米紙「ワシントン・タイムズ」ビル・ガーツ氏 「米中新冷戦と米国の外交・安全保障戦略」

世界思想 4月号 (平和大使協議会発行) を刊行しました。今号の特集は「人口減少社会・ニッポンの衝撃」です。

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「流動化する世界と平和構築 : 政治と宗教の役割」をテーマに、国際指導者会議(ILC-Japan)が開催されました。米紙「ワシントン・タイムズ」のコラムニストであるビル・ガーツ氏の基調講演「米中新冷戦と米国の外交・安全保障戦略」をお届けします。(文責編集部)

 

米紙「ワシントン・タイムズ」コラムニスト
ビル・ガーツ  

 

 

懐柔、包容、経済的連携の強化を中心とした、過去30年にわたる米国の対中政策は「ギャンブル」というほかないものでした。核兵器を持った独裁国家である中国を「普通の国」として扱い、われわれが包容することで彼らが変わるのを待つ、という考え方は完全に失敗したのです。

 

 2016年、ドナルド・トランプ政権の誕生とともに、米国の対中アプローチは大きな転換点を迎えました。

 

 17年に米政府が発表した「国家安全保障戦略」では、中国を、ロシアと並ぶ「現状変更勢力」と位置づけ、米国の価値や利益と正反対の世界への転換を図り、米国に挑戦し、安全と繁栄を脅かす「ライバル強国」であると定義しました。さらには、インド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの版図を拡大し、地域の秩序を意のままに再編成しようとしていると警戒感をあらわにしました。
 

 かつて、ビル・クリントン元大統領は、「中国をインターネットにつないでしまえば、自然と民主化される」と言いましたが、現実には、中国は体制を維持したまま、見事にインターネットをコントロールしてしまいました。

 

 

 国家安全保障戦略が発表された1カ月後には、国防総省が「国家防衛戦略」を発表。中国を戦略的競争相手と位置づけ、国防戦略の優先項目も「対テロ」から、中国、ロシアとの競争にシフトさせました。

 

 国防総省は同戦略の中で、中国が自らの独裁主義的なモデルにしたがって世界を作り変えようとしていると分析しています。軍事力を近代化し、経済的な影響力などを行使して近隣諸国に圧力をかけ、インド太平洋地域を自らに都合の良い秩序に再構築しようとしているというのです。

 中国は、国を挙げた長期的戦略により、短期的にはインド太平洋地域の覇権を奪い、中長期的には米国に取って代わり、世界的に優位な立場を占めようとしています。

 これらは本質的には「ゼロサムゲーム」であり、中国は栄え、米国は衰えなければならないという考え方に基づいています。

 

中国の真の脅威を明らかにしたペンス演説

 

 2018年10月4日、マイク・ペンス副大統領は米ハドソン研究所で中国に関するスピーチを行いました。

 彼は、中国が影響力拡大をはかり、経済、外交、軍事など、あらゆる力を用いて工作活動を行い、米国内外に様々な問題と脅威をもたらしていると主張したのです。
 

 

 1991年、冷戦終結以降の米国の基本的な対中認識は、中国がやがて共産主義を捨てて自由化することは避けられない、というものでした。こうした見方に基づいて、世界貿易機関(WTO)への中国加盟を認めるなど、中国の貿易上の地位を保証し、大きな経済的特権を与えてきたのです。

 しかし、ペンス氏はこうした希望が実現されず、中国の人々にとって自由がいまだ遠いところにあると指摘しました。
 

 

 今や中国は、習近平指導部のもとで野心的な産業政策「中国製造2025」を掲げ、最新テクノロジーで世界を席巻しようとしています。コンピューター、コミュニケーション、人工知能など最先端の技術に莫大な投資を行い、市場を支配しようとしているのです。

 

 ペンス氏は、中国の宣伝工作についても言及しました。中国はトランプ政権の弱体化による政権交代を企図しており、そのためのプロパガンダを行っていると指摘したのです。ペンス氏は、「米国内の異なるグループを分裂させて、正確かつ慎重に攻撃する」と記された中国の内部文書を引用しました。これが事実であれば、現在、米国で問題になっているロシアによる2016年大統領選挙への干渉よりも、はるかに重大な問題です。
 

 ただし、こうした中国の動きがあるにもかかわらず、米政権内には「対中国包囲網」について消極的な意見も存在します。ジェームズ・マティス国防長官(当時、今年1月1日に辞任)は「米政府は中国を封じ込めようとしているのではない」と述べました。米政府は、いわば巨大なタンカーのようなもので、方向転換をしようとしても、簡単にはいかないのです。

 

続きは「世界思想 4月号」(平和大使協議会発行)をご覧ください。

 

 

【ビル・ガーツ】 国防問題を専門とし、これまで中国のパキスタンへの核技術密売、ロシアのイランに対する核技術供与、米国の中国に対するミサイル技術の売却など多数のスクープを報道。著書に『Betrayal』(邦訳『誰がテポドン開発を許したか』文藝 春 秋、1999 年 )、『The China Threat』(2000 年 )、『iWar―War and Peace in the Information Age―』(2017 年)など多数。現在は、米日刊紙「ワシントン・タイムズ」の安保専門コラムニストおよび米保守系ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」の上級エディター。


 

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