位協定 国は不平等の現実直視を」との社説を掲げ、「(欧州では)日本と同じ第二次大戦の枢軸国だった独伊も含め、駐留米軍に国内法を適用することを原則としていた」とし、「不平等」の是正を唱えている。沖縄タイムスはすでに5月6日付社説で「米軍に国内法適用せよ」と叫び、朝日も18日付社説で地位協定を俎上(そじょう)に載せている。

 

 

「血のコスト」を共有する同盟関係

集団的自衛権の否定は、国際社会での孤立を招きかねない。


もとより日米地位協定で見直すべき点があれば、是正されるべきである。だが、「不平等」とあげつらうのはお門違いである。本当の不平等はどこにあるのか。トランプ米大統領は大統領予備選で盛んにこう述べていたことを想起しておくべきだ。

 「もし日本が攻撃されたら、我々はすぐに第3次世界大戦を始めなきゃならない。いいかい?で、我々が攻撃されても日本は我々を助けなくていい。公平じゃないだろ?」

 

 日米安保条約は米国民だけに「血のコスト」を求める片務条約である。これに対して独伊が加盟する北大西洋条約機構(NATO)は共同防衛で「血のコスト」を分かち合う。有事には独伊軍はNATO軍の指揮下に入る。米軍が駐留していても外国軍隊でなくNATO軍。それに基づく地位協定である。

 

 加えて独伊とベルギー、オランダは米軍の核兵器を自国内に配備し、有事にはそれを運用する「ニュークリア・シェアリング」(核兵器共有政策)で、核兵器でもスクラムを組む「血の同盟」なのだ。

 不平等の是正を言うなら、まず日米安保条約を改正し双務条約にすべきだ。

 それには憲法9条を改正し集団的自衛権行使を合憲とせねばならない。わが国のように徴兵を憲法で禁止されている「苦役」(18条)と解釈し、「違憲」とするような国は平和を守れない。

 

 戦争発言と9条信仰。どっちもどっちの無知の極みだ。いずれも戦後憲法の所産である。

 

 

思想新聞「LGBT・同性婚合法化を巡る5つの論点」6月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)

6月1日号 米中貿易戦争「自由か共産か」の体制間競争だ / 新憲法をつくる国民大会に300人/ 主張「9条改正こそ平和を守る方策だ」 etc

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