国際勝共連合と、友好団体である世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する昨今の報道において、1978年11月に米国下院の「フレイザー委員会」(国際関係委員会国際機構小委員会)が公表した最終報告書をもとに、以下のような言説が繰り返されています。
「KCIA」を結びつける各種報道
「朴正熙政権時代、文鮮明教祖が大韓民国中央情報部(KCIA)の指示で、反共政治団体である国際勝共連合を創設したのが1968年のこと」(産経新聞2022年10月28日付)
「その(韓国政府の米政界への)工作の重要な『実働部隊』となったのが、文鮮明率いる旧統一教会の関連組織だったのだ」(集英社オンライン2022年10月26日配信)
しんぶん赤旗は8月28日配信の「統一協会 危険な二つの顔」「勝共連合 反共・反動の先兵」と題する記事で、次のように報じています。
「米韓関係を調査した米国下院フレイザー委員会の最終報告書(78年)は、61年にクーデターでうまれた朴正煕軍事独裁政権のもとで謀略工作機関『KCIA(韓国中央情報部)』が統一協会を『組織』し、『政治的用具』として利用してきたという情報を記しています」
フリー百科事典「ウィキペディア」にも「フレイザー委員会」のページで、「同委員会は中央情報局(CIA)機密文章を紹介し、1954年に文鮮明によって設立された統一教会は、1961年に大韓民国中央情報部(KCIA)部長の金鍾泌の指示で『韓国政府機関』として再組織され、アメリカや日本で政治工作を行っていることを明らかにした」などと明示しています。
以上のように、当連合や旧統一教会がKCIAによって「組織」され、「政治の駒」として利用されてきたかのような指摘が現在も散見されます。
昨今の状況を鑑みて、当連合としても改めて説明することにいたします。
フレイザー委員会「未確認情報」を無責任に公開
まず、フレイザー委員会の最終報告書では、354ページで「KCIAの長官であった金鍾泌が統一教会を創設した」との主張を撤回しています。
そもそもこの主張は、1970年にソウルからワシントンに報告された米CIA(中央情報局)の未確認情報を、同委員会が78年3月15日、無責任に公開したことに端を発しています。「統一教会が韓国政府の政治的な道具として、初代KCIA長官の金鐘泌氏の手で1961年に創立された」といったものでした。
現在では調べればすぐに分かることですが、統一教会が文鮮明総裁によってソウルで創立されたのは1954年5月1日であり、朴正熙大統領と金鐘泌(キム・ジョンピル)氏が権力を握る61年より7年も前のことです。
当の金氏も、「当時KCIAの長官だった私は、文鮮明氏の名前を本国では知りませんでした。私が1973年4月に韓国を離れた時でも、私は文氏の名前も知りませんでした。アメリカに到着して初めて彼の存在を知りました…」と述べています。
当時の読売新聞が訂正記事を発表
同委員会の報告書をもとにした読売新聞は78年3月16日、「統一教会は金鍾泌氏らが設立」との記事を発表。ところが読売新聞は同年9月23日、この記事について、「その後の調査の結果、事実に反し、穏当を欠く表現がありました。このため、宗教法人である世界基督教統一神霊協会にご迷惑をかけました。お詫びの上、訂正します」と、訂正記事を発表しています。
フレイザー委員会が米国議会の権威をもって、「統一教会は韓国政府の道具である」といった虚偽の情報を公開したため、それらが新聞報道などを通して事実であるかのように吹聴されてきたのが真相と言えるでしょう。
最終報告書に対する米国統一教会の反論
この他にも、同委員会の最終報告書では、文総裁の説教などを盛んに引用していますが、その引用すら正確になされておらず、誤った結論を導くために巧みに変えられていることにも注意が必要です。
そして何より、最終報告書に対する米国統一教会の反論書(79年1月発行)の、次の結論部分を心に留めていただきたいものです。
「(統一)教会はいかなる犯罪または違法行為においても有罪だと証明されなかった。事実、教会に関しなされた主要な告発について小委員会自体が、嫌々ながらであったとしても認めたように、それらは真実ではないとすべて露見したのである」
「フレイザー議員はソ連の工作員」との証言も
当時からフレイザー委員会が政治的に偏向し不正があると、共和党議員をはじめ、マスコミ関係者などからも非難されてきました。
さらに、同委員会の委員長ドナルド・フレイザー下院議員は、ポーランドからアメリカに亡命した情報将校ヤヌス・コハンスキー(Janusz Kochański)氏によって、「米議会内でソ連のために秘密裏に活躍する『影響力のあるエージェント(工作員)』だ」と証言されています(この点について、インテリジェンスの観点から真実がさらに明らかになることを期待します)。
昨今の一部記事では、「『フレイザー報告書』の慧眼」「驚くほど精密な調査が行われていた」など、フレイザー委員会を手放しで礼賛するものも見受けられます。メディア関係の皆様におかれましては、一方からの主張だけでなく、もう一方からの主張にも真摯に耳を傾けていただけることを願っております。フレイザー委員会については、同委員会で証言した朴普煕(パク・ボーヒ)氏の著書『証言(上巻)』(世界日報社)、第13章「米国議会での証言」も合わせてご参照ください。
なお、「国際勝共連合はKCIAがつくった」旨の言説については、日本共産党と勝共連合との間で闘った宮本顕治元議長に関する「リンチ殺人言論裁判」の反訴として、勝共連合が共産党を名誉毀損として提訴。結局1988年12月、共産党はこの「KCIA説」を証明できないまま本訴を取り下げることになりました。