生命と暮らしを守る「国防」を問え

 安倍晋三元首相銃撃事件から3年経ち、参院選の最中である。いったい政治に何を求めるのか、いかなる国を造るのか、未来に何を残すのか―。その問いに国民は真摯に応えねばならない。報道によれば、今参院選の争点は「物価高対策」それも「現金給付か減税か」だそうだが、馬鹿なことを言ってはならない。目先のモノを追い求め、今ばかりに気をとられ、努力もせず、国にばかり頼ろうとするのは愚民のすることだ。

 ならば、今参院選の真の争点は何か。それは「国防」である。国防とは国の守りである。軍事力を保持して国を守護することである。なぜ軍事が重要なのか、それは共産主義が常に軍事侵略を狙っているからである。その魔手から国を守るには我々も軍事力を持たねばならない。これは厳粛なる事実である。

共産主義軍事論を見据え国を守ろう

 想起すべきは軍事と共産主義は切っても切り離せない関係にあることだ。カール・マルクスとともに共産主義を編み出したフリードリヒ・エンゲルスは1858年、マルクス宛の手紙の中で、「今、なによりもクラウゼヴィツ戦争論を読んでいる。風変わりな思索の方法をもっているが、その内容はというと、はなはだ良い」と、クラウゼヴィツを学ぶことを薦め、これに従ってマルクスはクラウゼヴィツの有名なテーゼ「戦争は他の手段をもってする政治の継続に他ならない」を共産主義軍事論の中核に据え、後にクラウゼヴィツを「最高の巨星」と規定した。

 独政治学者のカール・シュミットは「現代の戦争は単なる軍事力中心ではない。戦争手段の画期的変化によって、軍事力をバックとする政治戦、軍事戦、心理戦、大衆組織戦、ゲリラ戦などの総合戦となった」と看破したが、マルクス・エンゲルスこそ総合戦の生みの親で、レーニンとトロツキーはその成果をロシア革命で示した。
毛沢東はそれらを学び、中国古来の軍事論すなわち「孫氏の兵法」を加えて「人民戦争論」を著した。その中の「紅軍作戦四原則」は孫子の「始計篇」の「敵進めば我退く、敵退けば我追う、敵駐まれば我乱す、敵疲れれば我打つ」を応用したものである。

 また孫子は「智将は努めて敵に食む」と説いたが、自由諸国から技術を盗み出し、あるいは「千人計画」で学者を中国に取り組んでいるのもこの応用である。孫子は間諜(スパイ)を「郷間」(敵国の住民をスパイにする)「内間」(敵国の軍人・役人をスパイにする)「反間」(二重スパイ)「死間」(敵国に故意に捕まり偽情報を流す)「生間」(敵国に侵入し生きて情報を持ち帰る)の5つを挙げる。スパイ活動もまた共産中国のお家芸なのだ。
共産主義との戦いはおしなべて「軍事戦」なのだ。それゆえに共産主義から国を守るには「軍事」が不可欠なのだ。軍事力なくして自由と民主主義は守れない。日本国は守れない。国民の生命と暮らしも守れない。これは「戦争と革命の世紀」(米政治哲学者ハンナ・アーレント)の20世紀から得た貴重な教訓である。

 ところが、わが国の「反日」共産主義勢力は軍事力の整備にことごとく反対する。安倍晋三政権が制定した集団的自衛権の行使を一部認める安保関連法、国家機密の情報漏れを防ぐ特定機密保護法、テロ集団を取り締まる組織犯罪処罰法、さらには有事立法、国民保護法、PKO協力法、スパイ防止法、古くは日米安保条約改正に反対し、自衛隊を「人殺し集団」と呼んで恥じなかった。そして今日、共産中国が侵略の矛先を台湾、さらに尖閣を始めとする南西諸島に向けているのに共産主義勢力は素知らぬ顔である。こういう共産勢力の欺瞞を粉砕し、我々は軍事力増強の先鞭をつけねばならない。

小松基地から飛び立った航空自衛隊の戦闘機

憲法9条改正で自衛隊を軍隊に

 第1に憲法9条を改正し自衛隊を軍とする。破廉恥にも9条は自衛隊を軍隊として認めず、手かせ足かせをはめ、国の安全を損ね、自衛官を侮蔑してきた。9条を改正し、自衛隊を軍隊と明記しない限り、国防は成り立たない。

 第2に日米安保条約を改正し双務条約とする。2国間の同盟は対等な関係であらねばならない。

 第3に非核3原則を撤廃する。米国の「核の傘」に依存するなら、核の持ち込みを認め、有事に米国から核弾道の譲渡を受ける「核兵器共有政策」も導入する。米国の「核の傘」が不確実なら核武装を選択肢に入れるべきである。
 第4にスパイ防止法を制定する。スパイ行為そのもので逮捕できないのは世界で日本1国だけでる。

 第5に対外情報(諜報)機関を設置する。国内外で対日諜報活動が活発に行われているのに対諜報組織が存在しないのは国防上の一大欠陥である。

 第6にしかるべき防衛力を整備する。トランプ米政権が国防費を国内総生産(GDP)比5%を求めているという話があるが、日本の国を守るにはいかなる防衛力が必要か、その構想を国家が明確に把握し、それが仮に5%を超えても断固として整備すべきだ。

 こうした国防の課題を克服してこそ生命と暮らしが守られると自覚すべきだ。上辺だけの政策論争に惑わされてはならないのである。

【思想新聞 7月15日号】窮地の日米関税交渉 安全保障と連携する打開案を探れ/連載「文化マルクス主義の群像」/朝鮮半島コンフィデンシャル

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