世界思想7月号を刊行。今号の特集は「文在寅政権と危機の朝鮮半島」です。
以下、巻頭文「米国は中国に強くでよ」をご紹介します。
北朝鮮のミサイル射程圏内に日本全体も。米国本土に届く大陸間弾道ミサイルは今年中か。
北朝鮮のミサイル発射が止まらない。5月29日早朝のミサイル発射は、5月14、21日に続き、5月における3度目、今年になって9回目の発射実験であった。特に今回の実験は、ミサイル先端に羽根がついており、ミサイル誘導システムに基づく極めて進化したものであった。このように北朝鮮のミサイルは短期間で改善され、恐るべき速度で進展している。韓国はいうまでもなく日本全体もその射程の中に納まり、しかもターゲットへの命中確率も非常に高くなっている。
北朝鮮のミサイル開発の最終的な狙いは、言うまでもなく米国本土に到達する射程1万キロ以上の大陸間弾道弾である。このまま行けば予想よりも相当早く、場合によっては今年中に開発するのではないかと危憤される。
国連安保理でいくら北朝鮮への制裁を決定しても、また日米首脳会談、米中首脳会談、G7サミットで話し合い、約束を交わしても北朝鮮はどこ吹く風、まったく意に介さない現状である。北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させる道は果たしてあるのだろうか。
鍵を握るのは言うまでもなく中国である。中国税関総署が5月23日公表した輸出入統計月報によると、北朝鮮への輸出は本年度1~4月に10億434万ドルと前年同期比31.7%増大、北朝鮮からの輸入は同期に5億9845万ドルとわずか2.7%減にしかなっていない。この数字から見る限り、北朝鮮からの石炭輸入も完全に停止しているとは言えず、国連安保理の北朝鮮への経済制裁を厳格に履行しているとは考えられない。
4月6、7日に行われた米中首脳会談では、北朝鮮への制裁と米中の経済摩擦解決の道が主に話し合われた。米国は、中国が北朝鮮への経済制裁次第では、単独でも北に対する軍事行動をとることも示唆した。経済問題では貿易不均衡是正の為の100日計画が合意され、5月11日にはロス米国商務長官が10分野で合意したと発表した。その中には、米国のLNG(液化天然ガス)や米牛肉の中国への輸出拡大、中国内での海外企業による格付け業務許可、米金融機関による債券引き受け・決済業務などへの参入許可、中国からは調理済み鳥肉製品の米国への輸出解禁、中国が主導する「一帯一路」フォーラムの重要性を認識し、米国からの代表派遣等が盛り込まれた。
トランプ政権はオバマ政権さえ行っていた南シナ海における「航行の自由作戦」を「中止」していたが、5月24日に再開した。今後どれほどの頻度で行うか疑問である。
このようにみてくるとマイケル・ピルズベリーの「100年マラソン」を想起せざるを得ない。中国に厳しかったフリンも解任され、バノンも降格された。米国が中国を最大の敵性国家として認識し、その共産党独裁体制崩壊の為にも北朝鮮問題を利用する必要がある。
すなわち米国は、中国による北朝鮮への制裁強化(石油輸出禁止、金融取引停止等)の圧力をかけて、中国がどこまでやるか、その本気度を試さなければならない。もし中国が中途半端であったら、中国を為替操作国として認定する必要がある。