パリ五輪で跋扈の「リベラル」と闘おう

 フランス・パリ五輪が終わった。競技そのものはいつも通り感動をもたらしたが、開会式で見せつけた下衆なパフォーマンスにはうんざりさせられた人も多かろう。性の多様性なる演出、ことに同性愛者を五輪の主役のごときに描き、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに模したドレスの女性が「生首」をもって歌うシーンに至っては人としての尊厳すら疑わせた。こうしたパリ五輪のリベラル派の跋扈は1789年のフランス革命がその後の世界にもたらした「政治的教訓」を改めて思い起こさせた。このことは現在の日本と無縁では決してない

 ざっくり言えば、パリ五輪パフォーマンスを絶賛する人々はリベラル派、不快感を示した人々は保守派と位置付けることができよう。リベラルVS保守の構図だ。これこそが今日の自由民主主義諸国の深刻な「政治分裂」を象徴する。かつては資本家と労働者といった経済を巡る政治分裂であったが、今やイデオロギーによる政治分裂だ。ゆえに我々はこれを文化共産主義との思想戦と位置付けるのである。

パリ五輪の聖火台

神を恐れず人の尊厳性を奪った

 フランス革命をみてみよう。それはまさに歴史の断絶である。当初はモンテスキューの思想を支持する人々が議会制による立憲王政を目指したが、過激派はアンシャン・レジーム(旧体制)打破を唱えてバスティーユ牢獄を襲撃。急進的なロベスピエールの山岳派「ジャコバン主義」が主導権を握り政敵を次々と処刑する恐怖政治を敷き、王や王妃を革命広場(コンコルド広場)でギロチンにかけて処刑。あげくの果てに内ゲバを繰り広げ、ロベスピエール自身もギロチン台に消えた。

 フランス革命は「人権宣言」(1789年)や「第1次憲法」(1791年)をもって近代政治の道を開いたとされるが、理神論から唯物・無神論に至り、神を恐れず、人間の尊厳性を平然と奪う独裁・恐怖政治を招き入れた。これを起点として共産主義が登場し、20世紀を「戦争と革命の世紀」に陥れた。これがリベラルの起源である。

 ならば保守の起源はどうか。英国では「フランスに倣え」の革命肯定論が渦巻いたが、エドマンド・バークはマグナ・カルタ(1215年)以来の英国政治の伝統を説き起こし、「世襲の原理」をもってフランス革命に真っ向から異議を唱えた。

 「世襲の原理はあらゆる変化をつうじて、一種の不滅性をもって存続したのである。│ながい年月にわたって家運がさかえ安定し、祖先の祖先がかぞえられる。これが、われわれの国家構造の安定した行程においてのみならず、そのすべての革命(注=ピューリタン革命及び名誉革命)においての精神なのである」(『フランス革命についての省察』1790年)

 バークは、「所有が安定し礼節が重んじられ、あらゆる階層の人々が相互に他を顧慮する社会においてのみ、『人間らしい、道徳的な、規律ある自由』が可能になる」とし、道徳については新発見などおよそあり得ず、伝統の中でこそ「われわれの自由は高貴な自由となる」とし、次のように言う。

 「世襲を選ぶことにより、われわれは、自分たちの政治の骨組みに、血のつながりという姿を与えたのであって、われわれの国の国家構造をもっとも親愛な家族的きずなに結びつけ、われわれの基本法をわれわれの家族的愛情の奥底にとりいれ、われわれの国家と炉端と墓地と祭壇を、不可分に保持し、それらすべての、結合し相互に反映する慈愛の温かさをもって、慈しんできたのである」

 歴史と伝統を守るとはこういうことを言うのである。これぞ、わが国の皇室の伝統と相通じる保守の起源である。ひるがえって自民党はこのような保守思想を持ち得ているだろうか。そこが来たる総裁選で問われる核心である。岸田文雄総裁は昨年、「LGBT法」なるリベラル政策を持ち込む決定的誤りを犯した。そこから抜本転換しなければ、自民党は保守たりえないのである。

自民党は結党の原点に立ち返れ

 まずもってリベラルと闘うことだ。なぜなら今日の日本のリベラルはフランス革命のそれとウリ二つだからだ。敗戦という国家亡失の危機に乗じて占領軍の日本弱体化工作(WGIP=ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)の旗振り役を演じ、歴史と伝統の抹殺を企てた

 皇統を否定し(日本共産党の「人民共和国憲法草案」は天皇を抹殺する)、教育勅語で象徴される道徳教育を潰し、国旗国歌を蔑ろにし、 殉国の英霊を祀る靖国神社を消し去ろうとし、国民を「市民」と呼び、占領軍が押し付けた「日本国憲法」を金科玉条に自衛力を否定し、家族よりもLGBT、夫婦別姓、同性婚を唱え、日本人をして「亡国の民」に陥れようとしている。左翼朝日に至っては「従軍慰安婦」なる偽情報を世界中にばら撒いて日本を貶め、日韓分断工作に血道をあげている。

 自民党の立党の原点は自主憲法を制定して日本らしい国柄を取り戻し、独立国家に相応しい国家体制を構築し、国民道義を確立して内外に誇れる国を創るところにある。新総裁はその原点に立ち返らねばならない。

【思想新聞 9月1日号】米大統領選・民主党は「急進派議員連盟」が主導/共産主義定点観測

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