思想新聞2月15日号の共産主義特集「米国の『核態勢見直し』を評価する」を掲載します。これまで米国は「核の先制攻撃に対して核で報復する」という見解でしたが、それを「非核攻撃を含む」解釈に変更しました。例えば、北朝鮮が生物化学兵器などを日本や韓国等の同盟国の国民や重要インフラに使用した場合が想定されます。当連合としても、日本の防衛上の国益にかなったものとして高く評価致します。
ロシアでは、プーチン大統領がクリミア半島を併合した後(14年)、核兵器使用に言及するようになった。北朝鮮やイランでも危機的状況が高まっている。
適切な情勢認識といっていい。具体的な戦力としては、トランプ政権が掲げる「力による平和」を反映し、爆発威力が小さく、機動性を高めた低出力核弾頭(小型核)の新規開発を盛り込んだ。欧州などでロシアが射程の短い戦術核を使用した場合を想定し、限定的な核戦争が起きた事態に備えるという。
また、「核トマホーク」で知られ、オバマ前政権が廃止した海上艦船配備型の核巡航ミサイルの再開発にも着手する。かくしてトランプ政権は、冷戦後の歴代米政権が目指した核兵器削減や使用回避を優先させる方針から、核兵器を「使いやすくする」方向へとカジを切った。大きな政策転換である。
核の傘による抑止力特筆すべきは、米国や同盟国のインフラなどに非核兵器による攻撃があった場合に、核で報復する可能性を明記したことである。
オバマ政権が策定した、「核の使用は、米国と同盟国の死活的な極限の状況でのみ検討する」という原則は踏襲するものの、その「極限の状況」の解釈を「非核攻撃を含む」範囲にまで拡張したのである。
これは素直に評価すべきだ。別に「核戦争を起こせ」と言っているわけではない。むしろ国際社会では、「核戦争は絶対に起こしてはならない」という理解が広がっている。つまりロシアや北朝鮮が、米国や日本などの同盟国を攻撃しようものなら、たとえ核兵器を使わずとも核の傘で対応すると宣言することで、通常兵器による攻撃をも抑止しようというのである。
特に北朝鮮は、核兵器以外にも大量の兵器を保有している。生物化学兵器をはじめ、地下に数千台規模で設置される砲台などだ。日本にはすでに多くの特殊部隊が潜入しているとみられており、有事には首都圏や原発などの重要なインフラを破壊するおそれがある。核兵器を用いるまでもなく、国家としての機能を麻痺させる手段をすでに保有しているのだ。
独裁者といえども、核兵器の使用には心理的なハードルが極めて高い。前例がないとはいえ、一度でも使えば核による報復を受け、自国が壊滅するのは目に見えている。「核なき世界」を目指したオバマ政権ですら、「死活的な極限の状況」では核兵器を使うと明言したほどだ。それでも使うのは、いわば無理心中を覚悟したときの最期の手段に限られるだろう。しかしこれを逆にみれば、「通常兵器なら核による報復は受けないだろう」という誤った安心感を与えるおそれもある。
今回の米国の決定は、こうした状況を想定したものだ。米国と同盟国への攻撃は許さない。たとえ通常兵器であっても、国民や重要なインフラへの攻撃は、核による攻撃と同等の攻撃とみなす。容赦はしないという宣言である。日本は世界で唯一の被爆国であるため、核に対する忌避反応が特段に強いが、米国の核の傘に守られてこれまで平和と安全を享受してきたという厳然たる事実も受け入れねばならない。
むしろトランプ政権が今回の発表で、通常兵器に対抗する核の傘を米国のみならず、同盟国にまで拡張したことに対して、日本は歓迎すべきである。実際日本の政府も、外務大臣談話を直ちに発表し、米国の方針を高く評価した。事前に調整があったのだろうが、こうした連携が国際社会に向け、重要な抑止力となるのである。
思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー
2月15日号 巻頭特集「オール沖縄の砦崩壊」 / NEWS「東京・安保セミナー」 / コラム「沖縄言論の歪みは事実」 etc