世界思想2月号を刊行しました。今号の特集は「トランプ現象とは何か~米福音派の真実~」です。
ここでは特集記事の一部 「福音派の源流と現状」 についてご紹介します。
リベラルとの「内戦」を担う保守派の運動組織「福音派」
米国を「根本的に違った国に変えたい」と指向する勢力とは、民主党に結集する左翼リベラルだ。
彼らは西欧マルクス主義、フランクフルト学派が提示した内容に沿って「アイデンティティ」戦略を展開する。
これは人々を所得、人種、学歴、性別など一定の共通項を持ったグループに区分し、それぞれに政治的メッセージを提供するものだ。
元来、民主党は、選挙を人種・性別グループにわけて戦う手法を採用してきたが、近年は特にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発達がその取り組みを後押ししている。
「#Me Too」(女性の権利を訴える)や「#Black Lives Matter」(アフリカ系有権者の生命の尊厳を訴える)運動などがその代表例だ。
それらは「差別なき社会」の実現を掲げつつ、キリスト教的価値観、建国理念の否定にまで突き進んでいる。
このままでは米国が米国でなくなってしまう。
世俗化、非キリスト教化、建国理念の危機が迫っている。その認識を共有する共和党保守派の運動組織が「福音派」なのだ。
近代の福音派の流れはイギリスから米国へと伝わった。イギリス聖公会の司祭だったジョン・ウェスレー(1703ー91)から始まり、新天地アメリカで最大のプロテスタント教会となったメソジスト教会もその一つだ。本来、聖霊の働きを強調していたメソジスト教会も、次第に霊的な雰囲気が薄れ、知的な面を強調する伝統的な教会の一つになっていく。すると、聖霊の先導こそが聖書に忠実な信仰であると考えた人々がメソジストの革新を目指して「ホーリネス会」をつくった。このように福音派とは絶えず更新されていく概念でもあるのだ。
現在、全世界で福音派は5億人に達すると言われている。これが20世紀の100年間、いや過去50年間に起こったのである。近現代が宗教から離れて世俗化する時代であったというのは一面的な見方に過ぎない。一方では信仰の本質に立ち返ろうとする福音派が、米国のみならず、南米やアフリカなど世界中で伸長した時代でもあったのだ。
トランプ大統領は、このような「伝統的な教会の凋落」と「福音派教会の興隆」を背景に生まれてきた。
福音派は、その敬虔な信仰ゆえに、米国をキリスト教と建国精神から引き離す左翼リベラルに徹底して抵抗する。
米国は、信仰によってできた国だ。
キリスト教信仰を失えば、米国は米国でなくなってしまう。
問題は、信仰という視点で米国を見つめる日本人がどれほどいるか、ということだ。
(「世界思想」2月号より )
◆2021年2月号の世界思想 特集【トランプ現象とは何か~米福音派の真実~】
Part1 米福音派の源流と現状
Part2 建国精神をめぐるトランプ・福音派の闘い
Part3 同性婚合法化、人工妊娠中絶・・・結婚・家庭の価値を守る戦い
Part4 行き過ぎた個人主義や伝統否定が孕むリスク
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