「コロナショック」で問われる緊急事態への対応。一体的な危機管理体制の構築が急務

世界思想5月号を刊行しました。今号の特集は「憲法改正が必要なこれだけの理由」
ここでは特集記事の一部 「一体的な危機管理体制の構築が急務」 についてご紹介します。

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 新型コロナウイルス問題で、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正案が成立した。共産党をはじめとした左派系政党、並びにマスメディアの大半は、これを一斉に批判した。

 たとえば共産党の塩川鉄也衆議院議員は、「(特措法改正は)人権の幅広い制限をもたらし、その歯止めが極めて曖昧で問題だ。このような法案をわずか3時間で採決するなど許されない」
 「安倍政権に緊急事態宣言の発動を可能とすることは断じて認められない」(しんぶん赤旗、3月12日)などと述べた。緊急事態宣言を行うのが安倍政権なら、なぜ「断じて認められない」のかは不明である。
 

 時事通信は「大幅な私権制限」との見出しをつけて報じた。本文を読むと、「首相の独断で、集会の自由など憲法で保障された権利が侵害されかねない」「政府の対応を批判する言論が封殺される可能性もある」など、左派系弁護士(元日本弁護士連合会)の宇都宮健児氏の発言が引用されていた。なお、宇都宮氏は2014年の東京都知事選挙に立候補しており、共産党、社民党、緑の党が支持した人物である(16年の都知事選では野党が鳥越俊太郎氏に一本化し立候補を見送った)。

 一方で、実際に国民の生命・身体に責任を持つ知事や医療関係者らは、改正案の必要性を理解しているようだ。
 

 上述の時事通信の記事の本文中にも、関東地方で「新型コロナ患者の治療に携わる男性医師」が登場し、「現場の医療関係者が頑張るためには法的裏付けが必要だ」として改正案の必要性を訴えている。
 

 北海道では鈴木直道知事が緊急事態宣言を発令し、道民に外出自粛を呼び掛けた。この点についても医療関係者らは「危機感の共有につながる」(北海道新聞2月28日)などと評価したが、憲法学者らは「法的根拠もなく行うのは非常に危険だ」(同)などといって批判した。
 

 医療関係者らは、現行の体制の中、いかに国民の生命を守れるかを考え悪戦苦闘している。一方で、憲法学者らやマスメディアは改正法を「法的に問題だ」といって批判する。どちらがより国民を守るための意見なのか。よく考えるべきである。

 

 現場で必要な措置が「法的に問題」というならば、法学者らはなぜ「法」を批判しないのか。なぜ「法」に合わない措置だけを批判するのか。彼らは憲法を含む法の改正に対しては一斉に批判するが、現状の法体系の不備については決まって口をつぐんでしまう。
 

 それが彼らの正義感からくるものなのか、それとも思想的背景からくるものなのか、あるいは法学者のメンツによるのかはわからない。ひょっとしたら法学者の世界では、憲法に始まる現行法体制への批判は、学者としての地位を下げるものなのかもしれない。そう思わざるを得ないほどに、彼らの論調は一方的だ。

 

 いずれにせよ、国民の生命・身体という重要な権利を真に守るのは一体誰なのか、政府なのか、現場の医療関係者なのか、それとも法学者なのか。国民はこの機会に、改めて考えるべきだろう。

 

 

 

脆弱な日本の危機管理体制

 
 日本の危機管理の脆弱性はこれまでにも幾度となく指摘されてきた

 日本の内外では、今回の新型ウイルス問題以外にも、様々なリスクが存在する。たとえば北朝鮮の核・ミサイル開発、中国による国家的サイバー攻撃、異常気象による大規模自然災害、国際的なテロ活動などだ。
 

 しかし、これらのリスクに対応する法制度はバラバラである。自然災害には災害対策基本法、テロ攻撃には国民保護法、サイバー攻撃にはサイバーセキュリティ基本法、感染症には改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法などといった具合だ。要するに、根拠法や対応する省庁がバラバラなのである。

 

 国民保護法は総務省の消防庁が主に対応する。インフルエンザでは主に厚生労働省が対応する。では、新型ウイルス問題で混乱する日本に北朝鮮がミサイルを発射したら誰が責任をもって対応するのか。政府は、両省を統括的に指示することはできるのか。現状では、そうした事態は全く想定されていないというのが実情である。
 

 この問題の最大の原因は、日本国憲法に緊急事態条項が欠けている点にある。

 緊急事態条項とは、上記のような国家的な緊急事態が生じた場合に、政府が一部機関に大幅な権限を与えたり、一定の私権制限を可能にするものである。日本国憲法には存在しないが、ほとんどの国の憲法に明記されている。そして緊急事態宣言が発令されれば、国民の生命・身体を保護するという目的のもと、各機関を横断する総合的な管理体制が敷かれることになる。
 

 左派勢力はこの条項の創設に強く反発する。その理由は彼らの思想的背景と真っ向から対立するからだ。その思想とは、共産主義思想における階級闘争論である。国家権力は常に悪であり、国民は善であるという思想だ。
 

 

 しかし今回の新型ウイルス問題では、一部の国民が転売目的でマスクを買い占め、医療機関や介護施設のマスク不足が深刻化した。また、行政による自粛要請を無視して大規模イベント開催を強行する動きもあった。

 緊急時に国民が常に善である保障はない。日本も通常の国家として、緊急事態条項を制定することが必要である。

 

 

(「世界思想」5月号から抜粋)

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