イスラムのラマダン(断食月)にイスラエルとパレスチナ(ハマス)の軍事衝突が勃発した(5月21日停戦合意)。イスラム主義武装勢力・ハマスはなぜ動いたのか。それは、バイデン米政権の「弱腰」を見たからだ。
さらに米韓首脳会談が開催され、対北朝鮮政策に対する合意がなされた。それは韓国の文在寅政権の南北対話努力を支持するものであり、北朝鮮への「思いやり」に満ちた内容となっている。
今後中国、イランはじめとする「反米勢力」の動きが強硬になるだろう。日本の東アジア戦略の見直しが必要となる。
ハマスはイランの支援で兵器を向上
ロケット弾攻撃を行っているハマスは1987年に創設された。2007年にはガザ地区を武力制圧し、今も実効支配している。
大きな問題は、イスラエルと敵対する「イラン」の支援で兵器の能力を向上させているとされる点である。
当初、バイデン米政権の武力衝突停止の仲介はなかなか実らなかった。それは、イスラエルにはバイデン政権に対する不信があるからだ。
バイデン政権が、「イラン核合意」への復帰をめざして「軌道修正」しようとしているからに他ならない。
この度の武力衝突は、ハマスがバイデン政権を「弱い」政権と判断したことが生んだ混乱だといえる。
バイデン氏はリスクなのか
そして同じ構図は東アジアでも起きている。
3月18日、ブリンケン国務長官、中国側は中国外交トップの楊潔篪(ヨウ・ケッチ)政治局員が、アラスカで対面会談に臨んだ。
冒頭、ブリンケン氏が中国教疆ウイグル自治区や香港での人権問題や台湾問題などで中国の対応に「深刻な懸念がある」と指摘した。すると楊潔篪氏は即座に、「内政干渉」だと猛反発。
冒頭の数分をメディアに公開する予定が、1時間以上も激しくやりあう異例の展開になったのである。
3月下旬、トランプ前大統領はFOXテレビのインタビューで「中国側に甘く見られている」として次のように答えた。
「私たちが政権の座にあった時、中国に対して正しい措置をとった。中国は私が大統領だった時にはこんな態度を見せたことがない」
さらにバイデン大統領が就任後初の記者会見を行った3月25日、その直前に北朝鮮は短距離弾道ミサイル「KN23」を2発発射した。明らかな当てつけ、牽制だ。
米韓首脳「半島非核化」に後退
米韓首脳会談が5月21日、ホワイトハウスで行われた。会談後の共同声明のポイントは以下の通り。
◇米韓は、「朝鮮半島の完全な非核化」を目指し、「北朝鮮との対話を模索していく」との方針を確認
◇日米韓3カ国の連携の重要性を認識しつつ、文氏が目指す南北対話について「バイデン氏が支持を表明」
◇「台湾海峡の平和と安定維持の重要性を強調する」 などである。
共同声明で、「朝鮮半島の非核化」という表現が用いられている。
これは、金正恩総書記が対話に応じやすくするため、「北朝鮮非核化に専念」するとした従来の立場を変え、「朝鮮半島非核化にむけて努力」するとしたとみなければならない。
結果として、今回の会談を経て、文氏が目指す南北対話について米政権からのお墨付きをいただいたといえるだろう。
米政権はこれまでの対北強硬路線を転換した。これは北朝鮮の思惑通りである。基本姿勢はトランプ政権の以前に戻ってしまった。
これで非核化に向けた実際の変化を望めるのか疑問である。
今後中朝は、逆に強硬路線に転じるだろう。
バイデン政権の「弱腰」に付け込んで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「完成」に向けて走るだろう。
米韓首脳会談について中朝共に目立った反応をしていないが、思惑通りに進んでいることによる余裕の表れだろうか。
思想新聞【総合】「反米勢力」の挑戦受けるバイデン 米韓首脳会談は「北」配慮に終始(掲載のニュースは本紙にて)
6月1日号 「反米勢力」の挑戦受けるバイデン 米韓首脳会談は「北」配慮に終始 / 長野県で内外情勢セミナー 日本は安易に米国を頼るな/【主張】ワクチン遅れ 元凶は「戦後体制」だ