戦後80年の夏である。2025(令和7)年8月15日、我々は如何なる心情をもってこの日を迎えるべきだろうか。胸に手を当てて自らの魂に問うてみよう。心に湧くのは「感謝」の思い以外の何物でもないはずである。先の大戦、すなわち大東亜戦争での幾万の人々の「犠牲」の上に今日の我々が存在している。この厳粛な事実を忘れ去って戦後80年を問うのは先人への冒涜である。
靖国神社慰霊は国の当然の責務
古来、身命を捧げて他のために尽くすことを「犠牲」と言い、それを成し遂げる人を「英雄」と呼んだ。ある個人のために犠牲になる人はその個人の英雄であり、家族のために犠牲になる人はその家族の英雄であり、国のために犠牲になる人はその国の英雄である。その行為は個人や家族、国を超えて称えられるのである。
トランプ米大統領の唱える「米国を再び偉大に」の起源もまた、英雄にほかならない。独立戦争の英雄の一人に21歳の青年、ネイサン・ヘイルがいるが、彼は戦いの劣勢を挽回すべく、イギリス支配地に潜入するも発見され処刑された。そのときの言葉が今も語り継がれている。「私が残念でならないのは、私の国の為に捧げる命がたった一つしかないことだ」。これこそが米国の建国精神の支柱である。
「為に捧げる」すなわち「為に生きる」のは人間の崇高な精神の顕れである。故に国家の為に生命を投げ出し、犠牲の道を歩んだ人はいずれの国でも記念碑を建立し、自国元首だけでなく外国元首が訪問した際にも献花して慰霊、敬意を表するのが習わしである。これは国際的常識であって日本だけが例外扱いされる謂れはない。
慰霊がその国の伝統的形式に基づくのも当然のことである。わが国は伝統に則って靖国神社に合祀し体現してきた。宗教学者の山折哲雄氏は「われわれの文明には神仏共存のシステムと鎮魂を通して『死者』を許す観念が強力に生き続けている。…『靖国』信仰は神仏共同の鎮めのメカニズム」(読売新聞2005年6月9日付)と指摘している。これが日本の霊的伝統である。
靖国神社は明治維新以降、今日に至るまで国家の平安のために殉じた人々を祀ってきた。生前の身分や階級、宗教、性別、年齢などを問わず、等しく戦死者や殉職者を合祀し、現在は246万6千余柱の御霊が祀られている。終戦直後、連合国軍総司令部(GHQ)には靖国神社を国家神道の根元として焼却しようとする動きがあったが、駐日ローマ教皇庁代表のビッテル神父が「いかなる国家も、その国家のために死んだ人々に対して敬意を払う権利と義務がある」とマッカーサー元帥に進言し、焼失を免れた逸話が残っている。
しかるに安倍晋三氏が13年12月に現職首相として小泉純一郎首相以来、7年4カ月ぶりに靖国神社を参拝して以来、首相の参拝がない。これは国家として恥ずべきことである。内外に靖国否定論者がいるが、その中には戦争をうんぬんする以前に日本の霊的伝統を否定しようとする無神論的、唯物論的な反日主義者が存在している。そのイデオロギー的主張に〝配慮〟して首相の靖国参拝が蔑ろにされては決してならないのである。
「A級戦犯」の合祀をもって参拝に反対するのも愚論である。わが国はサンフランシスコ講和条約で東京裁判の判決結果を「受諾」したが、これは刑の執行や赦免・減刑などの手続きを受け入れ、東京裁判の不法・不当性を国家として対外的に主張しないと約束したにすぎない。主権回復後の1953年8月3日の衆議院本会議において「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」を採択し(当時の社会党も共産党も賛成し満場一致)、罪人としないことを明確にし、「A級戦犯」の刑死は国内法上の「公務死」扱いとしたのである。
それ以降、戦犯を日本の責任ですべて釈放したが、連合国からクレームをつけられたことはない。禁固7年の「A級戦犯」重光葵氏は鳩山一郎内閣で副総理・外相になり、日本初の国連代表として同総会で演説し、終身刑の「A級戦犯」賀屋興宣氏は池田勇人内閣の法相になったが、国際社会から異議を唱えられたことは一切ない。首相の靖国参拝にケチをつけられたこともなかったのである。
それを85年に中曽根康弘首相が公式参拝すると反日左翼の朝日新聞が大騒ぎし、同年以前には靖国参拝をまったく問題にしていなかった中国と韓国が便乗し、外交カードとして利用するようになった。それ以降、首相の靖国参拝にいちゃもんを付け、日本側が躊躇したり妥協したりしたので図に乗り、「恫喝外交」に拍車を掛けている。
反日共産勢力の跋扈を許さない
戦後80年の今こそ、この悪弊を断ち切り、堂々と首相の靖国参拝を復活させねば英霊に対して申し訳が立たない。子孫にも禍根を残す。わが国の霊的伝統を葬り去ろうとする勢力とは果敢に闘わねばならないのである。国が滅亡してから憂いても後の祭りだ。良識ある国民よ、戦後80年の今こそ霊的伝統を守護すべく、総決起しようではないか。
【思想新聞 8月15日号】「勝共愛国総決起大会」開催「日本再建へ立ち上がろう!」/渡邊芳雄会長講演文/朝鮮半島コンフィデンシャル