安倍元首相暗殺事件の真相究明の行方は?

「世界思想」9・10月号から、「安倍元首相暗殺事件の真相究明の行方は?」の記事を紹介します。

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安倍氏の評価を死してなお貶めたい怨念

 7月8日の参院選応援演説中に安倍晋三元首相が銃弾に倒れた事件で、現場で身柄を確保された山上徹也容疑者。

 山上容疑者が演説中の安倍氏の背後から鉄パイプで作った手製の散弾銃から2回「発砲」された際、2〜3秒間の間隔があったにもかかわらず守れなかった。警備体制の杜撰さにより暗殺を許してしまったことは、警察史上に残る「大失態」というほかない。

 確かに、現職ではなく元首相で警視庁から同行するSPも最低限の人員だった。管轄の奈良県警も警備の瑕疵をなかなか認めず、事件直後の記者会見も自己保身のような言動が目立った。

 こうした中で、メディアの関心は、安倍元首相の暗殺事件というよりは、その「暗殺実行犯」とされる山上容疑者の複雑な家庭環境に注目が集まり、母親が信仰する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への高額献金で家庭が崩壊した、との報道以後、メディアは連日、「旧統一教会と政治との関係」について、まるで「魔女狩り」のような追及に汲々と明け暮れている。あげくの果てには、テロの犠牲者であり被害者であるはずの安倍元首相への「モリカケ・桜を見る会」に続く「スキャンダル」だと印象づけている。

 岸田文雄政権が閣議決定し結果的に海外賓客による「弔問外交」が主眼であるはずの「国葬儀」に対して、差止請求や反対署名活動を通じて反対世論を盛り上げようとするメディアや左翼文化人らの目論見がどうも透けて見える。

 特に普段は「国」に対して憎悪を隠さず「国民ではなく市民」を自称する人々が、「国葬」に対し「強制するな」「反対だ」「参列しない」と異を唱える不思議な光景が繰り広げられている。安倍氏の政治的業績への評価を、死してなお貶めたい怨念こそが、著しく国益を損ねるのだ。

 だがその一方で、肝心の暗殺事件に対しての真相究明の方は進んでいるのか、ほとんど明らかにされていない。逮捕・拘束直後の山上容疑者の「供述」というものは、逮捕から実名・年齢などのほかに、なぜか20年近く前に3年間だけ海上自衛隊に所属した任期制自衛官だったにもかかわらず「元自衛官」という情報がいち早く伝えられたことなどは、意図的と勘ぐられても仕方あるまい。

引責辞任した警察庁の中村格長官(右)と奈良県警の鬼塚友章本部長

「安倍氏訪台」めぐり水面下で脅迫した中国

 さて、山上容疑者は7月10日に殺人容疑で大阪地検に送検され、同25日に勾留満期を待たずに精神鑑定のため大阪拘置所に身柄を移送、11月29日まで4カ月間にわたり鑑定留置され、刑事責任能力を判断した上で、事件の起訴は年末となる模様だ。

 そうした中8月25日、警察庁の中村格長官と奈良県警の鬼塚友章本部長が相次いで事実上の「引責辞任」の会見を行った。なお、国家公安委員長は既に内閣改造で交替している。

 そもそも、奈良県警の司法解剖結果の見立てでは「銃弾は左上腕部から入って首から出た」としていたが、治療にあたった奈良県立医大の福島英資教授は「銃創は頸部(首の付根)に2つあり、そこから心臓に達し大きく損傷、心肺停止の状態。左上腕から弾丸が排出したのでは」と会見。この見解の違いから、山上容疑者とは別のスナイパー(狙撃手)がいたのでは、と疑問を呈する意見もネット上に現れた。

 この点、浅薄な「陰謀論」としてではなく、更に深堀りする向きもある。ジャーナリストの加賀孝英氏が「日米情報当局から入手した情報」によれば、「中国は『安倍氏を台湾に行かせるな。強行するなら報復する』と、日本を水面下で脅迫。中国やロシア、北朝鮮の工作員まで動いていた。安倍氏も、官邸も、警察当局も把握していた。一方で、奈良県警の〝手抜き警備〟は前代未聞」(夕刊フジ8月2日付)という。

 さらに、7月28日の米中首脳会談では、習近平中国国家主席がバイデン米大統領に対し、特にペロシ下院議長の台湾訪問計画については「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」とクギを刺したが、これを意に返さずペロシ氏は訪台すると、中国は「報復」に弾道ミサイルを発射した。

 そもそも、中国が「ペロシ氏の訪台」以上に警戒し、「『絶対に潰せ』と極秘指令を出していた重大案件こそ、安倍氏の訪台」だったという(公安関係筋、加 賀氏)。台北駐日経済文化代表処(事実上の駐日台湾大使館)の招きで、安倍氏は李登輝元総統の命日7月30日に訪台するはずだったという。

 さらに、この背景として中国機関の関与に言及する情報もある。台湾系ネットニュース『看中国』が7月下旬に報じた豪州亡命した中国人法学者・袁紅氷氏へのインタビューで袁氏が「中共内部の良心的情報筋」によると、中国対外連絡部(中連部)が安倍氏を含む世界各国政治家の大量暗殺を計画したのだという。にわかには信じがたい内容だが、「スパイ天国」であるわが国の置かれた状況でもあり、一つの可能性として排除できないのではないか。

 ともあれ、安倍氏暗殺事件そのものについての真相究明には、さらに掘り下げた取り組みが必要となるだろう。

(「世界思想」9・10月号より )

◆2022年9・10月号の世界思想 参院選後の日本の進路
Part1 急速に緊迫の度をます台湾情勢
Part2 日本経済に立ちはだかる3つの障害
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