政府は昨年12月21日の閣議で子供・家族政策の「司令塔」となる「こども家庭庁」に関する基本方針を決定。「2023年度のできる限り早い時期」に創設する方針で通常国会に同庁設置法案を提出しました。しかし、こうした動きの背後で、左翼勢力が自分たちの思想信条を通そうとしていることに注視する必要があります。
国連「児童の権利条約」を踏まえた施策
「こども家庭庁」は首相直属の組織とし、他省庁に対する勧告権を持つ専任大臣を置く。厚生労働省や内閣府が担当する保育所、児童手当、児童虐待防止対策といった福祉中心の分野を移管。一方、幼稚園や義務教育といった分野は調整が難航し、文部科学省に残される。
そもそも「こども家庭庁」の呼称でも紆余曲折があった。山田太郎・自見英子両参院議員らの主宰する「チルドレンファーストの子ども行政のあり方勉強会」で招いた講師の虐待経験者から、「虐待を受けた子は家庭という言葉に傷つく」と指摘されて「家庭」を簡単に除外。党内から「家庭もサポートする対象」と名称見直しの意見が上がり、名称を「こども庁」から「こども家庭庁」に再変更した。
山田・自見両議員の「提言」により、国連「児童の権利条約」の理念を踏まえ、子供が自ら意思決定して生きられる環境整備のため「子ども最優先」施策を実現するというものだ。
確かに世界では、学校に通う金と時間もない子供で溢れている社会は数知れず、子供どころか大人ですら今日や明日を生きていくだけでも精一杯の貧しい国も少なくない。子供が理不尽に拉致されて人身売買され、性的搾取されたり、兵役を担わされたりするのが普通に存在する国があるのに対し、日本では少なくともそのようなケースはほぼない。ただし、今日問題となっているのは、虐待や貧困、家族の介護などで学業を犠牲にするヤングケアラーの存在などだ。
国連の「審査」働きかける左翼団体
その意味では、問題は国連の「児童の権利条約」そのものにあるのではなく、この条約を「利用」して自分たちの思想信条を通そうとしている勢力がある、ということなのである。
具体的には、日本政府が「国連子どもの権利委員会」から「子供の権利を監視するための具体的機構を含んだ、人権を監視するための独立した機構を迅速に設置すること」なる「勧告」を、1998〜2019年の合計4度に渡り受けてきた。これを受け、山田・自見両氏による「勉強会」では①「子ども基本法」の制定②「こども庁」設置③「子どもコミッショナー」の実現の3つの政策を打ち出した。このうち特に、③の「子どもコミッショナー」とは、「子供の権利の監視組織」にあたるものだ。
こうした国連の「委員会」に持ち込み「審査」を働きかけているのが、左翼NGO団体だ。具体的には、最初の2度の勧告は、日本教職員組合(日教組)本部と同一住所に事務局を置く「子どもの人権連」と「反差別国際運動日本委員会」が国連に提出したレポートに基づき「審査」が行われた。後者は、「アイヌは先住民族」「沖縄県民は先住民族」の国連への働きかけが指摘されてきた北朝鮮系の「チュチェ思想研究会」幹部が組織化したもので、「政治工作」のための組織にほかならない。
特に前者「子どもの人権連」の代表委員の平野裕二氏の悪名高い「代表作」として知られるのが1990年の『生徒人権手帳〜「生徒手帳」はもういらない〜』(共著、三一書房)だ。
ここに出ているのは中高生の「権利」のオンパレード。服装・髪型を自分で決める権利に始まり、日の丸・君が代を拒否する権利、セックスをする権利などを堂々と主張する。
ここで明らかになるのは、「国を愛する心」を謳う改正教育基本法への敵視であり、性解放思想に基づいてジェンダー平等やLGBT配慮を謳う「包括的性教育」の刷り込みだ。
建国の父を奴隷所有者として貶める米国での「文化戦争」と共に、日本での愛国心の排除という子供の教育に対する国連基点の仕掛けに連動している世界的な「文化共産主義的潮流」として警戒すべきである。
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