評論家 石平 氏「文明社会の敵・共産中国と対峙せよ」

世界思想 11月号 を刊行しました。今号の特集は「中国建国70年 その野望とほころび」です。

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30年前、ソ連共産帝国が滅び東西冷戦が終結した時、天安門事件を経た中国共産党政権は「改革開放」路線の下で東欧のような「政治の自由化」が起きるという楽観はものの見事に裏切られた。英国より返還された香港の「1国2制度」の命運が尽きようとしている状況下で、自由と民主主義の価値を持つ諸国はどう関わるべきかについて、稀代の中国ウォッチャーである石平氏に話を聞いた。(文責編集部)

評論家・拓殖大学客員教授 石 平 

――香港情勢についてどう見るか?

 香港での抗議運動のきっかけは、香港政府が提出した「逃亡犯条例」。

 これは香港当局に逮捕された人が無条件で大陸に引き渡されるため、香港の法制度が完全に崩壊し、大陸と変わりなく中国共産党の弾圧が完全に香港を覆うことを意味する。
 
 それに危機感を抱いた若者・市民らが立ち上がり撤回を要求。しかし香港政府が拒否し、北京政府の指導下で、警察を使い弾圧。そこで対立が深まり、今は単に条例案撤回だけでなく、香港の直接選挙制を含め民主化を求めてなどの「5大要求」で運動がますます広がっているという状況だ。香港市民が広く参加して最大規模が200万人まで膨れあがった。
 
 その背後にあるのは1997年の返還以来の20年以上にわたる「1国2制度」が事実上形骸化し、香港の民主主義も法治も破壊され、共産主義的教育を香港人に押しつけ自由を奪う、中国共産党の全体主義的な「間接統治」への「反抗」の高まりだ。

 このままでは香港は完全に沈没するとの危機感から、香港の市民は立ち上がっているのだ。

 

香港市民の「雨傘革命」以上の危機感

――「雨傘革命」(2014年)と比較してどうか?

 

 5年前の「雨傘革命」はあくまで学生を中心とした運動。今回の民主化運動は、さらに広がりを見せた市民運動となっている。雨傘運動は一旦挫折した形で、さらにもう一段高いレベルの、全市民参加型の大規模な運動となった。いわば「雨傘」の延長上にあるが、さらに質的にも規模的にも新局面へ展開している。
 
 香港市民の「危機感」も、明らかに「雨傘」の時以上のものだ。「首長公選」が問われた「雨傘」の時はまだ、民主主義における市民の選挙権という話であったが、今回の「逃亡犯条例」になると、全ての人の人権が脅かされることになるわけだから、「雨傘」当時よりいっそう危機感が高まるのは当然だろう。

 
 香港の「1国2制度」はもう死んだ、終わったと見るほかない。さらに今後、香港市民は中国共産党に直接弾圧されるようなこともありうる。

 

 

――日本での香港市民へ支援を呼びかける集会に対し、露骨に妨害する中国人の集団が東京でも現れた。

 世界的には日本も含め米国や欧州で支援したりと、香港の民主化運動に理解を示す人は多い。

 だが海外在住の中国人らを動員して、香港の抗議運動を誹謗中傷したり、支援運動を潰そうとする動きは中国共産党の常套手段だ。大阪でも、香港の自由を訴える人が現れると、中国人が集団で押し寄せてきて罵声を浴びせている。

 そうした中国人の姿に、中国がますます「絶望の国」にしか見えない。

 海外在住中国人は真実が分かっているはずなのに自ら「転んで」中国共産党の手先になる。私はそこに、一種の「救いがたさ」を感じるのだ。

 

 

台湾と「自由の海」を守るべき日米同盟

――「今日の香港、明日の台湾」と台湾問題への展望は。

 香港は英国の植民地だったが、台湾は、自分たちの領土と軍隊と政府を持つれっきとした独立国家だ。しかも選挙で元首(総統)を選ぶ民主主義国家。その意味で、完全に自由と民主主義の価値観を共有する国家群の一員だ。

 

 それを、中国は台湾を自分の領土だと主張し、「台湾併合」を強行しようとしている。
 

 

 まず世界、自由主義社会は、民主主義国家の台湾が中国共産帝国に呑み込まれることを断固として拒否し、許してはならない。
 
 

 もう一つは、台湾の地政学上の重要な問題だ。

 もし台湾が併合され中国共産党支配になれば、台湾に中国の軍事基地が置かれると、日本の安全保障、ことにシーレーンの安全が完全に破壊される。
 
 

 民主主義の価値観を守る意味、そして日本民族の存続を考える上でも、中国の台湾併合は絶対に阻止しなければならない。

 

 日米はかつて、共産中国と国交樹立するため台湾を見捨てた。

 だが真に日米同盟を機能させるためには、「日米台同盟」にすべきだ。

 

 日本も米国もいずれ台湾を国家として認め国交を正常化し、同盟国として手を組むことが東アジアの平和と安定にとって重要になるのだ。

 

 

 

 

 記事全文は「世界思想 11月号」(平和大使協議会発行)をご覧ください。

【石 平】1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年に来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。平成20年より拓殖大学客員教授。

 


 

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