皇室典範改正法と国旗損壊罪法が通常国会で可決、成立した。世界で唯一無比の皇統を護り、日本の象徴である国旗「日の丸」の威信と尊厳を守る。そして2600年以上に及ぶ輝かしい「歴史と伝統」を後世へ引き継ぐ。その一助となる2法の成立は、まことにもって快事である。
2法を巡る国会やマスコミの論議を通して「歴史と伝統」を顧みず、「国家は悪である」と言い募る人々の存在も浮き彫りになった。すなわち「階級国家論」に戻づく「国家悪論」を唱える人々のことだ。その起源は共産主義の祖マルクスとエンゲルスが唱えた唯物史観だ。今なお、わが国に「一個の妖怪」が徘徊していることを我々は看過できない。
国を抑圧機関とし破壊企てる「妖怪」
国旗損壊罪法反対派は臆面もなく「国を愛さない自由もある」などと叫ぶ(例えば毎日新聞7月17日付)。愛さないとは「憎悪」か、それとも「無関心」(マザーテレサ)か。いずれにしても空恐ろしいことである。その言葉の底流に国家を「抑圧機関」と捉える「階級国家論」が存在する。それが「国家悪論」だ。
階級国家論とは何か。エンゲルスは「(原始社会には)国家なしですんでいた社会、国家や国家権力を夢にも知らなかった社会が存在していた。諸階級への社会の分裂と必然的に結びついていた一定の経済的発展の段階で、この分裂によって国家が一つの必然事となった」(『家族、私有財産および国家の起源』)と言う。
生産力が皆無に等しい原始社会は無階級社会だったが(空想的ユートピアだ)、生産力の発展に伴ってそれを支配する側と支配される側の階級が生じ、「(支配)階級は、国家を通じて、政治的にも支配する階級となり、こうして、非抑圧階級を抑制し搾取するための新しい手段を獲得する。…古代国家は、なによりもまず奴隷を抑制するための奴隷所有者の国家であったし、同様に封建国家は、農奴・隷農的農民を抑制するための貴族の機関であったし、近代的代議員制国家は、資本による賃労働の搾取の道具である」(同)と断じた。
それで軍隊や警察は被支配階級の反抗を粉砕するための国家の強制機関とした。そこから暴力革命理論を導き出した。マルクスは『共産党宣言』で「共産主義者は、これまでのいっさいの社会秩序(注、国家)を暴力的に転覆することによってのみ自己の目的を達成することを公然と宣言」し、レーニンは「マルクスによれば、国家は階級支配の機関であり、一つの階級による他の階級の抑圧機関であり、階級の衝突を緩和しつつ、この抑圧を合法化し強固なものにする『秩序』を創出するものである」(『国家と革命』)とし、ロシア革命で国家打倒を図った。
その矛先は「皇室」で、ロシア最後の皇帝ニコライ2世一家7人は革命後の1918年7月、ロシア中部のエカテリンブルクの元商家の地下室で銃殺され、遺体は硫酸を使って痕跡すら残さず消し去られ、貴族らも同様の運命を辿った。
こういう階級国家観を背景にする「国家悪論」が戦後日本に巣くってきたのである。「悪夢の民主党政権」の官房長官だった仙谷由人氏は「自衛隊は暴力装置」と言い放ったが(2010年11月18日、参院予算委員会=後に撤回、謝罪)、それは氷山の一角にすぎない。
唯物史観には「土台と上部構造」という理論がある。土台とは経済的諸関係、つまり生産関係のことで、この土台の上に宗教や政治、芸術、思想・哲学などの上部構造が生じ、それらは土台を強固にする「支配の道具」と化すと見なす。だからマルクスは「宗教はアヘン」(『ヘーゲル法哲学批判序説』)と叫び、毛沢東は「歴史と伝統」のすべてを破壊する文化大革命を企てた。今日では米国のポリコレ(ポリティカル・コレクトネス=過激な差別撤廃主義者)や日本のジェンダーフリー主義者も同様に文化戦争を仕掛けてくるのだ。
世界に誇る皇統守る現世の使命
では、民主主義社会における国家とは何か。それは普通選挙法のもとで国民は等しく選挙権を有し、代表者を通じて立法府を組織し、議会の議決を経た法律に基づき「法治国家」として民主主義的に運営されるものだ。
その形態は「共和国」に限らない。「王冠を戴く民主国」が世界に30カ国近く存在するのである。先のワールドカップ(W杯)決勝トーナメントのベスト8に進んだイングランド(英国)、スペイン、ノルウェー、ベルギー、モロッコがそうで、それぞれに国柄があり、「物語」(ナラティブ)を有しているのだ。
わが国は記紀で数えれば神武天皇から2600年以上、6世紀の継体天皇の代からだけでも1500年以上、男系皇位継承による「万世一系」の皇統を守ってきた。天皇は支配・被支配といった俗世を超越した「祭祀王」であり「民の父母」である。日々、民草のために祈り続けておられる。だから国民は父母を慕うごとく皇室を敬愛し、この国を愛するのだ。「皇国史観」で何が悪い。これこそ誇るべき国の宝だ。共産主義の唯物史観こそ「歴史と伝統」を否定し、社会を分断させ赤化革命を呼び込む悪の権化だ。
【思想新聞 8月1日号】改正皇室典範の成立 男系皇位の安定的継承の第一歩だ/連載・「辺野古沖転覆事件」の深層/文化マルクス主義の群像/共産主義定点観測