「スパイ罪」なくして国の守りなし

 

 

 中国のスパイ活動の一端がまた露わになった。日本に滞在していた中国共産党員の男が中国人民解放軍の指示を受け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や防衛関連の企業など日本の200にのぼる研究機関や会社に大規模なサイバー攻撃を行っていた。これは間接侵略そのものだ。

 スパイ活動に対する防備力が脆弱(ぜいじゃく)すぎる。それは法整備が欠落しているからだ。

 スパイ防止法すなわち「スパイ罪」を設け、違法な活動を摘発できる態勢を早急に構築しなければならない

 

 JAXAが2016年にサイバー攻撃を受けた事件で警視庁公安部「サイバー攻撃対策センター」は日本に滞在していた中国共産党員の男がサイバー攻撃に使われたレンタルサーバーを偽名で契約、サーバーを使うためのIDなどがオンラインサイトで「Tick」と呼ばれる中国のハッカー集団に渡ったことを突き止めた(男を書類送検=すでに出国)。同集団は中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊「61417部隊」の指示で動いていた。

 

「中国人を見たらスパイと思え」と言われる根拠【スパイ活動を義務化する中国の法律】

 

 トランプ前米大統領のオフレコ発言に「中国人を見たらスパイと思え」があるが、その通りだ。

 胡錦濤前主席は1999年に「西側軍事科学技術の収集利用に関する計画」を作成し、情報収集機関を4000団体設立。

 

 あらゆる階層の華僑、華人に情報収集を命じた

 

 習近平国家主席が2015年に制定した「国家安全保障法」は、国民に対して国家安全当局者に協力し命令・指示に従うこと、中国企業に対して政府の要請に応じて情報を提供しアクセスすることを義務付けた。

 

 17年に制定した「国家情報法」は、国民に対して国家のインテリジェンス活動(諜報活動)を支援する義務があるとし、諜報活動を行う機関は関係機関や組織(企業など)、国民に対して必要なサポートや支援、協力を要求することが許されると規定した。

 

 中国人は「スパイ」を義務付けられているのだ。

 

 だから近年、世界中でスパイ事件が続発している。日本も例外ではあり得ない。

 2004年には上海領事館員が中国の女性スパイに「ハニー・トラップ」(性的関係によるスパイ活動)でスパイを強要されて自殺した。

 

 07年には防衛庁元技官が潜水艦情報を漏洩(ろうえい)。自動車部品メーカー「デンソー」の中国人技師(人民解放軍の軍事スパイ)が産業用ロボットやディーゼル噴射装置など最高機密を盗みだした。

 

 12年には駐日中国大使館の一等書記官が虚偽身分で外国人登録証を取得し、政官界で工作活動をした。

 

 外務省の「チャイナ・スクール」(中国語研修組)や親中政治家、親中メディアが闊歩(かっぽ)し、オーストラリアのクライブ・ハミルトンが著した『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)以上の事態に陥っているのだ。

 

 それにも関わらずスパイ摘発は皆無だ(事件は窃盗、外国人登録法違反などとされている)。

 

 それはわが国が世界で稀有なスパイ防止法が存在しない国であるからだ。

 

 同法があれば、ドイツのように「毎月、国内で中国のスパイを摘発」(昨年6月、独連邦議会監視委員会)できるが、日本は野放しなのだ。

 

 自衛権は国際法(国連憲章51条)で認められた独立国の固有の権利だ。

 

 国家機密や防衛機密を守るのは自衛権の現れだ。それで世界ではどの国も、刑法や国家機密法に「スパイ罪」を設けている。

 

 スウェーデン王国は中立国かつ世界で最初に情報公開法を設けた国だが、刑法典第19章「王国の安全に対する罪」に「スパイ罪」を設け、「(スパイ活動が)重大であると解すべき場合は、『重スパイ罪』として4年以上10年以下の有期拘禁又は終身拘禁に処する」(第6条)とする。

 米国は連邦法典794条、英国は国家機密法1条にスパイ罪を設け、最高刑で臨む。

 

 ところが、わが国には「スパイ罪」が存在しない。スパイ行為を取り締まる法律そのものがないのだ。

 

 それで他国ではスパイ事件であっても日本ではそうならない

 

 外為法違反事件や窃盗事件、あるいは自衛隊法(守秘義務違反)違反事件となり、それらはいずれも軽い刑で済んでしまう

 

 民主国家は罪刑法定主義が基本で、あらかじめ犯罪の構成要件や刑罰を定めておかなければ、いかなる犯罪も取り締まれない。

 

 

 スパイ罪がなければスパイ活動は〝合法〟と見なされ、それでわが国は「スパイ天国」と呼ばれてきた。

 

 その最たるものが拉致事件である。こんな丸裸国家は世界に例がない。

 

スパイ防止法と諜報機関が不可欠

 

 安倍晋三前政権は2013年に特定秘密保護法を制定し、安全保障に必要な「特定秘密」の漏洩を防止する仕組みを作った。

 

 だが、漏洩と取得目的の行為であって「スパイ罪」とは明記せず、最高刑は10年にとどまる。

 これでは闊歩するスパイを取り締まれない

 

 また米中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)といった本格的に諜報・情報機関を設けなければ、取り締まりようがない

 

 

 「スパイ天国・日本」であることを政治家は恥じよスパイ防止法制定は焦眉の急だ。

 

スパイ防止法についてもっと知る

 

「スパイ防止法」制定促進サイト

 

 好評の『ほぼ5分でわかる勝共理論』でも、スパイ防止法についての特集がございます(全11回)ぜひこちらの内容もご参照ください。

スパイ防止法①「日本には『スパイ防止法』がない!?」

スパイ防止法⑩「中国の情報戦」

スパイ防止法⑪「今もスパイ活動が行われている」

 思想新聞【オピニオン・主張】「スパイ罪」なくして国の守りなし(掲載のニュースは本紙にて)

5月1日号 【日米首脳会談】中国の覇権・独裁阻止の決意 台湾有事想定した防衛態勢を / 沖縄祖国復帰50年プロジェクト 記念映画&政府式典開催訴える /【主張】「スパイ罪」なくして国の守りなし

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