「朝鮮半島の現状と今後を展望」ILC(国際指導者会議)2019

世界思想 7月号 (平和大使協議会発行) を刊行しました。今号の特集は「激動するアジア太平洋情勢と日米同盟の新地平」です。

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5月16,17日の両日、UPF主催「ILC(国際指導者会議)2019」(韓国・ソウル)が行われ、期間中には北東アジア情勢に関する多くのセッションが行われました。その中で「朝鮮半島の平和統一への道を探る」を主題にしたセッションで演説した米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員の発表要旨を紹介します。(文責編集部)

 

 

米ヘリテージ財団上級研究員
ブルース・クリングナー

  

平和宣言の署名は同盟国を危険にさらす

 

 では、米国は何をすべきでしょうか。 

 第1に、平和宣言への署名はすべきではありません。

 平和宣言は一見すると、朝鮮半島の緊張をなくすために良い方法のように思えます。しかし、そうではありません。

 平和宣言はただの象徴であり、朝鮮半島の安保状況を改善できるような意味あるものではありません。北朝鮮の核・ミサイルを減らし、米韓の軍隊や市民に対する軍事的脅威を減らすことには繋がらないでしょう。それはまた、北朝鮮の不信をなくしたり、非核化への道を歩ませることにも繋がりません。逆に、必要な制裁を続ける国際社会の決意を弱体化させることになるかもしれません。そうなれば、同盟国の防衛・抑止力を低下させる道を作り出す可能性もあります

 

 第2に、非核化への包括的なロードマップ(行程表)を推し進める必要があります

 ハノイでの首脳会談後、米朝の交渉は中断しています。米政府は、非核化への取り組みの基準を引き下げようとする北朝鮮の要求に応じるべきではありません。いかなる合意になったとしても、北朝鮮の核開発計画やその他の兵器の放棄を明確に定義した最終目標が盛り込まれなければなりません。それには、核・ミサイル開発計画を終わらせるための宣言を含める必要があります。 

 また米国がかつて、軍備管理条約に基づいて旧ソ連やワルシャワ条約機構と結んだような、厳密な検証と協定も含まれなければなりません。 

 

 第3に、制裁の履行を進める必要があります。

 オバマ前大統領は、地球上にある閉ざされた国家の中で、北朝鮮への制裁が最も重いものであると主張していましたが、それは正しくありません。国連や米国、欧州連合(EU)は、北朝鮮よりも重い制裁をイランなど8カ国に科していました。

 同様に、トランプ政権の方針である「最大限の圧力」も、最大限ではありませんでした。

 また、米国は、北朝鮮や他国の団体が制裁に違反して取り引きしていることを黙認しています。

 

 第4に、米国は同盟国との軍事演習を中止すべきではありません

 これまで、少なくとも11回の軍事演習が中止されており、追加の演習をするには制約があります。 

 これは米朝の交渉以外で決定されたことで、米国は見返りとして何も受け取らないばかりか、北朝鮮は100万人の軍事演習をするなど規模を縮小していません

 

 こうした一方的な制約は、抑止力・防衛力の低下に繋がり、同盟国を危険にさらすことになります。

 

 

【ブルース・クリングナー氏】米中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)で計 20 年勤務。その後、調査コンサルタント会社ユーラシア・グループなどを経て、現在、大手シンクタンク、ヘリテージ財団上級研究員。専門は朝鮮半島と日本。CIA 時代は、1996年から 2001 年まで韓国担当副部長を務め、米大統領や政策立案者らに政治的、軍事的な分析を提供した。02年には、米国防大学で国家安全保障戦略の博士号を取得している。

 

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