「選択的夫婦別姓(氏)制度」をめぐる攻防

世界思想6月号を刊行しました。今号の特集は「同性婚判決」と家族の危機です。
ここでは特集記事の一部 【「選択的夫婦別姓(氏)制度」をめぐる攻防】 についてご紹介します。

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「夫婦同氏は合憲」とした最高裁

 

 夫婦別姓問題について、2015年には最高裁大法廷で、

 ①夫婦同氏は親子同氏となり子供が利益を得やすい

 ②夫婦どちらの氏を名乗るかは自由選択できる

 ③旧姓の通称使用も社会的に広まった――などの理由で「夫婦同氏は合憲」との判決が下された。
 
 

 その後、18年にメディアは内閣府調査(「家族の法制に関する世論調査」平成29年)で夫婦別姓の「導入賛成」が42・5%で「導入反対」29・3%を上回ったと「世論の変化」を強調したが、実は通称使用を含めると夫婦同姓支持が53・7%で過半数を占めていた

 

 「夫婦同氏」を簡単に廃止してよいのか。「選択的だから嫌な人は同姓にすればよい」との議論もあるが、一部を別姓にすることで、戸籍を含む制度全体の再設計が必要になる
 
 戸籍が「個人単位」になれば、日本独特の相続制度、一夫一婦制が軒並み崩壊の危機に晒されることになるだろう。

 夫婦同氏が、事実婚や内縁関係とは異なる「法的婚姻」として機能してきた「日本の家族制度」の根幹に関わる問題と考えるべきだ。

 

事実婚社会の蹉跌残す旧ソ連圏

 しかしここで、冷静に考慮すべきは、日本の少子高齢化と人口減少という難題に直面していることだ。

 この問題に対して、別姓推進派はしばしば「少子化対策の切り札が夫婦別姓制度」と唱える。
  
 ところが、歴史的な教訓は異なる。

 「性解放」主義者コロンタイの提言に従い、夫婦別姓どころか事実婚社会に変革し、育児の社会化を推し進めた初期ソ連の家族政策の「実験」は、多重婚の横行と人口の激減を招いて大失敗に終わり、後にスターリンが軌道修正せざるを得なくなった。
 
 その後遺症は、今もなおロシアや旧ソ連諸国の離婚率の異様な高さに表れている。

夫婦別姓で少子化加速も

 

 加藤彰彦明治大学教授は論文「出生率向上に必要なのは伝統的拡大家族の再生だ」(月刊『正論』2015年12月号)で、夫婦別姓を導入すると、「名」を取る夫方と「実」を取る妻方という分別を失い、「力」で名も実も獲得できる競争的状況が、若い夫婦の不安要因となり、少子化を加速させるリスクが高くなるばかりか、離婚率も上昇し、親子関係の混乱と緊張が児童虐待などの暴力を生むと指摘。
 「夫婦別姓導入というハイリスクな社会実験は、合計特殊出生率が2・1近くを回復して社会の再生産が確実になるまで延期すべきだ」と結論づけた。

 逆に、「夫婦別姓」「生む/生まない自由」を唱える知識層には具体的人口対策はない。

 だが皮肉にもそうした主張で伝統的家族観から離れるほどに、ロシアのように離婚率が上昇し、人口は激減するというのが、歴史的教訓であることを肝に銘ずべきだろう。

 

 

 

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