共産中国への「幻想」を断ち捨てよ

 わが国は今、分水嶺に立たされている。分水嶺とは山稜線に落ちた雨水がどちら側に流れ落ちていくか、東か西か、北か南か、「物事の方向性が決まる分かれ目」のことを言う。繁栄か滅亡か、天国か地獄か、その行く末を決める山稜線に日本は立たされているのだ。

 そういう時代にあって嘯く者たちがいる。「中国と仲良くしよう」「中国とよりを戻そう」「日本と中国は引っ越しができない隣人だ」「今こそ日中友好を」。高市早苗内閣に対中外交の転換を求める囁きである。これを「妄語」(口でつくる罪悪)と言う。共産中国は「共産党の国」であって決して往時の中国ではない。日中友好の妄語に従えば地獄に墜ちる。決して行く道を間違えてはならない。

共産党独裁政権に正統性は存在せず

 古代中国に憧憬を抱く日本人は少なくないだろう。歴史を学べば、倭国と呼ばれた時代から遣隋使・遣唐使、仏教や儒教のみならず孟子や荘子の道家、司馬遷の「史記」や陳寿の「三国志」など、漢詩や漢文を学べば、「国破れて山河あり」(杜甫)等々、雄大な思想や文学、芸術に親しみを抱き「中国好き」となり、「何となく親中」という人もいる。

 だが、それを現在の中国と重ねるのは幻想である。共産主義という「妖怪」が思想も文化も芸術も何から何まで飲み尽くし、「否定の法則」によって消し去ってしまったのが、現下の中国だ。それは文化大革命(1966~76年)で終わった話でなく今に続いている。

「中華人民共和国」を名乗るが、そもそも共和国とは民主主義に基づき主権が国民に所有されている国を指す。国民によって直接あるいは間接選挙によって選ばれた代表が統治する制度のことだ。選挙で統治者を選んでいない中国に共和国を名乗る資格は全くない。

 香港の裁判所は8月21日、天安門事件の追悼集会などで「一党独裁の終結」を訴えてきた民主派団体、香港市民愛国民主運動支援連合会幹部2人に有罪判決を下したが、その根拠として中国憲法1条に「社会主義制度は中華人民共和国の根本的制度」で「中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴である」と規定されていることを挙げた。検察側(すなわち共産党)は党の指導の終結を求めることは国家の憲政秩序に反し、国家の安全を脅かす行為だとした(産経新聞8月22日付)。この憲法は誰がつくったのか、言わずもがな共産党支配下の「人民代表大会」だ。「政権は銃砲から生まれる」(毛沢東)。すべて共産党の軍事支配なのだ。

 日本は戦前の中国への「贖罪意識」から日中国交(1972年)以来、巨額を投入し中国支援を行ったが、共産党の「支配の道具」と化しただけだ。それでも胡耀邦や趙紫陽が健在だった時代には「民主化の芽」もあったが、1989年の天安門事件で消滅した。
 同事件以降、ソ連・東欧の崩壊、市場経済化によって共産主義は精神的規範として通用しなくなった。そこで共産党の吸引力を維持するために「愛国主義」を持ち出した。と言っても共産党の「愛国」は中国の歴史や文明のそれではなく、あくまでも「愛共産党」である。中国史で最も偉大なことは帝国主義(日本)と戦い、資本主義を打倒して社会主義政権を樹立したこと。その〝輝かしい〟共産党の歴史賛美が「愛国主義」にほかならないのだ。

 だから必然的に愛国イコール反日となる。90年代以降、愛国主義教育拠点を200カ所以上も作ったが、大半は北京の抗日戦争記念館(七三一部隊の人体実験の蝋人形設置)や南京の虐殺記念館(白骨を並べた万人杭の設置)といった反日のテーマ館だ。共産党は日本の「侵略」「虐待」への中国人の反感を高めれば高めるほど、共産党の正当性が高まるとの構図を描いている。これを歴史のねつ造と呼ぶ。

 先の大戦において「連合国」に加わっていたのは中華民国で、そもそも中華人民共和国など存在しなかった。日本軍が戦ったのは国民党軍で、共産党軍を相手にしたことはほとんどない。左派の筆頭、朝日新聞は「中国共産党の八路軍」が日本軍に大規模攻撃を仕掛けた「百団大戦」などと書いているが(「戦後80年と日本 歴史を見過ごさないために」2025年8月15日付社説)、事実は「共産党の八路軍」でなく「国民党の第八路軍」で、当時、毛沢東は陝西省北部、高原地帯の延安という安全地帯に籠って漁夫の利を狙っていた。中国共産党に「対日戦史」はほとんど存在しないのだ。共産党の「政権の正統性」も存在しない。これを覆い隠すために南京大虐殺といった「歴史の捏造」を行うのである。

8月21日、民主派団体幹部に有罪判決を下した香港の裁判所(NHKニュースより)

日中友好は妄言抑止力強化せよ

 中国国内の矛盾が噴出してきた今日、共産党政権への疑問が一段と強まるだろう。だから反日を一層、「正統性」の根拠として強調し、さらに新たな戦争で日本に勝った歴史を築き、共産党に〝箔〟を付けようと企てているのだ。ゆえに共産党の思惑も顧みず、情緒的に日中友好を唱えるのは妄言なのだ。

 わが国の選択肢は抑止力増強あるのみだ。「日中友好」の妄言を退け、ひたすら備えよ。それが高市早苗内閣の使命である。

【思想新聞 9月15日号】勝共愛国総決起大会2026/渡辺芳雄会長・基調講演/連載・「辺野古沖転覆事件」の深層/共産主義定点観測

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