元米国下院議員 ダン・バートン氏「力と検証可能性を前提にした非核化交渉が必要」

 

世界思想 5月号 (平和大使協議会発行) を刊行しました。今号の特集は「日本と世界の30年 そして新たな時代へ」です。

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UPF主催「ワールドサミット2019」期間中、韓国日刊紙「世界日報(セゲイルボ)」と米国日刊紙「ワシントン・タイムズ」の共催による「2019韓(朝鮮)半島の平和国際カンファレンス」が開催されました。元米国下院議員であるダン・バートン氏の基調講演「力と検証可能性を前提にした非核化交渉が必要」をお届けします。(文責編集部)

 

元米国下院議員、IAPPインターナショナル共同議長
ダン・バートン  

 

 

 

 交渉や合意について考える時、「まず歴史を見よ」と言われます。

 私が下院議員だった頃、当時のレーガン大統領が言っていたことは、ソ連は悪の帝国である。それがメディアでも報道された。そんなことを言っては戦争になってしまう。などと周囲は注意したが、私たちは交渉して平和をもたらしたい、と。冷戦が終わることも求めている、と。その一方、弱い立場からは交渉できない。ですからレーガン氏は、「力による平和」という戦略をとったのです。

 

 ゴルバチョフ・ソ連大統領(当時)との間でも、共に握手をしたり、お茶を飲んだりと友好的な雰囲気をつくっていたが、常に交渉の現場では力を背景にしたものでした。

 さらに、全ての交渉内容は検証可能でなければなりません。

 

 当時のメディアはレーガン氏を好戦的と評し、この映画界から来たカウボーイが米ソ関係をめちゃくちゃにするなどと報じていました。しかし、レーガン氏は歴史の教訓から、ソ連のような全体主義政権と交渉をするには、力を背景に決断力を持って臨まなければならないと考えていました。

 

 私が生まれた1938年、欧州を席巻していたナチス・ドイツのヒトラーは、オーストリアを併合し、チェコスロバキアの一部の割譲も求めていました。当時の英国チェンバレン首相はミュンヘンでフランス首脳らと協議し、これを認めてしまいます。チェンバレン氏は帰国後、「私は平和を持ち帰った」と国民に告げましたが、結局、後にドイツのポーランド侵攻を許し、第2次世界大戦へとつながっていきました。この弱さゆえの妥協によって、1500万人以上が犠牲となったのです。

 

国家間の合意には、検証可能な根拠が必要だ

「2019朝鮮半島の平和国際カンファレンス」であいさつした韓国の李洛淵首相(中央)とともに記念写真に収まる発表者(2月9日、韓国・ロッテホテルワールド)

 

 私たちは今、核の時代を生きています。一方で、皆が平和を求め、交渉による解決を求めています。トランプ大統領もそうです。

 しかし、レーガン大統領と同じように、トランプ氏は交渉というものを検証可能な形で、力を背景にして進めなければなりません。米朝、あるいは米、韓、朝の間でも全ては検証可能な交渉でなければなりません。

 

 非核化のプロセスは、ただ主張するだけではなく実際に実行されなければなりません。クリントン大統領時代に核に関するさまざまな合意がなされ、合意書に署名もされました。しかし、結局はそれを破りさって、現在の核の脅威が厳然と残っているのです。このようにして、第2次世界大戦は弱い立場からの宥和策によって引き起こされたのです。

 

 核の時代、私たちは一歩でも誤れば、1500万人どころではなく世界的な規模で数億人が死んでしまうような深刻な状況にあるのです。よって、非核化はもちろん大きな課題ですが、過去を振り返れば、過去の共産主義、社会主義政権、あるいは全体主義的なファシスト政権との間で結ばれた合意が、しっかりと検証できないものであったために、最終的には反故にされ、戦争につながっていったと考えるべきです。

 私が申し上げたいことは、朝鮮半島の統一と平和をどう実現するかという課題を考える上で、単に独裁国家との間で戦争のない状態を作ろうとすれば、それはできないことはありません。しかし、そのかわり自由を享受することはできません。それが本当の意味で平和な状態でしょうか。自由のない平和はありません。

 

 ですから国家間の交渉に携わる人々に、私は「歴史をよく見よ」と申し上げたい。

 

 金正恩委員長のような人と交渉する際には、かつてのレーガン―ゴルバチョフ時代の米ソ交渉がそうだったように、力と検証可能性を明らかにした場合によってのみ合意がなされ、結果として平和が訪れることを知らなければなりません。

 

 あまりにも平和という言葉だけが先行して、合意が検証できるか確認できなければ、それは結局のところ、紛争の種を蒔いていることになってしまいます。

 

 北朝鮮の非核化のための合意書にサインしたとしても、それを米朝が検証可能な形の合意であり、どのような政治体制であれ、合意した当事者がその履行に本気であることをはっきりと示すものでなければなりません。そして、合意されたなら戦争はないと断言しなければなりません。

 

【ダン・バートン】インディアナ大学、シンシナティ・クリスチャン大学を卒業後、米国陸軍に従軍。その後、インディアナ州議会議員を経て、1983年より米国下院議員(2013年まで)。この間、下院監査政府改革委員会委員長、共和党研究委員会委員長などを歴任。2016年、世界平和議員連合(IAPP)創設とともにインターナショナル共同議長に就任。


 

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