【中国共産党創党100年】「社会主義現代化強国」は自滅の道

 中国共産党は7月1日、創党100年を迎えた。習近平党総書記(国家主席)は、歴史的任務としての台湾統一を訴えた。
 習氏が開く新時代の意味は、「社会主義現代化」から「社会主義現代化強国」に向かう路程であり、「社会主義初期段階」からの離陸を意味する。中国共産党は一貫した中・長期戦略に基づいて歴史を刻んでいることを知らねばならない。
 しかしそれは「自滅の道」である。

毛沢東時代「回帰」の意味

 

 北京では、習氏による「新時代」を告げる各種の催しが行われた。

 6月28日夜、北京市内で「偉大な道程」と題した「党100年」の歩みをえがいた「演劇」が上演された。

 

2008年の北京オリンピックのメイン会場で、来年の冬季オリンピックでも開会式が行われる国家体育場で上映された。

 

 その構成は革命期、建国期、改革・開放期、習氏による新時代となっている。

 注目すべきは鄧小平の位置づけである。これまで、改革・開放を進めた鄧小平は毛沢東と並ぶ別格の指導者とされていたが、演劇では改革・開放期の三人のうちの一人という扱いとなっていたのだ。

 浮かび上がる印象は、「建国の父」毛沢東に並ぶ扱いで、習氏への個人崇拝に結び付ける内容となっていることである。

 

 北京で開催された「党歴史展欄館」の展示方式もまた「演劇」と同じ時代区分が強調されていた。

 展示館は広大な面積を有しているにもかかわらず、鄧小平、江沢民、胡錦涛の三指導者を第3期に押し込めているのだ。1期と2期の中心は毛沢東であり4期は習氏が独占しているのである。

中国共産党「歴史展覧館」。習主席の展示に多くのスペースが割かれている。

 

中国の社会主義現代化、現代化強国をいち早く達成するために、鄧小平以降の集団指導体制から毛時代のような独裁体制が必要不可欠と考えているのだろう。

 

 習氏は7月1日、天安門広場の楼上で演説を行った。その要旨は以下のとおりである。

我々は小康社会を全面的に実現し、貧困問題を解決した。
党と人民を分割、対立させようとするいかなるたくらみも実現しない。
軍隊の現代化を加速させ、世界一流の軍隊を築かなければならない。
党は今後も平和や発展、公平、正義、民主などの人類共通の価値をひろげ、覇権主義や強権政治に反対する。
「一国二制度」を完全かつ正確に実施し、香港に対する全面的な統治権を履行する。
台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは党の歴史的任務。国家の主権と領土を守り抜く中国人民のゆるぎない決意を甘く見てはいけない。台湾独立のたくらみを断固粉砕する―。

祝賀会場が最も沸いた言葉は、「中国をいじめ、圧迫する外部勢力を許さない。14億人の中国人民の血と肉で築いた鋼鉄の長城にぶつかり、血を流す」「先生づらした説教は決して受け入れない」というものだった。

7月1日、共産党創設100周年を迎え、北京の天安門広場で 大規模な祝賀行事が行われた。

 

 

一環している社会主義現代化・「現代化強国」は自滅の道

 

 習氏の言う「新時代」とは、「社会主義初期段階論」からの離陸を意味するのである。

記事の続きを読む

「社会主義初期段階論」は、鄧小平が指導した「改革と開放」政策を社会主義イデオロギー上正当化するための理論である。

 この理論によると、中国社会はすでに社会主義社会であり、この社会主義を堅持しなければならない。しかしまだ生産力が低いために、社会主義の「初期段階」にあるとする。

 この段階では、市場経済を大いに発展させ、労働生産性を高め、近代化を遂次実現することがおもな任務であり、経済建設を中心として改革と開放政策を堅持し、社会主義の市場経済を発展させると同時に、政治の面においても「安定・団結」を前提に民主政治と精神文明建設に努めることなどが、中国共産党の長期的指導方針として打出されたのだ。

 

 「社会主義の現代化」から「社会主義現代化強国に進む時代が「新時代」であり、習政権の歴史的使命と位置付けられている。

 2017年10月、第19回共産党大会の報告で、中国が「新時代」に入ったことが強調された。そして21世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」となる国家目標が掲げられたのだ。

 

 中国はこれからも、社会主義的権威主義を強化していくだろう米中対立は理念的にも激化する。

 今後一層、民間企業よりも国有企業が優遇されていく。「現代化強国」の道は自滅の道なのである。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

思想新聞 【中国共産党創党100年】「社会主義現代化強国」は自滅の道(掲載のニュースは本紙にて)

7月15日号 【中国共産党創党 100 年】「社会主義現代化強国」は自滅の道 / 【連載】ウォッチング「日本共産党」のリアル  五輪=エリートの祭典と競争批判/【主張】コミンテルン100年の謀略を糺す

機関紙「思想新聞」へのお問い合わせ・購読はこちらへ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

「いいね」と思ったらシェア!